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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編 『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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本気の戦い

     

 ――フロリア達が舞い降りてイドゥと対面した、その時の別サイド。


 フレスとミルは、目の前に舞い降りた黄色い翼を携えた龍を、その双眼で捉え、視界から外さない。    


「またフレス? あ、でもミルもいる!」


 呑気にキャッキャと笑うティアに、緊張感の欠片もない。

 だが彼女が背後に纏う魔力のオーラは、今のティアとは対照的に、あまりにも殺伐とした殺気が満ちあふれている。

 フレスもミルも、手汗を握り、ティアの同行を一瞬も見逃さぬように、いつでも動ける体勢をとっていた。


「フレスにミル! それに向こうにはニーちゃんまでも来ちゃった! メルフィナの言った通り、なんだかパーティみたいだね!」

「……ティア、そのパーティにはもう一人必要な龍がいるよね? 誰だか判る?」

「う~んと、あ、判った! サラーでしょ!?」

「正解。で、そのサラーは一体どうしたのかな?」

「サラーはね、ティアに負けて、今は眠ってると思う! イドゥとメルフィナが必要だって言ってたから!」

「そう……!! 君はサラーに酷いことをしたんだね……!!」


 フレスの瞳に怒りの火が灯る。


「だって、サラーがティアを攻撃してくるんだもん。危なかったしさ~。でも大丈夫だよ? 四人でもパーティは始められるから!」

「何がパーティなのじゃ……!! 馬鹿にしおってからに!!」

「別にティア馬鹿になんかしてないよぉ? だってメルフィナ言ってたもん? 最後のパーティを始めるってさ! そしてそのパーティには、龍が必要なんだって……!! だからフレスやミル、ニーちゃんにも来てもらうよ!! 無理矢理にでもね!!」


