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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編 『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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旅の終わり

 フェルタクスの発動まで、残り二分を切った。

 フェルタクスの前にフレス達が並び、その後ろにそれぞれのパートナーが付き添っていた。


「……ウェイル、離れていて」


 これから魔力回路に無理やり入るには、フレス達の魔力をぶつけて、回路を損傷させないとならない。

 近くにいては魔力の暴走の被害を受けて危険だ。

 だからウェイル達は少しだけ距離を取った。


「いくよ……!!」


 龍達四人が、手に魔力を込めてフェルタクスにぶつかる。

 フェルタクスは音を立てて震え、それに抵抗する。


「……くっ、硬いね……!!」


 連戦を終えたばかりの皆に、フェルタクスの力を払い除ける力は、もうあまり残されてはいない。

 急がねば、フェルタクスは起動してしまう。

 そんな時だった。


「見てられないなぁ、フレス?」

「ティア!?」


 フレスの手にそっと手を添えてきたのは、まさかのティアであった。


「どうして君が!?」

「……話、全部聞こえちゃったもん。ケルキューレに突き刺されて、ニーちゃんみたいに変な心が破壊されたのかな? なんだかフレス達と一緒にするのが正しい気がするんだよ」

「ティア……!! うん、手伝って欲しいな、君に」

「ティア、役に立てる?」

「勿論だよ! 手伝って!」

「うん!」


 フレスにお願いされた時のティアの顔は、本当に嬉しそうで、優しい笑顔をしていた。

 ティアは、本当はいい子なのだ。

 ウェイルはその表情を見ただけで、そう確信できてしまった。


「開いた!」


 テメレイアはアテナでフェルタクスのコントロールをしているおかげで、魔力回路の損傷を確認した。

 これもティアの力が加わったことが大きい。

 彼女のおかげで、フェルタクスへの侵入口が出来た。


「ティア、先に入っているから」


 我先にティアは、出来た穴へと手を置き、光り輝くと共に中へと吸い込まれていく。

 ゴゴゴゴゴとフェルタクスが唸る。

 残り時間まで、後一分を切った。


「イレイズ、行くよ」

「はい。必ず帰ってきてください」

「当たり前だ。約束を忘れたら焼き尽くすぞ」

「心配無用。貴方の為に可愛いドレスを百着以上用意してお待ちしていますよ」

「ふん、いいよ、着てやる」


 そしてサラーは穴へと手を当てた。

 彼女の身体が光り輝いていき、そして。


「またな、イレイズ」


 そう呟いて、サラーはフェルタクスの中へ入っていった。


「サラー、……お待ちしています。いつまでも……!!」


 イレイズはそう呟いて、腰が抜けた様に座り込み、そして腕で目を覆った。




「フロリア」

「うん、いってらっしゃい」


 ニーズヘッグはそれだけ言って、フェルタクスの中へ吸い込まれていく。

 言葉数は少ない。

 でも、それだけで全て判ってしまう。


「いつでも帰ってきなよ。……目、痒いなぁ」


 気丈にそう言うフロリアも、ニーズヘッグが見えなくなったと同時に、そんな幼稚な嘘をつきながら手で目を擦っていた。





「レイア」

「ミル!!」

「わらわはレイアに会えて幸せじゃった。レイアに会えねば、人間をこうも好きになる事なぞ出来んかった。願わくは、もっと早く会いたかった……!!」

「僕だって、もっと早く君と会いたかったよ! もっとずっと一緒にいたかった!!」

「大丈夫、次はずっと一緒じゃ。だから待っていてくれ。そうじゃ、レイアはずっとウェイルに惚れておったな。次会う時は、レイアの子供が見たい」

「なっ!? ミル、何を言って!?」

「ナハハ、頼んだぞ!」


 ミルは大声で笑い、そして光り輝き、吸い込まれていく。


「ミル!! ……ありがとう……!!」


 テメレイアは両手で顔を覆いながら、止まらぬ涙を抑えていた。



 ――そして最後の残ったのは。


「ウェイル」

「……なんだ?」

「浮気はダメなんだからね!!」

「ちょっ、お前一体何を!?」

「ウェイルはボクのものなんだから! そこんとこ、ちゃんと覚えておいてよね。さっき伝えたでしょ!? ボクの気持ち!」

「……ああ、しっかり伝わったよ」

「でも、まあミルもああいったことだし、ちょっとくらいはいいんだけどさ。レイアさんとかテリアさんとかなら、ボクも安心してウェイルを任せられるし。……ステさんはダメだよ!」

「何なんだ、その基準は……」

「確かにボクもウェイルの子供は見たいと思うしさ……。でも! 一番はこのボクだかんね!」

「心配し過ぎだ。一番はお前だよ」

「本当!? エヘヘ、嬉しいなぁ。だったら一刻も早く戻ってこなくちゃね」

「戻ってこい! そしてまた旅をしよう! 次はもっと楽しい旅だ!」

「勿論だよ! ウェイルとの旅はどこに行っても楽しいけどさ!」


 フレスが穴に手を突いた。

 魔力を込めると、フレスの身体は輝いていく。


「フレス!」


 ウェイルは堪らず叫んだ。


 そして。


「愛しているぞ!!」


 その言葉に、フレスはグスッと一瞬涙で顔を歪ませたが、次の瞬間には。


「ボクも!」


 今まで見てきたフレスの笑顔の中でも、最高の笑顔を見せて、それに答え。



 ――そしてフェルタクスの中へ吸い込まれていった。




 ゴゴゴゴゴとフェルタクスが振動を強める。

 だが、その揺れは次第と収まってき、そして。


 フェルタクスは完全に機能を停止させた。



 この瞬間、芸術大陸アレクアテナは滅びの運命を回避し。



 ――龍と鑑定士の長い旅は、終わりを告げた。




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