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夜間勤務  作者: CGF
2/9

シフト2


受付の終わった外来窓口。



「あ、瀬川さん、おはようございます」



静まり返った待合室を、黙々とモップ掛けをする清掃員の背中に声を掛けた。



「……?」



どうしたんだろう?瀬川さんは挨拶を返してくれなかった。


清掃員は厳密には病院関係者ではない。業務契約をしている会社から派遣されて来ている。





瀬川さんは私の方を見ようともせず、ただうつむいてモップを動かし続けた。






「あの瀬川ってヒト、最近愛想悪くなったわよね?」



ナースセンターで葉子さんが腕組みしながら瀬川さんの文句を云った。



「前はいつもニコニコして腰の低いヒトだったのに、何かあったのかしら?エッちゃんどう思う?」


「……どうだろ、私達知らないうちに怒らせちゃったのかも」


「んなワケ無いわよ~、だいたいあのヒトとは挨拶くらいしか接点無いのよ?挨拶の仕方が悪いって?そんな事でヘソ曲げられてもねぇ」



そういえば最近瀬川さんは私を、というより私達を見ない。


視線を逸らしているのでは無く、まるで……





「エッちゃんどうしたの?」




葉子さんの声に、頭に浮かんできていた事が途切れた。



「あ、あ~ごめん」


「やっぱり疲れてんじゃない?」


「大丈夫だよ……ちょっと館内見て回ってくるね」




そう云って、私はナースセンターを後にした。



(考えがまとまらない)



私はさっき何を考えようとしていたのか?


何か……思い浮かびそうだったのだけれど。




まぁ、その内思い出すだろう。気を取り直して廊下をエレベーターへ向かう。



キキ……


  キキ……



廊下の向こう、車椅子の車輪をきしませながら、齋藤のお婆ちゃんがこちらへ来るのが見えた。


齋藤さんは入院患者の一人。以前は『外来に朝からたむろするお年寄り』の一人だったけど、腰を痛めて検査の為しばらく入院する事になった。



「齋藤さん、こんばんわ」


「……むい。……むい」



……何を云ってるんだろう?


ぶつぶつと聞き取れない声で独り言を呟き、眉に皺を寄せながら齋藤さんは通り過ぎていった。



キキ……


  キキ……



(車椅子、響くわね……油を挿したらいいのかしら?)



今度瀬川さんに頼んでみよう。建物管理の会社なんだから潤滑油くらい持っているはずだ。






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