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止まっていた時間が動き出す……。

最初に言っておこう

この物語はすべてフィクションであり、実在する人物や団体、事件とは一切関係がございません。

と、そんなどこでもあるようなお約束のセリフが映画のエンドロールで流されるがごとく、僕の人生は無縁なのだから。

そして、自分の手に持っていた小説を閉じた。


夢の終わりというものはいつも突然にやってくるものだ。

目を閉じたまま、遠くなっていく新聞配達のバイクのエンジン音が耳に響いていた。

自分の感情を色で表すとするとブルー。

もう少しの間だけ夢の中にいたかったけれど、目が覚めてしまったからにはしょうがない。

いつも寝ているベッドに、そこから見える天井はいつ見ても変わらない。ただ、白いというだけなのだから。

そっと起き上がって時計を見ると、起きる時間の三十分前だ。

とはいえ、昨日は早く寝てしまったからか目覚めだけは自分の中でもよいほうだと思う。

「さてと、」

いつものようにベッドから起き上がった。

そして、窓の外を見ると晴れやかな空が一面に見渡された。

今日はそんなことから朝食を食べ、少し早いが家を出ることにした。自分の家のドアを開け、学校に行く道を歩き出した。




季節は春

桜の花びらが舞うこの季節に青春という名の人生の一ページを刻む人は多いと思う。

でも、どうだろう?

青春なんて言葉は興味もなく、無縁なのだ。

さてと、自己紹介をしよう。

僕の名前は『神崎 晴翔』桜木高校 二年生。

この学校に入学してから一年が経ってしまったこととなる。時間は進むのが早いというが思った以上に早かったと思う。

今日が高校二年生になってから初めの登校日。そう思うと、去年は時間を無駄にしてしまった。友達も作らず、教室の端っこの方の席でミュージックプレーヤーにイヤホンを繋げ、片手に小説を持ち、文字列しか読まないこの時間が僕の「日常」といってもいい。簡単にいうと世間でいう「ぼっち」というものだ。

そして、クラス替えをした今も一人で、読書

をしているということになる。

これから先も、この「日常」は続くのだろう………と思っていた。二時間後の始業式が終わったあとに、あんな事件が起こることなど夢にも思っていなかったのだから。


時刻 午前八時

桜木高校の二年生と三年生は始業式のため、体育館に集められた。

いつもだったら、八時四十分くらいから朝のホームルームをしてから授業なのだが、今日は午後から入学式もあるため早く始業式をするということになった。

「皆さん、こんにちは」

と校長の挨拶とともに一時間もの長い話しを体育館で聞かされる。

始業式が終わり、生徒は教室に戻っていた。

僕は黒板に指定された自分の席で、いつものように読書を始めた。

今いる二年二組のほとんどの人が去年のクラスに友達や知り合いになっている人が多い。その関連で既にグループができていた。

そんな中に自分から行った所ですぐに省かれるに違いない。だったら、一人でいた方が後で問題が起こることや孤独感を感じるといったこともない。もう既に孤独感は感じているんではという意見はとりあえず飛ばしておこう。

それで、自分がやっていた最初の行動に戻る。

椅子に座りながら、あとはホームルームを終えれば今日はこれで帰れる。

そんなことを考えていると、教室のドアが開き、一人の若めの男性が教室に入ってきた。男性は教卓の前に立って、

「おはようございます」

晴れやかな顔をした若めの男性は挨拶をした。

「今日からこのクラスの担任をすることになった秋満 政宗です。皆んなよろしく。」

きっちりとしたスーツにセットされた髪は多分だが今日赴任してきたばかりの先生なんだと思う。始業式のせいでいろいろな事がとばされてしまったから新任の先生の紹介も明日だろう。

「悪いけど、これから皆んなには一人ずつ自己紹介をしてもらいます。」

と自己紹介をすることになってしまった。

出席番号が一番の人から順番に自己紹介が始まり、僕がいる席の前の人の順番がもう終わりをむかえていた。

「次は神崎君だね。自己紹介よろしく。」

「はい」

読んでいた小説を机に置き、僕は教壇へと向かった。

「神崎 晴翔と言います。趣味は読書です。一年間よろしくお願いします。」

自己紹介が終わり自分の席に戻るとまた読書をする。いつだって読書をしていた方がいいという結論になってしまう。本は読んだだけ知識になる。でも、人間関係だけはどうにもならない。

自分でも以外とこんな事を考えてしまったりする。

すると、自己紹介を終えたクラスの女子が席に戻ろうとしていた。ちょうど僕の席の横の通路を通ろうとした時の事だ。床が滑りやすくなっていたらしく、こけそうになっている。

「おっと」

とっさに彼女を支えてしまっていた。

「大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」

とお礼言いながら席に戻っていった。

彼女の名前ってなんだっけと読書をしながら考え込んでいた。あんまり、いや、ほとんど女子とは一切話していなかったせいなのか気になっていた。でも、気になったところで何にも起こらない。


「キーンコーンカーンコーン」

とチャイムが鳴っていた。

「もう、こんな時間か」

時計を見ると、自己紹介の時間から一時間は経っていた。

教室には誰もいない。 読書をしているうちにホームルームが終わっていたのだろう。

「じゃあ、僕も帰りますか」

手に持っていた小説を鞄にしまい、帰ろうとした時、

「あのー」

後ろを振り返って見ると、今さっきこけそうになっていた彼女だった。

今、見て見ると結構可愛い顔つきに髪はとてもふんわりしてる。

「神崎君ですよね」

「そうだけど、君は今さっきこけそうになってた…」

「如月 雪月です」

「如月さんって言うんだ。ごめんね、自己紹介の時、読書しててほとんどの人の名前知らないんだ。」

「 いや、大丈夫だよ。神崎君って読書好きなんだね。」

「うん、僕 昔から本が好きで、読書しているうちに今は趣味になってたかな」

こんな話しを他人に話すのは初めてだ。なのに、如月さんと話していると落ち着く。


「そういえば、如月さんって僕に用事でもあった?」

「今さっきのお礼が言いたくて、」

彼女はお礼をいうためだけに残っていたんだと思うと意識してしまう。

「別にお礼だけなら言わなくてさっき言ってくれたから良かったのに」

「で…でも、他に言いたいこともあったから……」

顔が少し赤くなっているのを見た。

なんか、聞きにくい事なのかなと思っていると、

「神崎君って、今…付き合っている人っている?」


「いないけど、どうして?」


「それは……」

自分でもこの後のことはなんとなく予想はついた。そんなことが起こるわけないと…


「神崎君…」

如月さんは思い切ったように僕の方に視線を合わせる。

そして、次の瞬間

時が止まったようにゆっくりと彼女の声が聞こえた。


「私、神崎君のことが好きです。私と付き合って下さい。」


笑顔で向けられた視線はとても暖かくドキドキした。今まで味わったことのない感覚とともに心臓の鼓動が早くなっていく。

急だったせいもあるが、答えが出ていた。



「僕でよければよろしくお願いします…」



高校 二年生 初日

僕は、人生初の彼女が出来たのであった。

こんな春に起きた僕の1日目が終わったのである。



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