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4

王の話から一週間後。とうとう出発日がやってきた。

血を吐くような一週間だった。今までやってきたことを詰め込むような毎日。擦り傷、切り傷と身体中怪我だらけで年頃の女の子では普通ならあり得ないだろう。

それでも投げ出さなかったのは一種の意地だった。

泣いたってなにも変わらない。昔からそうだったから


出発の凱旋をして目指すはアクヴェーロ

王都から5日程かかるらしい


馬車には彼女。私は馬上にいる。

扱いに差がありすぎだと思う。まぁ、いいけど

「大丈夫か」

王都を出て数時間後。日も傾いてきた頃だから今日は近くの宿場町で泊まるんだろうか

王子様が声をかけてきたのはそう思案した時だった

「別に、これぐらい平気です」

つっけんどんな言い方になってしまい、王子様はばつの悪そうな顔をした


「この先に今日の宿を取ってきました」

従者としてやってきたが戻ってくる。

口を開きかけていた王子様は一度口を閉じて

「そうか。ならもう少しだ。進もう」

そう馬を歩かせ始めた



宿につけば彼女の護衛だと一緒の部屋に押し込まれた。

こんな言い方だと誤解されるが、私は彼女が嫌いな訳じゃない。

保育園の頃からの付き合いだし、大学まで腐れ縁でもあるあの性格だから妹みたいな感じだ


「なんだか、久しぶりにちゃんとお話してる気がするよ」

「そう?まぁ、聖は姫巫女として扱われてたからなぁ…」

「姫巫女なんて…私には荷が重いんだけどね。」

「そうか?まぁ、あんまり無理すんな。いざとなったら私が拐ってやる」

なんて冗談が言えるのも聖だからだ。

まぁ、他のやつにいう予定もないけど

「咲良ちゃん、かっこいい…なんか、言葉遣い荒くなった?」

「ん?まぁ…騎士団の寄宿舎に身を寄せてたからな」

この国でも女性が剣を取るのはなかなかないらしい。

だから男女比も9:1くらい。

騎士団といっても貴族だけが騎士になる訳じゃないらしい。

その上、騎士団長さまに目をかけられてる(監視されてるだけ)からって扱いが酷かった。

そんな中で1ヶ月近く揉まれていれば口が悪くなるのも仕方ない。ただでさえ口が悪いのに…


「ねぇ、咲良ちゃん。」

「ちょっと待て、聖。その咲良って呼び方だけどさ。止めてくれない?」

「え…?何で?私、咲良ちゃんに嫌われることした?」

突然の宣言に狼狽える聖。


「そうじゃない。聖は何もしてないよ」

聖は何もしてない。まぁ、巻き込んだけど

「それなら、どうして?」

「聖は何もしてない。けど、この世界は私に冷たかった。だから、この国の人間に名前を知られたくない」

勝手に巻き込んどいて、軽い謝罪。

人の話は聞かないし、名前も勝手に違う名前をつけて挙げ句の果てに、騎士団に放り込んで1ヶ月そのまま


ふざけんな。だよ


そんなやつらに名前なんか知られてたまるか。

呼ばれる私の名前が勿体ない。


「咲良ちゃん…」

「だからさ、私のことはニーアって呼んで。咲良って名前は元の世界に戻ったら呼んでよ」

「さく…「ニーア」 ニーア」

「ありがと。聖に呼ばれるなら勝手に付けられた名前も悪くないね」

誤魔化すように笑えば、聖は私に抱きついてきた


「戻ったら、たくさん呼ぶからね。ニーアの本当の名前。いっぱいいっぱい呼ぶからね!」

「…ありがと、聖」





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