 くわっと目を見開いたティアは、光の翼をさらに二対ほど追加で展開したかと思うと、小さな光の槍を宙に数十本も浮かべて、間髪入れず撃ち放ってきた。

 謁見の間の半分以上を覆い尽くす槍から逃れる隙間はなさそうだ。


「ミル! こっちだよ!!」

「判ったのじゃ!!」


 フレスの合図で、ミルはフレスの背後へ駆け寄ると、それと同時に氷のドームを精製した。

 この氷のドームは普通の氷ではない。

 究極までに磨き上げられ、さらに氷と氷の層の間に水を含ませてあるそのドームは、さながら鏡のドーム。

 灼熱で焼き付くさんと降り注ぐ光の矢を受け止めるばかりでなく、上手い具合に跳ね返していく。

 ドームに加わる衝撃がなくなったところで、フレスはドームを解除。

 すぐさまティアへ向かってドーム内で練り上げた魔力を用いて、氷のつぶてを放出させた。


「撃ち合いならティア、負けないもん!」


 翼で宙へと飛翔したティアも、氷のつぶてと同じ程度の大きさの光の矢を生み出して、撃ち放つ。

 空中で氷と光が衝突し、光の熱で氷は溶け、周囲は白い水蒸気に包まれた。


「はぁああ!!」


 視界が曇るもフレスにそんなことを構う余裕はない。

 相手が見えなかろうが、途切れないように氷を放ち続けた。


「アハハハハ!! フレス、もっともっと撃ってきて!! ティアもついていくから!! アハハハハ!!」

「――――ついていく必要は無いのじゃ。ここで落ちろ」


 今まで白い水蒸気で身を隠していたミルが、突如としてティアの背後に現れる。

 そしてミルはその右手をティアに向かって振り下ろした。


「えっ――――…………――――ッ!?」


 ミルの腕は大きな樹木に覆われており、さながら巨大ハンマーの様な状態となっていた。

 圧倒的な質量を持つミルのハンマーがティアの肩に直撃し、ティアは真っ逆さまに落ちていき、床を砕きながら滑っていく。


「二対一で非常だとは思わないよ!」

「四の五の言っている場合じゃないのだからの!!」


 フレスは巨大な氷柱を出現させ、滑っていくティアへとぶん投げる。


「……くっ……!!」


 ティアも光の球を精製して、氷を相殺しようと試みたものの、


「させんぞ!!」

「うぐ……!!」


 魔力を放出する前に、ミルが再びティアへと樹木のハンマーを叩き付ける。

 ミルが翼を展開し飛翔した瞬時、ティアへ巨大氷柱が直撃していた。


「ティアは氷の下敷きになったようじゃな」

「ダメだよ、ミル。ティアはまだ終わってない!!」

「判っているのじゃ。あの光の龍『ティマイア』がこの程度で沈むとは思ってない!!」


 氷柱から白い煙が上がっていく。

 その二秒後、氷柱から巨大な光線が二カ所から上がった。

 氷は音を立てて溶け、周囲に水で溢れてフレス達の足を洗っていく。

 ぴちゃぴちゃと足音を立てながら、輝く翼を携えてティアが歩いてくる。


「痛い……。本当に痛かったよ……!!」


 ティアの顔から笑いが消え去っている。


「フレス、ミル。ティア、すっごく痛かったよ?」


 ぞわりと背筋が凍るような、そんな声だった。

 今ティアは、心の底から怒っているのだろう。


「……ようやく、本気になってくれたね……!!」


 だがこの瞬間をフレスは待ち望んでいた。

 ティアとは何度も戦っている。

 しかし一度としてティアが本気を見せたことはなかった。

 フレスの実力では、彼女を本気にすらさせられなかったわけだ。

 でも今は隣にいるミルのおかげでティアの本気を引き出すことが出来た。

 こうでなくては、ティアの心と本気でぶつかることも出来やしない。

 本気となり、フレスの事を認めた今のティアならばフレスの言葉を少しは聞いてくれるかも知れない。


「ティア、もうメルフィナと一緒にいるのは止めるんだ」

「へ!? どうして突然そんな事言うの!? ティアはメルフィナと一緒にいて凄く楽しいのに!!」

「君が楽しいってのは、それは人間に酷いことをしていたからでしょ!? 今のアレクアテナに解放されて、何人君は殺したの!?」

「数えてないよ、そんなの。大体フレスやミルだって、昔は何人も殺していたでしょ。意味判らないこと言わないで」

「ボクもミルも、もう判ったんだよ。今はもう人間と戦わなければならない時代じゃないんだ。ボクはこのフェルタリアの地で、心からの人間の親友が出来た。分かり合えたんだ! 人間と!!」

「わらわも、レイアと出合ってから人間への認識を変えたのじゃ。そりゃ今でも人間は嫌いじゃが……!! じゃからといって、殺しまくるようなことはもうせん!」


 フレスはこの都市に来る前は、ティアとまた戦いたいと思っていた。

 今でも本気で戦いたいとは思っている。

 でも敵の目的が完璧に判ってからずっと、フレスはティアを救いたいとも思っていたのだ。

 何も知らないティアは『異端児』に騙され、利用されているに過ぎない。


「もう人を殺す必要は無い。娯楽で人を殺すなんてもっての他だよ!!」

「だってメルフィナは人を殺すと喜んでくれた! ティアはメルフィナが喜んでくれたからやったんだ!」

「だから君は騙されているんだよ! そのメルフィナって奴にさ!!」

「ティアが騙されてる?」

「そうさ。彼は君に何をしてくれた?」

「楽しい世界を見せてくれるって……!! この世界をもっと楽しくするって!! そう教えてくれた!」

「その世界に、君を連れてってくれるって言ったの!?」

「…………!!」


 ティアは言った。

 

 ――『最後のパーティには龍が必要』と。


 自分で言った内容であるのに、ティア自身気づいていない。


 ――その龍の中には――自分自身も含まれていると言うことを。


 つまりメルフィナにとって、ティアという存在は出会ったときから捨て駒だったと、そういうことだ。


「気づけ、ティア! お主だって、含まれておるのだ!! 奴らが必要という龍の一体に!!」


 はっきりとミルがティアに現実を突きつけてやる。

 フレスとミルの言葉に、ティアはぷるぷると震え始めた。


 そして――


「どうして!? ティアはパーティが始まるって聞いたから!! だから二人を誘ってただけだよ!? それらのにどうして二人はそんな酷いことを言うの!? ティア、もう怒った!! 絶対に許さない!!」


 ティアの身体から光が爆発するように発され、彼女の髪が逆立っていく。

 バチバチと雷がティアの周囲に弾け、足を洗う水は段々と温度が上がっていく。


「……フレス、やはりティアとは……!!」

「本気で戦わないといけないんだね……!!」


 真の戦いは、ここから始まるというわけだ。


「二人の顔、もう見たくない!! これで消え去れ!! 『神除き』(ゴッドエグザイル)!!」


 あのラインレピアの運河を氾濫させたティアの必殺技、『神除き』。


 超高温、巨大な光の槍が、三度フレスの前に現れたのであった。



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