4:船旅
銅鑼の音が響く。気持ちのいい晴天。朝陽がにこにこしてる。わたしたちの乗った船は、ゆっくり動きだした。甲板に出て、出航の様子を眺める。キッポが大はしゃぎだ。
「動いてる! 海の上なのに! ね? リムノ、ルカス!」
ルカスは苦笑。
「そうだな。これからもっと速く進むぞ?」
「キッポ。セイルって言うんだけど、大きな帆が張られてるでしょ? あそこで風を受けて進むの。お天気にもよるけど、今日みたいに晴れて風があれば、かなりのスピードが出るわ」
「へええ~~!!」
ぶんぶんと、岸壁の人たちに手を振ってるキッポが、驚き共々返事。――懐かしい。わたしがまだまだ幼かったころ。兄さんと妹で船に乗った時みたいだ。胸の奥が、ちょっとだけ冷たくなった。2人とも、どうしてるかしら?
「さてと。客室に行くか。キッポ? どうする?」
「もうちょっと見てたいけど、中も気になるから行くよ」
「まあ、最下層のDルームだからな。期待しない方がいいぞ」
甲板から、細く狭い階段を下りる。潮の香りが強くなった。一番下まで下りて、階段を背中に。Dルームははっきり言って、ザコ寝部屋。板張りの床にラグが敷かれていて、棚にある毛布を取り出し、もう寝ている人もいた。
「ココが部屋なの?」
「そう。個室じゃないのよ。だから貴重品はしっかりと自己管理してね。特にキッポは、宝珠を持ってるんだから」
わたしだったら額冠。ルカスはお守りと長剣かしら? キッポはうなずいた。
「分かった。ポケットから出さないようにするよ」
ポケットをぽんぽんしてる。
「ボク、おなか減った。食堂とか無いの?」
「確か、甲板の中央部にあっただろ。行くか」
「お金平気?」
わたしはそれが心配。
「大丈夫だ。食費を最優先に管理してる。朝メシ抜いたから、オレも腹減ってる。キッポ? 新鮮な魚介類が食べられるぞ」
「うん!」
キッポが喜んでるサイン。正三角形の耳が縦にぴくぴくしてる。わたしたちは再び、甲板へ向かった。上がり切って、船の中央に行く。あったわ。大きなガラス張りの食堂で、景色が良く見えそう。
中に入ったら、そんなに混雑していなかった。窓際の席に座る。オーダーはルカスに任せた。ちゃんと港で買った蒸留酒も用意してる。こんなところが、ルカスの良く分からない部分。よく朝から飲めるわね。
食事は本当に美味しかった。これでお値段が破格なんだから、やっぱり船での旅を実感した。さすがのキッポも、おなかいっぱいになったみたい。ルカスは頬から耳まで紅くして酔っ払っちゃったけどね。もう慣れっこだけど。わたしたちはそれぞれ満足して、Dルームに戻った。風次第だけど、最低でも2週間は船で過さなきゃいけない。ルカスなんか、もう毛布を引っ張り出して、長剣を抱くようにしながら寝ちゃった。
「さてと。わたしたちも横になろっか。キッポ?」
「うん。ボクも満腹で眠くなって来たよ」
毛布をキッポに渡した。ふぁ~。わたしも眠たい。
「じゃ、貴重品だけはしっかりね。おやすみなさい」
「分かった。おやすみ」
横になったわたしは、たちまち眠りの中に引き込まれた。




