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脳と声帯  作者: ☆いちごミルク☆
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突然の出会い

「ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃねーぞ!!」

髪の毛を引っ張られる。

「おい!なんか言えよ!!」

別の子が私に怒鳴る。

「…私ってそんなに顔が整ってるの?」

私の疑問に彼女は答える。

「整ってる、だけどお前はただの……」


「お人形だよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今私は病院に通っている。

というのも脳に障害があるらしくそのせいで「感情」が欠けている…らしい。身に覚えはある。他の子が「欲しい」と思っているものも「可愛い」と思うものも私は何も思わない。周りが「ひどい」と思うことにも私は何も思わないし「泣いたことも怒ったことも無い」

でもそれが障害だということを私は最近知った。

そしてそれが悪化しているという事もまた最近知った所だ。


今日は学校で美術の課題が出ていた。テーマは「風景」

何かいいアイデアはないか院内を練り歩いていたら1つの絵画を見つけた。それは病院の近くにある海だった。

「………きれい…」

思わず呟いてしまう。

障害のある私にだって美的センスはちゃんとある。

「その絵202号室の川島さんが描いたんですよ。」

突然の声に驚いて後ろを振り返ると看護師さんが立っていた。

「そう…なんですね。とても綺麗な絵。」


次の日

私は202号室に行ってみることにした。

ドアを2回ノックし扉を開ける。

「失礼します」

同い年ぐらいの男の子がベットに横たわってこちらを見ている。

「私あなたの絵を見て感動したんです!それで、もしよかったら私の絵の課題を手伝って欲しいなって思って…!」

「………」

(聞こえてないのかな?それとも無視?)

それから彼は紙に何かを書きはじめた。彼がその紙を私に見せた。

「…えっと…ぼくは声がでません…?」

彼は私を見て頷く。

「喋れない病気なんですか?」

彼は首を縦に振り更に何かを紙に書く。

「…僕も君と同じ歳だからため口でいいよ…?ってそうなの!?」

私が驚くと彼は笑った。

「……声を聞くことは出来るの?」

私の質問に彼は頷く。

「そうだった!美術の課題を手伝って欲しいの!!」


い い よ


「本当!?ありがとう!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いつの間にか課題が終わってもなお毎日彼の病室に通うようになっていた。

そして彼も私も海に行くのが好きだった。

海を見ているこの時だけはお互いに病院や病気の事など考えずに普通の子供に戻れた気がした。

「そろそろ戻らないと」

私がそう言うと彼はいつも重々しく頷く。


彼が口を動かし何かを私に伝えようとしている。


「……ごめん、なんて言ったの?」


な ん で も な い


「そっか、じゃあもう戻ろう」

彼は頷く。





彼の描く絵は私の心を落ち着かせる。いつまでも彼の隣で彼の絵を見ていたい。いつの間にかそう思うようになっていた。











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