国王とメイドとセルク・オリジン
「どうぞ、こちらへ」
王宮から迎えに来た兵士の後について、二人はヴェクトルビア王宮にやってきていた。
到着してすぐ、二人は謁見の間に通され、少し待っていると国王本人が姿を現した。
国王――アレス・ヴァン・ヴェクトルビア。
内陸故の水不足で悩んでいたヴェクトルビアを、公共事業として井戸を掘り、文字通り民を潤したとされる、通称『水の王』。
また極度のセルクマニアとしても有名で、あのセルク・オリジンを七枚中、なんと四枚所持しているほどである。
ウェイルとはアレスがお忍びで参加していたオークションハウスで知り合い意気投合、それ以降気の許す知人として互いに付き合い始めたのだ。
「おお、久しぶりだな、ウェイル」
「ああ、久しぶりだ。どうだ? セルクコレクションの方は」
「おかげさまで集まってるよ。セルク・オリジンの最後まで見つかったからな」
「シルグルのとこにあった奴か」
「そうだ。シルグルに鑑定を依頼していてな」
「なるほどな」
「それにしても随分可愛い子を連れているじゃないか?」
「こいつか? こいつは俺の弟子でね」
「ほほう、ついに弟子をとったのか!」
「ボク、フレスって言います! よろしくね♪ 王様!」
国王相手にも物怖じしない二人の態度に、周囲の者からは批判の声が上がる。
「なんだ? あの鑑定士……。国王様に向かってなんて口の聞き方だ」
「それにあの恰好。まるで品位もない。隣には幼女を連れているし……」
「誰が幼女じゃーー!!」
周囲の囁きに憤怒するフレス。
「おい、お前たち、客人に失礼であろうが! すまぬな、お嬢さん」
「全くだよ! ボクは幼女じゃない!」
傍から見れば立派な幼女だよ、とつい本音を漏らしかけたウェイルだった。
「アレス。俺はここに世間話をし来たわけじゃないんだ。込み入った話があってな。……シルグルに頼まれて」
「……なるほどな」
アレスは利口な王だ。ウェイルのそれだけの台詞で、話の内容は大方理解したらしい。
「よし、なら我がコレクションルームに来るが良い。フロリア!」
「はっ!」
アレスが呼ぶと、機敏な動きで一人のメイドがウェイルの前に現れていた。
「フロリアよ。その客人二人をコレクションルームまで案内せい。ワシもすぐに行く」
「かしこまりました」
「ではウェイル、また後でな」
「ああ」
そう言うとアレスは従者を従えて謁見の間を去って行った。
残った大臣達の鋭い視線が二人に突き刺さる。
「…………ウェイル……なんかボク達、睨まれてる?」
「……みたいだな……」
フロリアは王が去った方へ、今一度深々と会釈し、二人に向き直った。
「お二人のことはこの私、メイド長のフロリアがお世話させていただきます。早速ですがコレクションルームに案内いたします」
フロリアは二人を一瞥後、言うが早いかそそくさと謁見の間を去って行った。
「案内する気あるのか……?」
「ウェイル! 置いて行かれちゃうよ!」
二人は急いでフロリアの後について行ったのだった。
――●○●○●○――
「ここがコレクションルームです。少しお待ちください」
フロリアが部屋のカギを開け、二人は中に通された。
「おお……さすがだな……」
「ウェイル! 絵画がたくさんあるよ!?」
二人が驚愕したのも無理はなかった。
何せ部屋の壁の至る所に絵画が展示してあったからだ。
「すごいな……こっちの絵画なんてほとんどがセルクじゃないか……」
アレスはセルクマニアで有名である。だがこれほどまでにコレクションしているとは予想の範疇を超えていた。
「うわーーー! きれーーーー!!」
大陸中探してもこれ以上ないほどの価値のある絵画に囲まれ、フレスははしゃぎ回っていた。
「おい、フレス。あまり騒ぐな。……翼が出るだろ……?」
「あ。そうだね……。気を付けないと……。それよりもウェイル、一体何をしてるの?」
「セルク・ナンバーをメモしているんだ。ここにある奴はおそらく本部に登録済みだろうが、一応な。職業病みたいなもんだ」
「へー。鑑定士って大変だね!」
「……お前、鑑定士になりたいんじゃないのか……?」
「お二人とも!!」
騒ぐ二人に厳しい視線を向けるフロリア。
扉を閉めて、険しい顔で二人に近づいてきた。
(なんか怒ってないか……?)
