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6

さて、恐い思いはしたけど、収穫はあった。

「港に魔獣なぁ…」

賑やかだった港を思い出しながら、王子様の部屋へ向かう。

長い廊下を歩くが、あれ以降人一人会わない。

情報は多い方がいいんだけど…話し掛けるのは難しそうだからなぁ。この容姿じゃ。


どうするものか…。

そんなことを考えていれば王子様の部屋に着く。

トントントントンと4回ノックする。すると、従者君が扉を開けた。

従者君は私を見ると一瞬顔が強張るが、「何の御用でしょうか」と返事をした。


「王子様はご在室で?今後の予定を確認しに来たんですが。」


私がそう答えれば、お待ちくださいと部屋へと従者君は戻っていった。


しばらくすれば、部屋の扉は開かれ

「どうぞ、お入りください」

と入室の許可がおりた。


部屋に入れば温かい陽射しが差し込んでいた。

王子様は机に向かって何か書き物をしていたらしい。


「ニーア、わざわざすまない。」

「いーえ、別に。それで、今後の予定を確認しに来たんですけど。」

「あぁ…そこの椅子に腰掛けてくれ。リアム、ニーアに飲み物を。」

「はい」

「すぐにお暇しますけど」

「いいや。一息ついた方がいい。話によっては長くなるだろうからな。」


「はぁ…」


目の前に紅茶とお茶菓子を置かれればなかば強引に席に着かされる。

この王子様、見た目に反して強引? この強引さもなんだか見覚えがあるなぁ…。




「今後の予定だったよな。この街に魔獣や魔障の影響は出てないみたいだ。一晩身体を休め、次の街へ向かおうと思う。」

「あー…それなんですけど、魔獣、出るみたいですよ。メイドさん達が噂してました。港に魔獣が出るって。」

「そうだったのか…」

「ここの領主様は隠してるみたいですけど、メイドさん達は領主様の前の奥さんの怨念じゃないかって」


メイドさん達の噂話を掻い摘んで王子様に話す。

噂話とはいっても火のないところには煙はたたぬって言うしね。手がかりのひとつにはなるでしょ。


「そうか…それについては話を聞く必要があるな。」

「領主様からもですけど、メイド長さんにも話を聞くといいですよ。」

「メイド長?」

「あの人、隠密ハイディングを見破りました。ただ者じゃなさそうですし。」

「そうか…。ニーア、魔術も使えるのか?」

「あー…まぁ。才能があったみたいですね。魔術の。ま、専ら攻撃魔術が、ですけど」

「それは心強いな」




冷めた紅茶を一気に飲み干せば席を立つ。

「当面はこの街にいるってことでいいですよね。」

「あぁ、ニーアの情報から魔獣の影響があるのはわかったからな」


「なら、外出の許可をください。他の皆さんは身分があるのでおいそれとは出掛けられないでしょう。私が外で情報を集めてきます。」


私がそう言えば呆気に取られたようだ。

メイドさん達の噂話も役に立つだろうけど、街の方が人も多い。その分だけ情報も集まるだろうしね。


「ニーア、お前も姫巫女様の護衛として身分がある。」

「そ、そうです!護衛の任を放棄するのですか!?」

「聖の護衛なら他に3名いるでしょう。それとも、この屋敷では聖…姫巫女に害をなす人間がいると?」

私が言い放てば二人は口ごもる。


「だが、ニーアも女性だ。誰か護衛として連れて…」

王子様の“女性”という言葉に思わず懐刀を王子様の首もとへ突きつける。


お前が言うな。と


「なにを!?」

従者君が喚く。それを一瞥して

「あなたが思ってるより私は強い。あなた方が騎士団あそこへ放り込んで下さったお陰でね。」

嫌味を含ませて言い放てば、懐刀を収めて部屋から出てく。

あのまま居れば、あの人の首をかっさばきそうだ。

さすがにそれはヤバイ。この世界は嫌いだが、人殺しにはなりたくない。







もやもやとした気分でそのまま入り口に向かえば、入り口には団長様。

そのまま前を通り過ぎようとすれば、腕を掴まれた。

「何処へ行く。」

「………街へ情報収集しに」

「一人でか」

「そうですけど。王子様からも許可は貰いました。」

なかば強引に、だけど。否と言わなかったんだ。許可は貰ったと言ってもいいだろう。


「知らぬ土地での一人歩きは危ない。ついていこう」

「いえ、団長様のお手を煩わせるわけにはいきません。」

「だが。」


「…今日は街へ向かうだけです。それよりも、姫巫女様のお相手を。恐らく退屈されているでしょうから。失礼します」


お前らが心配なのは姫巫女だけだろうが。と言外に含ませて扉を開けて外へ出る。





「あぁ…ほんと、うぜぇ」


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