序章
Finally I want to hear your voice once again if I expect it....
コンクリートの冷たさを感じると同時に自分が捕えられていることに気づく。
ゆっくりと顔をあげると殺風景な部屋が目に飛び込んできた。否、今まさに自分がいる部屋がこの殺風景な部屋なのである。
...正直いってこのような部屋は好みではない。もっと散らかった、派手な(所謂、やんちゃな学生の部屋)ほうが好きである。
ところが、徐々に頭が冴えていき、自分の身に起きていることが嫌でも分かってきた。
遂にこの時が来ちまったか...もう少し遊んでいたかったんだけどな...。
傷だらけの全身を見て自分に対して嘯くが、体の方は既に限界を超えていて遊んでいる余裕などちっともなかった。
今思えば何故こうなったのだろう。いや自分に問わなくても既に分かりきっている。
全てが上手くいったのだ。
自分の罪に対する贖罪のほとんどが終わったのだ。残っていることはただ一つ。
この身を滅ぼすこと
この後自分を消し去ることが出来れば全ての贖罪が完了する。
この俺が狂わせてしまった彼らの人生を取り戻させてやることができる。
だが、まだ叶えたいことがあり、こうして意地でも生きている。
それは彼女に謝ることである。
最後の最後まで自分を気にかけてくれた彼女に謝らなくてはならない。
何故なら俺は彼女達の生きる理想郷を作るため
彼 女 の 大 切 な 人 を 殺 し た か ら で あ る。
それももう5年も前の話である。
悲惨で儚かった高校生時代のときのことだ。
そう、俺は2年の年の夏休みに
人生最初で最後の
殺人を犯した。
これから語るのはこの俺―新妻 透の愚かしく、惨たらしい人生を記したものだ。
自分達の理想郷を叶える為に犯した罪に対する贖罪をすべて背負う羽目になった一人の敗者の物語であり、決して許されない理想郷の話だ。
血の海の中、男は泣き叫び続ける。
大切な人を抱えるはずだった腕は返り血と自分の血でぐちゃぐちゃになっている。
周囲には最早、彼しか息をしている者はいない
他は皆死体だ。
殺したのだ。
全員、
彼女を失った瞬間から男は人間であることを辞めた。
鬼のように人を斬り、修羅のように心臓に刃を突き立てる。
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺しまくった。
彼から彼女を奪った者は皆殺した。
親も、親類も。
友人も恩人も関係なく。
ただただ殺した。
既に彼の人殺しに意味はなかった。
殺人鬼彼は少女と再会した時、気づいた。
いや、気づいてしまった。
彼女は彼を忘れていた。
彼は再び意味を失った。
何の為に人を殺し続けた?何の為に?何の為に?
彼は狂った。
堕ちた彼は改めて気づいた。
果たしてこれが...俺達の作った理想郷なのだろうか?と、
こんなにも...寂しいところだったのだろうか?と、
この物語に幸せ《ハッピーエンド》は無い。
否、そもそも存在しなかったのだ。
こんな駄作を読んでくださりありがとうございます。
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それでは、楽しんで読んで下さい。