曇り空
《曇り空》
ふと窓を見れば、今にも雨が降りそうな曇り空だった。
あぁ、雨が降るな…。
そう思っていると、昔のことを思い出した。
その頃はまだ、アヤのことをよく判っていなかった。
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朝から雨が降っていた。 そしていつも通り、朝からアヤの姿が見えなかった。夕方、アヤがずぶ濡れになって戻ってきたときは、すごくびっくりした。
「おかえり、ってどうしたの!?」
「……あ、ただいま。傘、持っていくのを忘れちゃって…」
そう言って笑うアヤは、何処か哀しげだった。そんなアヤに言うことができたのは、たった一言だけ。
「とりあえず、お風呂で身体温めてきなよ」
「うん…」
一人去っていくアヤは、何かに悩んでいるようだった。
結局、アヤが何に悩んでいたのかは判らないままだった。しかし、疲れたのか、ソファーですやすやと眠るアヤの顔は、とても穏やかで安心した。けれど、アヤの異変に気付けなかった自分に嫌気がさした。
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「明日は雨かもね」
いつの間にか近くにいたアヤが呟いた。
「そうだね」
同意を返してアヤを見ると、遠くを見つめていた。
―――fin
初出:H23 6/11




