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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第一部 第四章 部族都市クルパーカー編 『戦争勃発、陰謀の末路』
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別行動開始

「フレス。……目を瞑ってくれ」

「……うん」


 天空墓地へと辿りついてすぐ、二人の観客のいる中、ウェイルとフレスがキスをした。


「……あの小娘、後で殺す……!!」


 背後から発される殺気に戦慄を覚えつつ、唇を重ねる。

 直後、フレスの体は青白い光に包まれ、元の姿である神龍『フレスベルグ』がその姿を現した。


「へぇ、これが龍か。噂には聞いていたけど、なかなか不細工ね」


 アムステリアの毒舌は留まるどころかさらに強くなる。

 人が龍にあいまみえた時、おおよその人間は龍に対して恐怖しか抱かない。

 フレスを知っていたウェイルは例外にして、アムステリアの反応は非常に薄かった。


「さっさと行きなさい、デカブツ。時間がないんでしょ?」

『ほう、我が姿に恐怖するどころか、逆に激しい憎しみを覚える人間がいるとはな……。珍しいこともあるもんだ』


 フレスベルグもアムステリアの反応は新鮮だったようだ。


「フレス! とにかく急いでクルパーカーへ向かえ。到着したらサラーに従うように。それと不完全側には『龍殺し』がいる。油断するなよ!」

『承知している。さあ、サラマンドラ、我が背に乗れ』

「……うん」


 サラーがフレスベルグの背に飛び乗る。

 それ見てフレスベルグが苦笑した。


『まさかこの背に他の龍族を乗せることになるとはな。全く世の中は不思議なもんだ』

「私だってフレスなんかに乗るとは思わなかった。私を落とすなよ? フレス」

『ならばせいぜい必死にしがみついていることだ。ではウェイル。先に向かうぞ』

「ああ。俺達も必ず向かうからな。安心して待ってろ」

『無論だ。――ではな』


 そういうとフレスベルグは氷のように透き通った翼をはためかせ、颯爽と空を翔けて行った。


「……今度から汽車じゃなくてあいつの背に乗ろうか……?」


 ――フレスは間違いなく嫌がるだろうけど。


「ウェイル。私達も行くわよ」


 フレスベルグとの会話の最中、アムステリアはとある装置の準備をしていた。


「これ、少しの間無断で借りちゃったけど、いいよね?」


 これ、とは目の前にある装置のこと。


「あんまり良くないけどな。今回の件は俺が責任を持つ」


 ――神器『異次元窓』。


 一見すると大きい窓が一つある、ただの壁なのだが、これはれっきとした転移系神器である。

 サスデルセルで見た神器のような長距離転移が可能なものではなく、せいぜい半径五キロ程度しか転移できない中距離程度の代物ではあるが、今回はこれで十分なのだ。


「ここからなら競売協会の屋上には届くはずよ」


 プロ鑑定士協会本部と世界競売協会本部は、このマリアステルのシンボルとも言える建造物で、この都市の中央に隣接して建てられている。

 その両塔の高さは全く同じに建てられており、屋上までの距離もさほど遠くはない。


「さて、神器を発動させるわよ」


 アムステリアが神器に手を触れる。

 すると転移系神器特有の赤い光が窓から漏れ始めた。


「ウェイル。これを被って」

「……これは?」


 手渡されたのは、見慣れぬローブ。


「…………これって!?」


 しかし、ローブにある刺繍には嫌と言うほど見覚えがあった。

 大きな円の中に、さらに五つの円が重なりあうように描かれたマーク。



 ――『不完全』の紋章である。


 

「これをどうしろと!?」

「着るのよ。意味は判るでしょ?」

「…………」


 そう、ウェイルはこのローブを手渡され、マークを見た瞬間、こみ上げる怒りと共に、その理由にも気づいていた。


「変装か」


 これから競売協会に潜入することになるが、たとえプロ鑑定士でも競売協会内では部外者だ。

 その部外者がうろつくのを競売協会が見過ごすはずはない。

 だからこその変装なのだ。

 では、競売協会にふさわしい姿に変装すれば良いのではないか?

 否。それは間違いである。

 そもそも本来であれば潜入などしなくとも入場許可を得ればよいだけだ。

 だが今の二人にはとにかく時間がない。入場許可申請をする時間すら惜しい。

 さらに下手に変装して、誰かに話しかけられて時間を浪費するのは避けたいところ。

 時間を浪費させうる邪魔者は、避けつ消しつつ進む方が手っ取り早い。

 だからこそ、不本意ではありつつも『不完全』に変装する方が都合はいいのだ。

 ウェイルにも立場がある。もしもの場合でも正体がばれるわけにはいかない。

 ならば競売協会に無断潜入する罪を、全て『不完全』に擦り付ければいい。


「ウェイル。もし姿が見つかったら、躊躇わずに気絶させること。判ってる?」

「ああ。気は進まないが、それが一番だな」

「脱出するときには気を付けてね。もし異次元窓の入口がばれたら、プロ鑑定士協会も疑われるわ」

「大丈夫さ、俺はあまりドジを踏まないからな」

「もう少しはドジの方が私好みで可愛いのだけどなー」

「そりゃどうも。アムステリアは後五年若ければ可愛いかったんだどな」

「殺すわよ?」

「冗談だ。今でも十分魅力的だ」

「そりゃどうも。まあ、ウェイルはそのままでも十分可愛いけどね♪」


 二人は簡単な漫才を繰り広げ緊張を解し合うと、異次元窓に手を掛けた。


「――さあ、蛇が出るか――」

「――鬼が出るか――」

「――はたまたデーモンか――」

「確認しに行くぞ!!」


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