表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編 『龍と鑑定士の、旅の終わり』
494/500

フェルタリア王家の終幕

「フレスベルグ!!」

『久しぶりだな、お師匠様』

「こ、この為に神器を使ったんですね……!!」


 三種の神器『心破剣ケルキューレ』により、フレスの心の中で死んだ龍神フレスベルグ。

 それが今、『無限地獄の風穴』の力によって、復活を遂げていた。


「フレスの奴、よく考えたな!! 流石は俺の弟子だよ!!」

『はっは、我もフレスのことは誇り高い。折角戻してもらった命、全てをフレスの為に捧げよう。……しかしなんだ、お師匠様。我がいない間、いつの間にフレスとそんな仲に?』

「今だ」

『今!? この状況でか!? ……流石はお師匠様。やることが普通の人間ではないな』


 これにはフレスベルグも口があんぐりである。


「フレスベルグ、おしゃべりは後だ。今はあいつをどうにかしないと。状況は理解出来ているか?」

『無論だ。我とフレスの記憶は繋がっているからな。我にとってもメルフィナには大きな借りがある。ここで返させてもらう……!!』

「……フレスが龍の姿に……!? 厄介な……!! だけどケルキューレの前では所詮龍も雑魚に過ぎない!」

『ふん、本当に雑魚かどうか、試してみるか?』


 フレスベルグは背中のリングを輝かせていく。

 メルフィナも、来るべき攻撃に備えて、ケルキューレに力を込めた。


『――無に帰れ!!』


 フレスベルグの咆哮は、絶対零度の冷気となりて、メルフィナへ一直線に吹き荒んでいく。


「ケルキューレ! 龍の魔力程度、吹き飛ばしてしまえ!!」


 先程ウェイル達に浴びせたように、メルフィナはケルキューレの魔力を光の爆発に変えて、絶対零度の冷気を打ち消そうと撃ち放った。


「龍如きに負けるはずがない!!」

『愚かな……!!』


 壮絶なる魔力のぶつかり合い。

 堪えきれず床の石畳は割れ始め、周囲の空気も歪んでいく。

 そして、ついに力の均衡が崩れた。


「な……!? ケルキューレが押し負けている……!?」

『当たり前だ。貴様は我ら龍の力を甘く見過ぎている』

「何故だ!? 前の時はフレスだって簡単に倒せたし、そもそもお前はティアに勝てなかったじゃないか!!」

『そこのところがお前の勘違いしているところだ。我ら龍が少女の姿をしているとき、それは力を封印している状態だ。本来の力はこの姿でなければ発揮できん。それと今お前はティマイアがどうこう言っていたな。言っておくが、あいつの力は最強だ。ティマイアが本気を出せば、我とてただでは済まないだろう。ただあいつは本来の力を出せないだけだ。お前の持つその剣によって、太古の昔に心を壊されていたのだからな』


 ――光の神龍、ティマイア。


 龍達の中で最も慈悲の心を持ったその龍は、その心優しさに付け込まれ騙され、裏切られ、そして最後は心まで破壊された。


『奴は本当に不憫よ。心が壊れてまで、人の愛を求め続けていたのに、奴につくパートナーはいつだってお前みたいな腐った連中だ。だからあいつは弱い。本当に大切なものを知らずに生きているのだから。本当に可哀そうだと思う』

「ティアが……可哀そう……!?」


 そう言われ、またケルキューレ側の魔力が押し負けていく。


「ティアが可哀そう……? いや、違う! ティアは僕といて、とても楽しそうだった……!!」


 ティアを最終目的を達するための駒だった。

 だからティアをこの剣で突き刺すことになっても、別に構わないと思っていた。

 でも、今ようやく気付いたことがある。


(ああ、僕、ティアを刺した時、後悔していたんだ)


 ティアが傍にいて、この数か月とても楽しかった。

 いつかいなくなる存在であるというのに、何故か親近感を覚えていた。

 昔からずっとパートナーであったかのような。

 出会った時からずっと、そう思っていた。


「そっか。僕……」


『ケルキューレの力の源は、それこそ心の強さ。人の心を喰らい、その力を我が物としている神器だ。だがお前は心の使い方を知らない。だからケルキューレも、貴様では100%の力を引き出すことが出来なかったのだ! だからこそ、この結果だ!』


 ケルキューレの魔力は、もうフレスベルグの冷気を抑える力すら残っていない。


『――もう、無に帰れ』


 もう一段階大きくなったフレスベルグの冷気は、ケルキューレの魔力全てを呑み込んで、メルフィナに直撃した。


「僕は…………!!」


 メルフィナの身体は、その至るところが凍り付いていく。

 もうケルキューレを握ってすらいられない。

 カランと手から落ちたその剣は、魔力の消失と共に輝きを失っていく。


「お前は、心を知らなさすぎた。龍の心、人の心。だがな、フェルタリア王は、最後までお前のことを信じていたはずだ」

「お、お父様が……?」

「師匠から聞いたが、フェルタリア王は最後の最後まで、お前のことを信じていたって。だからこそ王は、全ての状況を知っていたにも関わらず、一人逃げることをしなかった。民を守るために残る、その気持ちもあっただろうが、一番はお前が自分自身の愚行に気付き、止めてくれるだろうと信じていたのではないかと、そう師匠は言っていた。俺もそう思う」

「……そっか。お父様は……」


 フレスベルグの氷は、メルフィナの身体を完全に凍り付かせていく。

 その最後の最後で、メルフィナは呟いた。


「本当に、馬鹿な人だったんだな……」


 その直後、メルフィナの時は止まる。


 全身が凍り付いて、そして。


「フェルタリアの歴史は、ここに幕を下ろした」


 ウェイルが氷の剣を精製し、凍りついたメルフィナを一閃すると。


 メルフィナという存在は、最初からこの世に存在していなかったかのように、無に帰っていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