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squeal sound  作者: 緋絽
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口論

うぅぅ…結局微妙な区切れ方に…!

「――なんで最近自主練してへんねん、峰岸」

山城が昼休みの弁当を食べている時に突然不貞腐れたような顔で言った。

「なんでて、お前が俺が行きたい公園におるからやろうが」

てか、なんでお前ここにおんねん! 自分の教室で食べろや!

「おってもええやん! 練習すんなら人数おったほうがええやんか! …っておやぁ?」

ニヤリと山城が笑う。

思わず身を引いた。嫌な予感。

「な、なんやねん」

「来とったんや? 峰岸」

顔が熱くなるのがわかった。

「何言ってっ…! たまたま通りかかっただけや!」

クソ、墓穴掘ってもうた! 羞恥通り越して悔しいねんけど!

嬉しそうに山城がニヤニヤと笑う。

「またまたー! ほんまはやりたかってんやろ? 今度部活仲間にも声かけて…」

その言葉に、血が逆流する。指の芯まで一気に熱くなった。

山城の目の前に箸を突き出す。わっと声を上げて山城が僅かに反る。

「いらんことせんでええ。――人相手の練習なんかやる必要ない」

一瞬、空気が凍りついたように固まる。

俺の目を見て山城がきつく口を結んだ。いつもの明るさが抜けて、精悍な顔つきに変わる。少しきつめの印象になるのだが、今はそんなことにも怯まなかった。まったく、気にならない。

それより怒りの方が強かった。

ふんと鼻を鳴らす。

「こーっら航! 隼ちゃんいじめたらあかんでしょ!」

立ちあがった翔太が俺を力強く指さす。

それに合わせて同じように立ち上がる。

「お前は誰のオカンやねん、翔太!」

「正座せぇ航! オトンはそんな子に育てた覚えはないぞ!」

同じく立ちあがった健司が腰に手を当てて真顔で、なのにあのテンションで言った。

噴き出しそうになりながら一応突っ込んだ。

「育てられた覚えがあらへん!」

翔太が衝撃を受けたようにフラフラとたたらを踏む。

健司がサッと支えた。

「航…知っとったの…? あんたは…」

「オカン…黙っとって悪かった、堪忍やで…」

翔太が顔を両手で覆う。

「翔子、私が言おうやないか」

健司が翔太(翔子?)の肩を掴んで言った。

「あなた…」

「そうか…航は知っとったんやな…お前が…」

くっと健司が眉間を押さえる。

「お前が…」

「オトン…」

「お前が…!」

「「長い」」

「ハイハイ終了」

翔太が顔の前で手を振る。俺は健司の頭を軽く叩いた。

「タメが長すぎんねん、視聴者が飽きてまうやろ」

翔太が健司に駄目出しっをする。

「すまん、方向性を見失ってもうた」

「もっとスタイリッシュなボケを考えなあかんな」

「それ以前に急にコントし始めたんを突っ込むべきやと俺は思うねんけど」

山城が先生に向かってやるように手を上げて言った。

「「「……それもそうやな」」」

ドカッと音がするほどの勢いで椅子に座る。

「ま、そんなわけやから。俺はもう二度とバスケはやらん」

「なんでやねん峰岸! 最後の大会に負けたくらいでなんで…!」

頭に血が上った。

山城の胸ぐらを掴んで引き寄せる。けたたましい音を立ててペンケースの中身が落ちた。

「何知ったような口聞いてんねん!」

「え…」

「わっ、航っ…」

その音と怒鳴り声に周りにいた生徒がざわめく。

「なんも知らへんくせに勝手な憶測で無責任な発言をすな! 腹立つねんお前!」

最後の大会に負けたくらいで、だと。なんもわからへんくせに勝手なことを。ただの数回しか負けたことのないお前に何がわかる。あれは負けただけじゃない。必死で喰らいついて、それで負けたのだ。ギリギリまで喰らいついて、それで負ける悔しさを、どうせお甘えは知らんのやろう。

強く、唇を噛む。怒りで、どうにかなってしまいそうだ。それは、決して山城だけに対する怒りではなく――。

負けた時のあの虚脱感を、何度――何度、味あわせたら気が済んだのだ、俺は。

罪悪感ばかり、胸に沈殿していくのだ。あの、バスケをした時の楽しさを、あの疲労した体に残る達成感に似た感覚を、俺はもうはっきりと思い出せない。皆の、あの疲弊し疲れ切った顔を、もう一度見るのがつらい。恐れている。心の底から、そう思った。

山城の襟首を掴み、力が入りすぎて白くなった手をゆっくりと解す。渦が、体の中を巡っているようだ。

「もうええ。山城」

「……何?」

「お前、俺の生活範囲内に二度と入ってくんな。俺とお前は相容れへんねん、根本からな。そんなんが一緒におっても、人様の迷惑にしかならへんやろ」

今みたいにな、と言うと山城は何も返してこなかった。僅かに俯きながら、爛々と底光りする目で挑むように睨んでいる。

こいつは、試合の時にもこんな顔をするんじゃないだろうか。相手を、威嚇するように、その強烈な意志のこもった目で対峙するのではないか。

ふと、そんなことを思った。


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