第ニ話 エリナの生着替え編
【今日のメモ】キャラクター紹介 その2
エリナ・デニッシュ・パイシート
突然圭斗が観ていた動画から飛び出して来た美しいエルフ。
若草色の髪、桜色のチューブトップ。
名前が美味しそう。二つの果実は溢れそう。
(とんこつ毬藻作:ラフ絵)
「うふふふふふ……うまくいきましたわね」
美しく磨かれた鏡のような物に映し出された青年とエルフの様子を眺め、僕はうっとりしてしまうのです。青年が時々挙動不審になるところがちょっと気になりますが、まぁいいでしょう。
「まずは第一段階の実験成功です。後はあの娘が彼を呼び出す瞬間を待つばかり……嗚呼……早く僕の夢を叶えて下さいまし」
カップに注いだ紅茶のフルーティーな香りと味を嗜みつつ、しばらく続きを見守っていく事にしましょう。
************
―― こんにちは。見た目は大人、頭脳は子供、その名も、江藤圭斗! 大学生です!
という自己紹介は今後使わない事にします。突然現れた異世界の住民、どこからどうみてもエルフの女性に渾身のボケをね……スルーされて気づきましたよ。窓が開いていないのに、木枯らし……いや、吹雪が俺の荒んだ心へ吹きつけて来たしね。
さてさて、今、人生最大の試練に直面している俺。バイトの面接? 大学受験? いえいえ、そんなものと比べ物にならない程、全身へ血液を送るために配置されている臓器がドクンドクンと脈打っています。何せ、目の前に突然美しい女性が現れるという、ゲームや小説でしか有り得ない展開が実際起こっている訳で。しかも、外の世界を見てみないかい? と、女の子と男の子がね、一緒に一日を共にする……デートなる展開を提案してしまったんですからそれはもう一大事ですね。
「じゃじゃじゃあ、行こうか」
「はい、ケイトさん!」
そして、緊張した面持ちで、俺は靴を履いて玄関を開けて気づきました。
「あ!」
ドン!
あ、これはもちろん壁ドン! ではなく、俺が突然玄関前で立ち止まったため、エリナさんが俺の背中にぶつかってしまった音ですよ。
「あわわ、ご、ごめんなさい。どうしました、ケイトさん?」
「あ、ごめん突然。えっと……エリナさん、その服って……」
「え? おかしいですか?」
「あ、いやいや全然全然! めちゃめちゃ可愛いよ! あ」
あ、勢いで可愛いって言っちまった。
「あわわ、神様にそう言っていただけると、お世辞でも照れちゃいます」
「いやいや、お世辞じゃないし! あ、いや、そうじゃなくて。えっと。俺言いたかったのは、その服だとね、この世界だと目立ちそうでね」
勢いで可愛いと言った事でお互い照れて視線を反らしつつも、言いたかった事に触れる。そう、若草色のサラサラな長い髪も、桜色のチューブトップも、茶色いスカートも、異世界から来ましたと言わんばかりの格好で目立つのだ。これがコスプレイベントや、コミケの日ならばまだしも、今日は日常の日曜日。さすがに地球の格好を着た方がいいだろう。
「えっと……あ、神様の世界には相応の格好があるのですね。分かりました! 着替えます!」
「とりあえずは、俺の持ってるTシャツとパーカー、それにジーンズを貸すよ」
部屋にあった比較的に問題なさそうな服を選び、エリナさんへ渡す。
「あ、ケイトさん?」
「はいはい?」
「向こう……向いててもらっていいですか?」
「は!? ああああああああごめん! 着替えおおおわったら、教えて」
ヤバイ目の前で美女の生着替えを凝視するところだった。後ろでガサゴソ服が擦れる音が聴こえる度に心臓が跳ね上がるんですが。俺このままだったら何回か昇天するよね。それこそ死んだらこれ異世界転移だね。まぁ、異世界から転移して来ているエルフが生着替えしてるんですけどね。
「着替え終わりましたー」
「了解ー」
そして、振り返った俺は脳天を鈍器で殴られたかのような強い衝撃を受けるのである。これがラブコメだったら鼻から大量出血で後方に背中から倒れていた事だろう。
「ケイトさん? おかしいですか?」
「え? あ、いやいや、にににに似合ってるよ」
エリナさんはどうやら俺より十センチ位身長が低いらしい。ちなみに俺が百六十八センチだ。太め体型ではないため、ジーンズは問題ない。問題はTシャツとグレーのパーカーだ。
分かります? これは所謂……伝説の萌え袖というやつだ。いや、ほら、大きめの服を女性に着せるなんて経験した事ないからね、伝説の聖剣くらいレア物だと思っていた訳ですよ? エルフの耳が隠れるようにフード付にしてみたのだが、これまた似合っている。
「よかったですー、ありがとうございます!」
萌え袖をぱたぱたさせるエリナさん。ぴょんと俺の前に近づいて来ます。ちょっとした仕草一つ一つが可愛いんですが。それに、上目遣いで見つめられると困ります。Tシャツの隙間からエルフの神聖な谷間がチラリズムしてますから。それにTシャツからうっすら桃色の布地が透けてみえるし。
「あ、外出る時はパーカーのファスナーは……と、と、とじた方がいいよー」
俺が慌てた様子でそう言うと、エリナさんは自分の着ているTシャツを見つめ……。
「え、あ……いやぁああああ、神様のえっちーー」
俺は顔を真っ赤にした萌え袖の美女から、この日、人生初の平手打ちをもらうのでした。
―― 叩いたね! 親父にもぶたれた事ないの……以下略
まだデート行かんのかい!
次はデート編です。お楽しみに。
あ、萌え袖エルフを描いてくれる方随時募集中です ←