世の中は汚い
「世の中って汚いと思いませんか」
小学校高学年か、中学一年生くらいだろうか、まだ声変わりもしておらず、かわいい男の子だ。それにしても、なかなか重そうな相談だ。
「クラスのお楽しみ会でやったクイズ大会の結果なんですけど、僕が二位で八点。一位の子は九点です。どう思います?」
どう思うかって言われてもなぁ、特に何も思わないよな。残念だねくらいだよな。
「一点差かぁ⋯⋯惜しかったね」
「ほら! やっぱりそうだ!」
えっ、これ地雷なの? なんて言えばよかったの? これ難問じゃん⋯⋯
「最終問題まで僕が八点で一位だったんですけど、先生が『最後は九点にします!』って言ったんです」
あー、他の子のやる気が無くならないように逆転可能な点数にしたのね。こういうのよくあるよね。
「それでさっきまで一個も正解してなかった子が答えていきなり一位ですよ。ひどいと思いません?」
「ひどいね、でも先生は盛り上げるためにも最後で逆転出来るようにしたんだと思うよ」
「僕が言ってるのはそういう事じゃありません! これだと僕が一点差で負けて悔しがってそうなイメージが浮かぶじゃないですか。でも最後を一万点にしていれば、クイズ大会の結果を聞いた人も『最後に一万点入ったんだな』ってわかると思うんです。先生はそういう配慮が出来ていなかったんです!」
なるほど、これは完全に先生が悪いな。そもそも私はこの最後の一問で逆転できるシステム自体が嫌いだ。よくあることだが、自分が参加している勝負でやられたら自我を保てず暴走し、その土地を草も生えぬ荒野と変えてしまうだろう。
「だから、もうこの世が憎くて憎くてたまらないんです! この怒り、どうすれば⋯⋯!」
「世の中を恨むんじゃなくて、先生を恨むべきだと思うよ」