(どうだろう……? ボク達、何か悪いことしたかな……?)
(強いて言えばお前がはしゃいだくらいか……?)
(でも何も壊してないよ……!?)
あまりに真剣な面持ちの為、二人はその理由をこそこそと議論しあう。
しばしの間フロリアは真剣な面持ちを浮かべていたが、こそこそとする二人を見て堰を切ったように笑い始めた。
「あははははは!! お二人とも、とっても面白い人たちですね!!」
突如豹変した彼女に、ウェイルとフレスは思わず顔を見合わせた。
「あはははは!! あ、失礼しました。自己紹介がまだでしたね。私、この王宮でメイド長を務めています、フロリアと申します」
「ああ……。俺は鑑定士のウェイルだ」
「ボク、フレスって言います」
あっけにとられた二人を余所に、フロリアは続ける。
「全く、お二人とも! さっきの謁見の間での態度は何なんですか!? 国王にも平然とタメ口でしたし! 大臣達の視線がとっても痛かったですよ!? 私まで息が詰まりそうでしたもん!」
「それは……なんか悪かったな」
「まあいいです。私も大臣達の手前、お二人にはふてぶてしくしてしまいました。すみません!」
「はぁ」
「……ウェイル、この人、さっきの人と本当に同じ人?」
ぺこりと愛想よく頭を下げたフロリア。
その笑顔は人懐っこく、とてもメイド長というかしこまった役職をしているとは思えないほどである。
「なぁ、フロリア。君は本当にメイド長なのか? 少し若すぎる気がするが……」
「その質問には我が答えようぞ、ウェイル!」
「アレス様!」
途端にフロリアが跪く。
勇ましい声と共に扉から入ってきたのはアレス王本人だった。
「さっきはすまんな、ウェイル。あそこではどうにも大臣らの目が厳しいもんでな。こっちに移動してもらったよ」
「なに、いいさ。俺としてもこっちの方が色々と都合が良い」
ウェイルは基本的にあまり敬語は使わないし、アレスもウェイルに敬語を使われることを嫌がる。
だが相手は一国の国王なのである。家臣の者からいい顔はされないだろう。
「それで今の続きだが、確かにフロリアは若い。まだ十九歳だからな」
「十九歳だって!?」
「ちょっとアレス様! 女の子の歳をばらすものじゃありません! それにメイド長って言ったって大したことじゃないですよ!」
なんてフロリアは謙遜して見せたが、そんなはずはない。
一国の、それも王を直に支えるメイドの長を務めるなんて、それこそベテランのメイドにしかできないことだ。
それをフロリアは若干十九歳でやっていることになる。
「いいや、凄いことだろう、それは」
ウェイルは素直に感嘆していた。
「まあな。だがフロリアは腹黒いぞ? だからこそメイド長になれたわけだからな」
「ちょっとアレス様! 女の子のことを腹黒いとか言うんじゃありません! 事実ですけど!」
アレスとフロリアは身分の違いなど感じさせない程、互いに楽しそうに会話していた。
「フロリアはな、出世するためにワシに近付いてきたのよ。なぁ? フロリア」
「そんなことはないですよ! ただ王様と仲良くなればいいことがあればいいなーと!」
「それが腹黒いというんだ。それでな、こいつは俺に近付きたいが為に芸術について勉強したんだと」
「……ああ。そういうことか」
ウェイルは納得できた。
コレクターは常に二つのものを欲している。
珍しいコレクション対象と、それを自慢できる理解者だ。
王であるアレスは前者の入手は容易とはいえ、後者を得ることは非常に難しい。
誰もが王の権力や財力を目当てに近づいて、媚びて来るからだ。
そういう輩は、内心何を考えているか知れたものじゃない。
心の底から対等に趣味について語り合える仲間が欲しかったのであろう。
「まったくアレス様は~! まぁその通りなんですけどね! プロ鑑定士の資格を取れるくらい知識は蓄えましたから!」
「ワシとしてもその心意気に惚れてな。メイド長に任命したわけよ。もちろん仕事もきちんとやっているから文句はないしな」
「えへへ、王様にそう言われる嬉しいです」
照れを隠すことなく笑顔を浮かべるフロリアは、まさしく年相応の女の子であった。
