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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編 『龍と鑑定士の、旅の終わり』
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世界で一番愛する者

「ウェイルを傷つけた君に対し、僕は一切容赦しないよ。全力で君を殺す……!!」


 テメレイアはポケットから三つほどガラス玉を取り出すと、ダンケルクに向かって投げつけた。

 そして『神器封書』(ギア・シールグリフ)に魔力を込める。


 ――その直後。


「うおッ!?」


 小規模な爆発が、ダンケルクの周囲に巻き起こった。

 爆風で吹き飛ばされたダンケルクだが、その顔には笑みすらある。


「ハ、ハハハハッ!! それが三種の神器『アテナ』の力か! 実に面白い。それにテメレイアと言ったか? お前さんも面白いな! ウェイルを愛している、か!」

「そうさ。だから僕の大切なウェイルを傷つけた君を絶対に許さない!!」

「ハハハハハ!! お連れさんは女の子だったのだな!! 中性的な顔立ちでどっちか判らなかったぞ!! そうかそうか、ウェイル、お前さんも隅には置けんな」

「いい加減耳障りなおしゃべりは止めてもらおうか! 喰らえ!」


 さらにガラス玉を二つ取りだして投げつけた。


「流石に同じ手は効かんぞ。『疾風』、『拡散』!!」


 風を操り、破裂させて暴風を生み出すことで、ガラス玉の破裂の衝撃に対して壁を作る。


「面白い技を使う子だな。だがこいつはどうだ? 『炎舞』、『集中』!!」

「……ッ!!」


 テメレイアの目の前に炎が集まったかと思うと――


「――『拡散』!!」


「――きゃああああああああっ!!」


 巨大な爆発が生じ、テメレイアの身体はたちまち炎に包まれた。


「おやま、ちょっとやり過ぎたか? お連れさんは連れて帰れと言われているからな。死んでしまっては困るのだが」


 やれやれ、やってしまったと頭を掻くダンケルク。


 ――だが、そんなダンケルクの虚を突くように、目の前にガラス玉が飛んできた。


「――なっ!?」


 魔力で光が滾る三つのガラス玉。

 爆発を防ぐ為、神器で壁を作ろうと、その意識までは辿りつけた刹那。



「――――――――――ッ!!」



 意味も音も判らぬ詩が響いたと同時に、そのガラス玉は巨大な爆発を引き起こしたのだ。


「…………ッ!?」


 爆発に直撃し、ダンケルクの身体は吹き飛ばされ、焼ける民家の壁に叩きつけられた。

 その衝撃により一瞬呼吸困難にも陥る。


「ぐ、ぐぐぐ……、ハ、ハァ、ハァ……ッ!! な、何が起きた……? 何故奴が反撃できる……!?」


 予想外すぎる反撃。

 そんな余裕など、テメレイアにあるはずもない。

 『炎舞』と『拡散』の組合せは、破壊力だけで言えば最強だ。

 それが直撃した彼女に、反撃など出来るはずがない。


「どうして……!? あの女が無事なはずはない……!! 爆発に直撃したんだぞ……!!」


「そうかな? 確かにちょっと熱かったけどさ。火傷するほどですらなかったよ」


 黒い煙の中から歩いてやってくる、涼しい顔をしたテメレイア。

 ぽんぽんとガラス玉を持てあましながら、こちらを見下してきた。


「……お前、何をした!?」

「君の神器の威力を弱めた。それだけさ」

「……クッ……!! 一体どうやって……!?」


 風の力を借りて、ダンケルクは宙に浮き、一旦距離を取る。

 あの爆発から無事生還したと言う不可解な現象に、ダンケルクも冷や汗が隠せない。


「三種の神器を使ったのか……!? ガラス玉を爆発させるだけじゃないのか……!?」


 上空ならばテメレイアの様子を窺うには絶好の場所であるし、反撃もし辛いはず。

 またこちらの攻撃も一方的に狙えて当たりやすい。一石二鳥だ。


 ――しかし。


「なっ!? 風が!?」


 突如風が止み、バランスが崩れる。

 そのまま重力に従って、地面に叩き付けられた。


「何が起こっている!?」

「簡単さ。僕は君の神器を鑑定しただけのこと」


 ガラス玉を弄びながら、落下したダンケルクを見下すテメレイア。


「鑑定だと!?」

「その神器、両手の人差し指から小指まで、それぞれ属性と特性があるんだろう? それはよく判った。そして親指の役割もね」

「…………ッ!?」

「君が力を奮う時、必ず親指の指輪が最初に光ってから、その後他の指輪が光っているのさ。そして今君が宙から落ちてきたことからも間違いないと思う。親指の役割、それは『制御』だ」

「……お前……ッ!?」

「その反応からしても図星だったみたいだね。つまり親指の指輪の力は、他の指輪を動かす起点になっている。逆に言えば、その親指さえ封じてしまえば、君はもう何も出来ない」

「か、鑑定しただと……!? たったそれだけの予想と材料から……!! だが、お前はそれが判っていて何をしたというのだ!! からくりに気づいても、お前は俺の指輪どころか俺にすら指一本触れてない!!」

「僕を誰だと思っている? 僕は世界で一番ウェイルを愛している者であると同時に――三種の神器の術者なのさ」


 ――三種の神器『創世楽器アテナ』。


 周囲の魔力を術者の自由にコントロールできる力を持つ。


「君の親指の指輪の魔力を霧散させてもらったよ。さっき僕に炎をぶつけてきたときも、実は魔力を制御して出力を最低レベルまで押さえさせてもらったのさ。派手な爆発に見えたけど、威力は殆どなかったのさ」

「魔力を霧散させた、だと……?」

「さあ、次の一撃を放ってごらんよ。君の攻撃はもう、発動すらしない」


 テメレイアの持つ本が輝きを増していく。

 それとは正反対に、ダンケルクの指輪からは魔力光が消えていった。


「『炎舞』、『拡散』!! ……!! ち、本当に出ない……!!」

「君の神器の魔力は今、僕の支配下にある。もう戦えないはずさ。もう素直に投降して欲しい。ウェイルの先輩であった君をこれ以上傷つけたくはない」


 敵になっているとはいえ、同じ鑑定士としての仲間だったダンケルク。

 命まで奪う気は毛頭ないし、これ以上戦うのも不毛なだけだ。


「ウェイルを傷つけたことを謝罪してくれさえすれば、これ以上僕は君に手を出さないよ」


 神器が完全に使えなくなった彼にはもう、戦う意思はないだろう。


 ――と、そうテメレイアが考えたのが甘かった。

 

 ――ダンケルクにはまだ、手が残されていたのだから。


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