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いったい、どうしてこうなった?
帰り道、聖と歩いていただけなはず。
新しく出来たクレープ屋の話をして、面倒な課題の話をして…
聖がマンホールの上を通った瞬間、光に包まれて。私は巻き込まれたのだ。彼女に
あの時手を引かれなければ、私はここにいなかった。
槍や剣を構えた人たちに囲まれることなどなかったのだ
「おい、ボーッとしてんなよ。新入り」
後ろから掛けられる声に振り向く。
目に入ってくるのは真っ赤に燃えるような赤い髪。そして金色の瞳
俺の世話役のシノノメだ。
「シノノメかぁ。」
「俺じゃ不服か?タクティス様を呼んできてもいいんだぜ?」
そう意地悪げに笑うやつに眉をひそめる
「やめてくれ、ただでさえ疲れてんのに、あの人の相手なんてしたら昼飯食いっぱぐれちまうだろ」
「まぁな。あの人の説教は長いので有名だからなぁ。ほら、噂をすれば…」
シノノメの指す方向を見やれば、銀色の長い髪が特徴的な男が歩いてくる。
「ニーア」
「団長。なにかご用でしょうか」
私が身を寄せる騎士団の団長であるタクティス・ディーノ様。後、私の剣術の指南役
私はこの人が苦手だ。全てを見透かすような瞳が、私を萎縮させる。
剣術の指南には容赦がない。血を吐くようなって表現があるが、本当に血を吐くなんて体験をしたのは初めてだ。
「王が御呼びだ。件の魔王討伐について」
「…………はい。直ぐに」
私が返事をすれば、タクティス様はマントを翻し歩きだす。
シノノメに昼飯はいらないと告げれば、慌ててタクティス様を追いかけた。
「ニーアのやつ、大丈夫か?」
シノノメがそう言っていたのを私は知らない