「王宮に仕え始めたばかりの頃やメイド長に任命されたばかりの頃は、周りのメイドさんからいじめられましたけどね! それもこれも全部出世の為に耐え抜いたんですよ!! ……よくよく考えてみると私ってすごいかも……?」
「十分凄いと思うぞ」
ウェイルがフロリアに賞賛を送った。
「さて、ウェイル。今日お前が尋ねてきたのはそんな話をしに来たわけではあるまい?」
アレスが本題を切り出した。
「ああ、ここ最近ヴェクトルビアで発生している連続殺人事件についてだ」
「それについてはワシも独自に調べていてな。フロリア!」
「はい!」
フロリアは、まさしくメイドという返事をし、あらかじめ用意してあった資料を机の上に広げた。
「それでは私から説明申し上げます。今回の連続殺人事件。これらは全てセルク・オリジンが関わっています。これはウェイルさんもご存知ですね?」
「ああ。シルグルから聞いたよ」
「セルク・オリジンは全部で7作。そのうち四枚をアレス様が、二枚をハルマーチ様が。そして最後の一枚が現在シルグル氏のところにあるのです」
「ハルマーチか。そう言えばアイツも極度のセルクマニアだったな」
――ハルマーチ・トヴォン・ヴェクトルビア。
アレスの妹の婿で、ヴェクトルビア王位継承権第二位であるサンゲレラ氏の叔父に当たる男で、サンゲレラをいいように裏から操ってのし上がった貴族である。
事実上、ヴェクトルビアではアレス国王に次ぐ権力を持つと言われている。
そして彼もまたセルクの大ファンで、多くのコレクションを持ち、ウェイルも実際に鑑定依頼を受けたこともある。
「我々が独自に調べた情報によりますと、今回の事件の容疑者はそのハルマーチ氏なのです」
「……ハルマーチが!?」
「そうだ。奴はよくワシとコレクションの件で小競り合いになっていたからな。オークションではいつもワシと競り合っていた。ワシへの恨みが溜まっていてもなんら不思議ではない。ワシに関する負の噂も、奴の配下のものが流したと情報がある」
「さらに言えばですね。井戸に毒を盛られた事件の時、ハルマーチ氏とその配下の者が井戸の近くで何かをしていたという目撃証言があるんです」
「奴の家系は代々錬金術師だ。毒なんて腐るほど持っているはずだからな」
関連証拠や目撃証言がある。
であるならばハルマーチが犯人である確立は高い。
「どうしてハルマーチを逮捕しないんだ?」
「関連証拠は確かにある。だが物的証拠がないだろう? 奴が井戸の近くで何かしていたってだけだ。実際に何が行われていたか、誰も知らない」
「井戸の毒は検出されたのか?」
「水のサンプルはある。だが現在プロ鑑定士協会本部に送って鑑定結果を待っている状況なのだ。もっとも毒の成分が判ってもそれが奴と結びつくかは不明だ」
「……そうか……」
フロリアが説明を続ける。
「今回の事件はセルク・オリジンのストーリーに沿って犯行が行われています。彼も極度のセルクマニアである以上、この不文律を崩すことはないと考えられます」
――ハルマーチのセルクマニアっぷりは異常だった。
一度彼のコレクションを見たウェイルは、あまりの数の多さに呆然としてしまったほどである。その数およそ百点以上。
現存するセルク作品の約八分の一を所持している計算である。
それほどまでにセルクに心酔しているのだ。もし本当にハルマーチが犯人であれば、これから起こる事件も物語通りに進むはずだ。
「なぁ、アレス。俺はこの目でセルク・オリジンを全て確認してないんだ。持っているセルク・オリジンを見せてくれないか?」
いくらウェイルでもセルク・オリジンほどの超レアな絵画など見たことがなかった。
「そうか。まあセルク・オリジンを見たことがないのは当たり前か。フロリア、頼む」
「畏まりました!」
アレスに命令され、フロリアがコレクションルームにあった本棚に手をかけた。
フロリアはその本棚の前で一度深呼吸すると、次の瞬間――
「ちぇいやあああああ!!」
――気合を入れたかと思うと、いきなり本棚を蹴り飛ばした。
フロリアの蹴りにより本棚が倒れる、と思いきや、本棚はズズズと横に移動し始め、後には扉が現れた。
「どうだ。ワシ自慢の隠し扉だ。凄いだろ?」
「……まあな……」
自慢げに言うアレスに対して呆れるウェイル。
(こんな開け方の隠し扉なんて聞いたことないぞ……?)
