夜空の下で
《夜空の下で》
「ねぇ、今日は星を見ようよ」
午後の休憩でお茶を飲んでいた時、突然アヤがそんなことを言った。何故今日なのか、理由が判らないまま頷くと、アヤは珍しく本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
夜、僕らはバルコニーに出て、星を眺めていた。
曇りがちなこの時期には珍しく今夜は晴れていて、暗い夜空に沢山の星が瞬いているのが見える。
「きれいだねぇ」
「そうだね。でも、どうして突然星を見ようと思ったの?」
尋ねると、アヤは星を眺めたまま答える。
「今日はね…」
綺麗な横顔が目に入り、思わず見とれてしまう。
「地球の日付で、七夕なんだよ」
その行事のことは、聞いたことがあった。
「そういえば、そんな行事あったね」
「あれ、知ってるの?」
「うん。以前、地球のあちこちを旅した時に知ったんだ」
するとアヤは「そうだったんだ」と小さく呟いた。 再び空を見れば、星が川になっているように見えた。
「川みたいだ」
「そうだね。今日は晴れてるから、二人共無事に会えるかもね」
声のした方に眼をやると、また綺麗な横顔が見えた。
「そうだな」
視線を夜空へともどしながら頷いた。
しばらく沈黙が続いたが、それは気まずいものではなく、何処か心地好い感じのするものだった。
不意に右肩に重みを感じて顔を向けると、すぐそこにアヤの顔があった。スースーと、気持ち良さそうな寝息が聞こえる。疲れているようだから、そのままにしておいたら右手が伸びてきて、握ってあげるとキュッと握り返してきた。
「アヤ…」
名前を呼ぶとそっと眼を開けて、僕を見る。
「ねぇ、ちゃんと私のことを見付けてくれる?」
きっと怖い夢でも見てしまったのだろう。
「もちろんだよ。すぐに捜すし、見付けたら、迎えに行くよ」
「ありがとう」
安心したのか、微笑みを浮かべる。
「そういえばさ、七夕といったら願い事だよね」
「そうだね。はい、短冊。これに書こうよ」
白い紙とペンを渡され、願い事を書く。隣にいるアヤも白い紙にペンを走らせていた。
「何て書いた?」
僕は短冊を見せた。
―――いつもアヤが笑顔でいますように
僕の願い事を見たアヤは笑って、自分の短冊を見せてくれる。
―――いつまでもタクトと一緒にいられますように
「そうだね」
「あ、あとこれも」
そう言って、三枚目の短冊をだす。そして、サラサラと書かれた文字。
―――みんなの願い事がかないますように
Fin.
ブログよりお題…七夕
H23 07.07
H25 10/8
現在「さくら咲く季節」では地球の行事がないことになっています。この作品はそう決める前に書いた作品です。ややこしくてすみません。。。




