酷い目にあった
「仕事先で酷い目にあいました」
今日の相談は真面目そうで安心した。酷い目にあったっていうのはどういう系なんだろうか。労災か?
「先週空き巣に入った家がものすごい猫屋敷でしてね、おしっこの臭いがすごいんですよ。玄関に入った瞬間からもう肺が悲鳴を上げましてね、くっせぇ!って絶叫したんですよ。そしたら家主が『泥棒の分際で文句言うんじゃねえ!』って殴りかかってきまして、肋骨骨折しました」
家主居るなら空き巣じゃなくない? まあ確かに災難だな。でも、わざわざここに来て話すようなことか? 私は特に何もしてあげられそうにないが⋯⋯
「そこで、どうしても仕返しがしたく今日は参りました!」
なるほど、それならうちに来て正解だ。作戦会議なら任せろ。
「サルカニ合戦の要領でいきますか」
「さすが先生! そうしましょう!」
とはいえ、臼も馬糞も蜂も栗も話が通じないので協力は得られないだろう。となると、誰かを雇うしかないか⋯⋯
「スナイパーを雇いましょう」
「すみません、お金がかかるのはちょっと⋯⋯」
金をかけず仕返しをするとなると大変だな。
「じゃあ、蛾をいっぱい捕まえてその家に放すのはどうですか?」
「すみません、虫苦手なんです」
えーっとじゃあ⋯⋯
「その家の庭に勝手にデカい雑草を植えましょう」
「草の臭いが苦手でして、すみません」
なんだこいつ。なんか腹立ってきたな。だいたい空き巣が相談しに来てんじゃねえよ。
「じゃあマヨネーズをその家の中に撒き散らすのはどうですか?」
「だからお金かけたくないって言ってるじゃないですか!」
マヨネーズすらダメなのかよ! もうダメだ、こんなやつの相談になんか乗れるか!
「帰れ! 泥棒の分際で相談しに来てんじゃねー!」
「お金払ったじゃないですか! 三千円も! 決まるまで帰りませんよ!」
結局、警察に通報するぞと脅して帰ってもらった。帰り道、ブラジャーを被って歩いていたところを逮捕されたそうだ。