シフト1
きっと、今もここにいるんだわ……そんな気がします。
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(最近夜勤が続くわね……)
疲れが溜まっているのか、身体が重く感じる。
西の空、夕陽を受けた雲が赤く染まっていた。
(綺麗……)
通用口の扉に手を当てながら、私は赤から紫へ変わりゆく空のグラデーションを見上げた。
「おはようございます」
「よっ、エッちゃん。なんだ、また夜勤か?」
「康一郎センセイだってまた夜勤じゃないですか」
通用口からナースセンターまでの廊下で、センセイに出くわし、他愛の無いお喋りを交わす。
康一郎センセイはこの病院の跡取り息子。人員不足を補う為、夜勤を続けている。
「たまにはお休み取った方がよくないですか?」
「……休み、かぁ。オヤジと会わないんだよな~最近。勝手に休むワケにいかないし」
それよりエッちゃんこそ身体大丈夫か?若センセイは私の顔を覗く。顔色良くないぞ、と。
「大丈夫ですよ~、じゃあまた」
康一郎センセイと別れてナースセンターへ。
ナースセンターには婦長と葉子さんが居た。いつもの夜勤メンバー。
……あれ?
今、何かを……
もやもやした感覚が胸にあった。
何か忘れている様な。
何かを思い出しそうで思い出せない、そんな感じ。
なんだったろう?
「若林さん、どうしました?」
婦長の声にハッと我に返った。
「あ、すみませんぼーっとしちゃって」
「皆夜勤続きだもんね~」
葉子さんが首を揉みながら生欠伸をする。
「さぁさ、二人とも気合いいれて頂戴。今夜も頑張りましょう」
ナースセンターを出て廊下に出る。
窓の外は既に暗くなっていた。