危険な橋
再び区切れの都合上、短いです!
「嫌や」
山城がそう漏らした。
その言葉が一瞬理解できずにあっという間に呆けたような顔になる。
「へ?」
「嫌やて言うたんや、峰岸」
山城が胸ぐらを掴んでいる俺の手に自分の手を重ねた。その体温の高さに手を引っ込めそうになる。それに気づいてか山城が俺の手を強く掴んだ。
「お、い」
「俺は、どうしても、お前とバスケがしたいんや」
一言一言を区切るように言った山城の言葉に顔が熱くなる。そして今更ながら俺と山城の様子を見ているクラスメイトの目線が恥ずかしくなった。
見んな! こない恥ずかしい言葉、それも自分に向かって言われとる言葉を、他の人も聞いとるなんて溜まったもんやない! 恥ずかしすぎて顔の熱さで湯が沸かせそうや!
「あの、山城サン? 今、その話せんでええんやないかな?」
「峰岸が、俺を拒絶するからや」
そう言って俺をきつく睨む。
やめてくれ! なんかちょっといかがわしい言い方すんな! あぁほらそこの女子が! どことなく期待に満ち溢れた視線を送ってきとる!
「離さへんからな峰岸。絶対に」
山城の馬鹿野郎! お前それそこだけ聞いたら完全に口説き文句やんけぇ!
あまりの恥ずかしさに俺は掴まれていない方の手で顔を覆った。
もう何も言わないでおこう。何か言ったら倍になって恥ずかしい言葉が返ってくる。
「山城、お前、落ち着け」
俺にはこの時翔太が神様に見えました。――後日談、峰岸の自室、内心にて。
翔太の活躍によって渋々ながらも山城が手を離す。俺は逃げるように翔太の背中に隠れた。
「そうや。山城と航、一歩間違えれば危ない橋を渡りかけとる奴らみたいに見えるで」
健司が汗を浮かべながら言う。おぉやっぱりそう見えるか。
「危ない橋?」
山城が首を傾げる。
こいつ…素でやっとるんか。空恐ろしい奴やな!
「せや。俗に言う」
「「っわーーーー!」」
俺と翔太は叫びながら健司の口を押さえ、さらに翔太はすかさず間髪入れずに健司の頭を叩いた。
「いった! 何すんねん!」
文句を言ってきた健司の両肩を掴む。そして全力で首を横に振った。
「言うな! 言わんでくれ! 俺の心の安寧のために!」
「そうや教えんでええ! 知らん方がええことは世の中に掃いて捨てる程あんねん!」
翔太が鬼気迫る勢いで健司に詰め寄る。
「す、すまん」
流石に健司が口を閉じた。
「山城! お前はやっぱ俺に災を振りかけてくる奴やな!」
「えっ? 俺なんかしたか?」
「いや、もう、この話やめよう。いろいろ危険や」
首を捻っている山城を横目に見てまだ少し熱い顔を窓の外に出して冷ました。
こいつのしつこさを、少し、心地よく感じながら。




