黒猫
11/16(土) 12:15 p.m.
僕はフォルテ。人間の言葉を話す僕が一体何者なのかをわかりやすく言うなら、僕は化け猫だ!って宣言するのが一番だと思うんだ。
正確に言うと、化け猫って種とはちょこっと違うんだけど、この世界の人間達は、妖怪って種に対してテキトーな知識を持っている人達が多いんだもの。だから、だいたいそれだけでみーんな納得しちゃうんじゃないかな? 化け猫なら言葉を喋っても当たり前だ!ってね。
いやいやまず、妖怪が人間の言葉を喋るとは限らないでしょ。動物だって人間の言葉を喋らないんだからさっ。
なんて突っ込みを入れちゃうと、せっかく納得しかけてた人間達も首を傾げてしまうだろうから、僕は不必要な説明をしない。
僕は妖怪でもなければただの黒猫でもないんだけど…その説明の前にまず、こんな冬の寒い中、どうして黒猫が一匹で巨大な建物の周りをうろうろしちゃってるのかを話すねっ。
「置いてけぼりにされたあああっ!」
叫んでやる。どうせ誰も聞いてないだろうし、人間には、にゃー!としか聞こえないんだもん。
でぱーと、とかいうこの大きな建造物は、ぺっと禁止という理由で僕の入店を断ったの。
ぺっとじゃないっていう言い訳は全然通じなくて、小春がだったら置いて行くっていうから大人しく一人で待ってることになっちゃった。
全く小春は僕が、れでぃであることを忘れてるよ。こんな寒空に一匹で放置するなんて。
しかも、まるで僕が乗っていたせいで肩が凝ったと言わんばかり首を回したと思ったら、僕に対する気遣いの言葉もなーんにもなしで中に入って行っちゃうし。
でも、あの全知纏っていうポニーテールのお友達はとってもいい子だや!僕の頭をひと撫でして、「ちょっと待たせてしまうけれど、大人しく待っていてね」って微笑んだと思ったら、わざわざ手まで振って行っちゃうんだもん。気分が良くなって、僕もにゃーんって、サービスで返事を返してあげちゃった。
でも!もう30分近く一人で待ってる!流石にもう暇で暇で仕方が無い!
だから、彼……じゃなかった。彼女、小春と出会ったあの日に何があったのかを、思い出に浸るように思い出しながらお昼寝をしようと思ったわけなの。
どうせならあったかいところが良かったけれど、この季節じゃ外を探しても見つかりっこない。
仕方なく二人と別れた入り口のベンチまで戻って丸くなる。別に冬だからと言って、猫が丸くなるのはコタツの中だって決まってるわけじゃないもん。好きだけど。
そうやって眠りにつきながら僕は思い出す。
始まりは11月13日。僕が彼を見つけ、彼が僕を見つけたあの日から、僕の願いを叶えるため、彼女を助けるための一ヶ月が始まったんだ……。




