友人の気遣いに気づけない俺
どうも。緋絽です!
翔太のキャラが書きやすくて書きやすくて…!
「好きです。あの、付き合うてほしいねんけど」
目の前のセミロングの髪の女の子に俺は頭を下げる。
「ごめん。今は付き合うとか考えられへんねん」
女の子は泣くのを堪えるように俯いた。
胸が僅かに痛んだ。それでも、やはり考えは変わらない。
「ありがとう、嬉しかった」
さらに深く頭を下げる。
「うん」
女の子は泣きそうな顔のまま笑うと、バイバイと小さく手を振って走り去っていった。
「お帰り航君。また告白タイムやったんか?」
教室に帰ると放課後だから人が少なく、俺を待っていた2人しかいなかった。机に行儀悪く足を上げて、翔太が漫画から目を離さぬまま言った。
「…そうや」
「その顔やとまたフッたんやな」
健司が窺うように聞いてきた。
「だって、好きやないし…」
「相変わらず変な奴やなぁ。俺やったらとりあえず付き合うてみるで。後から好きになるかもしれへんやないか。そしたらその時、後悔するやろ」
翔太が漫画を閉じて鞄に閉まってチャックを閉める。
「その間俺に縛っとくの申し訳ないやん。もし好きにならへんかったらどうすんねん」
「もし、のことなんか考えたってしょーもないやんけ。その時はその時、バイバイするだけやろ。ありがとう、さいなら終わりや」
翔太がひらひらと手を振る。
俺はじろりと翔太を睨んだ。
小柄な風貌からは考えられないのに、こいつは妙なところが醒めているのだ。いや、醒めているというよりは、時々どこか冷酷なほどあっさりしているのだ。
「翔太、流石にそれはあかんやろ」
健司が翔太の頭を叩く。
「いたっ!」
「やっぱりそう思うか彼女持ちの健司クン! 女の子には真摯でおらなあかんよなぁ。ほれ見ろ翔太、お前そんなんやからモテへんねん。もっと女心を理解しろ」
「女心は難しいからほっといたらええんと違うんけ! 航が言うたんやろが!」
「押さえるべきところは最低限として理解しとくんがモテる男や」
「はぁー?そもそもやな、航、そんなにチマチマ考えとったらハゲるぞ!」
「2人共動物園の猿みたいなんになるのやめろや、俺が恥ずかしいやろ」
健司が宥めているのかそうじゃないのかよくわからない宥め方をしたおかげで喧嘩をする気力がなくなった。
「あほらし。帰るで」
「あっ、ちょっ、航!」
バタバタと忙しなく2人が追ってくるのがわかった。
電車から降りてしばらく歩くとバス停がある。翔太はそこからバスに乗ってさらに十五分近く揺られて帰るのだ。
慌てて発車しそうになっていたバスに駆け込んだ翔太を見送った後、プラプラと健司と2人で歩いた。
「なぁ健司。俺、思うねんけどな」
「何や?」
健司が足下の石ころを蹴った。まだ空は明るいのに、影は長い。
「翔太って彼女ほしいほしい言うてるくせに、いざとなるとなんか醒めてへんか? 今日とか」
窺うように覗きこむと健司がビックリしたような顔で俺を見た。
「健司? 俺変なこと言うたか?」
「いや…」
健司が考え込むようにうーんと声を上げた。
「醒めているわけやないと思うで」
「ほななんやねん。まさか男色なんか」
「それやったら、まぁ、それも考えられるけど。そうやなくてさ」
アホかと健司が頭を叩いた。
結構真面目に考えたんやけどな。
「さっきは多分、航元気にさそうとしたんやないか。またしょぼくれとったやん、お前」
「えっ」
翔太が?
「あいつがお前のこと待ってようって言ったんやで」
翔太の顔を思い浮かべる。
そういえばあいつ、今日はモテて腹立つとか言わへんかったな。
「お前は悪ないって、言いたかったんやないか」
俺は思わず苦笑した。
なんや、あいつ。遠回りにもほどがあるやろ。
そんな俺を見て健司も笑った。
「それにしても健司、お前よう人のこと見とるなぁ」
「そうか? 普通にわかると思うねんけど」
健司が首を捻る。
「いや、マジですごいで」
それを聞いてフハハと声を上げて笑った。
なんとなく、健司の彼女は健司のこういうところを好きになったんやないかなぁと、思った。
「照れるやんけ」
「お前の彼女は幸せ者やな。お前、俺の彼女なってみいひんか」
「やめてくれ。そんなん聞いただけで死ねるわい」
「酷い! これで俺のメンタルはズタズタや!」
「きしょいこと言うたお前が悪いんやろ」
「淡々と言いよった!」
その後ぎゃあぎゃあと言い合いながら帰った。