「アレス様! 準備できました!」
「うむ! さあ二人とも、ついてまいれ」
現れた扉の鍵を開け、ウェイルとフレスは隠し部屋に案内される。
「――!!」
ウェイルは思わず息を呑む。
その部屋は少し狭かった。
だがその狭さを微塵も感じさせないほどの世界が、そこには広がっていた。
「どうだ? ワシの持つ四枚のセルク・オリジンは――」
「……す、すごい……」
フレスでさえも感嘆したその絵画。
セルク・オリジン三作目『毒』、四作目『燃え盛る都市』、五作目『召喚』、七作目『王の最後』の四枚が、大迫力で壁に掲げられていた。
「――これが本物のセルク・オリジン……!!」
名のある画家は、その手から描き出される絵画だけで人々の心を掴み、操るという。
この絵画はまさに見る者の心を奪う迫力を、惜しみもなく表現されていた。
「素晴らしいだろう?」
アレスが自慢げにウェイルに言う。
ウェイルは無言で頷いた。
違う、頷かざるを得なかったのだ。
「ワシのお気に入りは特に七枚目でな。王が討ち取られている絵画で、多少縁起が悪いように思えるがワシはそうは思わない。むしろ民をないがしろにするとこうなるという戒めに思えるのだ。この絵を見るたびに、ワシは良き王であろうと自らを諭すことができるのだ」
「実際、アレス様はこれ以上ないほど良き王だと思います! 水不足がこの都市を襲ったとき、真っ先に指揮を執られ井戸を堀り、民を救ったのはアレス様ですから!」
フロリアが自慢の友人とばかりにアレスを賞賛する姿に、ウェイルはこの二人の信頼関係を伺えた。
さっきは冗談で腹黒いだのどうこう言っていたが、本当はそうじゃない。
二人はただ、互いに気を許しあえる親友なのだ。
「さあ、ウェイル。セルク・オリジンをしっかりと見ただろう。事件の話に戻すぞ?」
「あ、ああ。頼む」
「それでは説明に戻ります。現在、連続殺人事件は、セルク・オリジン三作目『毒』まで犯行が行われています」
ウェイルは『毒』の絵画を嘗め回すように鑑定し始めた。
その様子にフロリアが怪訝な顔をする。
「……ウェイル様。ここにある奴は本物ですよ? シルグル氏の鑑定書もありますし」
「ああ、判ってる。鑑定するのはただの癖だ。続けてくれ」
「……判りました。そして次に行われる犯行、それは四作目の『燃え盛る都市』の再現です。この絵画の意味。それは恐らく――」
「町、燃えちゃうの……?」
フレスが心配そうにフロリアに尋ねた。
フロリアも顔を俯き頷く。
「……はい。今までの例に沿えば、間違いなく町に火が放たれることでしょう」
「だが、それは必ず阻止する。いや、せねばならん。民を守ることは、ワシ最大の責務なのだ」
「……うん……」
力強く語るアレスに、フレスは若干ではあるが笑顔を向けた。
フロリアがさらに続ける。
「セルク・オリジン五作目『召喚』。この絵の意味するところは『悪魔の召喚』。悪魔を使って王を討とうとした魔術師の絵画です」
フロリアが説明すると、皆が『召喚』に注視した。
――ウェイルを除いて。
(……おかしい……)
ウェイルがまず気になったのは三作目『毒』。
(……シルグルの鑑定と言ってたが……。だがこれは……?)
ウェイルはさらに五作目『召喚』を、今度はフロストグラスを取り出し、じっくりと鑑定し始める。
(……おかしい……)
絵画を注視するウェイルの様子に、アレスは不安げだった。
プロ鑑定士が気にしている。贋作の可能性だってあるわけだ。
所有者としては気が気ではない。堪らず言う。
「どうした? ウェイル。もしかしてこの絵画が贋作とでもいうのか……?」
「……いや、そうじゃない。ただ、気になることはある。この『毒』と『召喚』。特に『召喚』については気になることがある」
アレスの問いに、ウェイルは顔も向けずに答えた。
「気になることだと?」
「何なの? ウェイル?」
「フレス。この四枚の絵画で、この『召喚』だけに描かれていないものがある。それは何だと思う?」
「描かれていないもの?」
フレスはきょとんとしたものの、必死に考え始めた。
「う~~ん……。描かれていないもの……?」
「……ウェイルよ。それはどういう意味だ?」
フレスとアレスが考えていたとき、フロリアがとっさに答えた。
「――市民が描かれていない。違いますか? ウェイルさん」
「「――あっ!」」
「正解だよ。フロリア。さすが勉強しているだけあるな」
「そんなことない――こともないですけどね!」
フフンとアレスに視線を送るフロリア。
気付けなかったことが悔しかったのか、アレスは耳を真っ赤にしていた。
「ごほん。ウェイルよ。確かに『召喚』には市民が描かれていない。だがそれが何だというんだ?」
咳払いをして誤魔化しつつアレスはウェイルに尋ねる。
「アレス。この絵画は七作で一つの物語だ。『召喚』は確か五作目だったろ?」
「ああ、そうだ。そして六作目が今シルグルのところにある奴で、この『王の最後』が7作目に当たる」
「何か変とは思わないか? 物語通りに進むのであれば、五作目の『召喚』で描かれているデーモンは六作目、七作目に登場してもおかしくはないだろう? 何せ王を倒すために召喚されたデーモンなのだから」
「……確かにな……。だがそれこそセルクのみが知ること。我々には理解できないところで描かれているとは思わぬか?」
「その指摘は間違いではない。絵画は絵画である以上、作者でしかその意味、意図を理解できない。だが、その指摘は正解でもない」
「……どういうことだ……?」
「何、簡単な話さ。この絵画が実は――」
――ボオオウウウウンンッ!!!!!
ウェイルの言葉を遮るかの如く、城を揺るがすほどの爆発音がこの王都に轟いた。
「……フロリア!!」
「はっ!」
「この音、恐らくは四作目『燃え盛る都市』の再現だ! 急いで対処に迎え!」
「了解しました!」
アレスは動じることなくフロリアを呼びつけ、命じた。
「ウェイル。話は後だ。この轟音だ。一連の事件に関連しているのは間違いない。もしよければお前も行ってくれんか?」
「うん! もちろんだよ! アレス王! ね、ウェイル?」
ウェイルが返答する前にフレスが答える。
そんな期待されるような目線を送られると、師匠としてはいやでも動かざるを得ない。
「任せておけ、アレス。お前は七作目の再現にならぬように警備を強化しておけ」
「言われずともそうするに決まっておろう! ワシはまだ死ねんからな! セルク・オリジンを全て集めるまでは!」
アレスの言葉に失笑を浮かべながら、フロリアと共に部屋を出るウェイルであった。