表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 最終章 滅亡都市フェルタリア編 『龍と鑑定士の、旅の終わり』
461/500

決戦! ウェイルvsダンケルク

 サラーが王宮へと飛び立って、残された二人はこれからどうするか話し合っていた。


「わらわはレイアが心配なのじゃ……。急いで助けにいかないと……!」

「そう? 実はボク、あんまりウェイル達を心配していないんだ」

「なぬ!? お主、ウェイルの事が大切ではないのか!?」

「大切だよ。この世界の誰よりも、とびっきりにね。だけど心配はしてないよ。だって信頼してるもん。ウェイルなら絶対に大丈夫」

「……信頼……」

「うん。だからボクは今から闇雲にウェイルを探し回るより、今ボク達にしか出来ることを全力でした方がいいと思うんだ」

「わらわ達にしか出来ないこと?」

「そう。この都市を掃除してしまおうと思ってるんだ――」


 そう言ってフレスは手をかざしたかと思うと、ツララを二本出現させて打ち放った。


「ギャガガ!?」


 面白い鳴き声のする方を見ると、そこには角と羽の生えた黒い魔獣――デーモンの姿をしたゾンビがツララによって腹を貫かれていた。


「やつら、デーモンまでゾンビに……!!」

「というより『コキュートス・ホールゲート』は死者の身体に、無理やり魂をねじ込んで操る神器なんだと思う。神器内に死体をいくつも保存することが出来るんだよ」


 クルパーカーで戦ったドラゴン・ゾンビも、まさにあの神器の穴から現れていた。


「神器内の死体が切れるまで、敵はゾンビを生み出し続けると思う。だからこそ、ボクらは皆をゾンビから守らないといけない。本当は神器の術者を倒したいけどね。多分フェルタリア王宮にいるだろうから」

「そうじゃな。わらわ達はこやつらの掃除をせねばならんな。手伝うぞ、フレス」

「うん!」


 メインストリートを見ると、ゆらゆらと蠢くように動く小さな黒い点。

 どこまでも見通せる龍の目によって、その点がゾンビであることを確認できた。

 どうやらゾンビ達は再び数を増やし始めたようだ。

 それらを一掃すべく、フレスとミルは上空へと舞い上がった。


「おお、上からならよく見えるぞ。メインストリートの奥の方は、アリの巣の周囲みたいじゃ」

「集合場所はメインストリートからも繋がっている王宮広間だからね。皆が集合する前に、掃除しておかなくちゃ!! じゃあ、始めるよ!」


 フレスとミルは魔力を溜めて、そして。


「「うらあああああああ!!」」


 氷のミサイルと化したツララの雨と、鉄をも切り裂く魔力を纏う葉の嵐が、この都市にはびこる残ったゾンビ達を一掃したのだった。








 ――●○●○●○――







「ドラゴン・ゾンビまで現れるとはね……!!」


 空を仰げば、天を覆い隠すほどの巨体を持つドラゴン・ゾンビがうねり、それに対するは三体の龍の少女達。


「ミル達なら問題ない相手だろうけど……」

「問題はドラゴン・ゾンビではなく、何故あれが出現したか、だな。といっても原因は判りきっているが」


 敵の操る神器『無限地獄の風穴』コキュートス・ホールゲートの力であることは明白。

 だがあれほどのゾンビの数と、そしてドラゴン・ゾンビを操作するほどの魔力を持つ術者となると、かなりの手練れであるに違いはない。


「メルフィナかイドゥか……もしかしたらダンケルクかも……!!」


 そうウェイルが推測を立てたときである。


「――いや、それは違うぞ、ウェイル」

「ダンケルク!?」


 物音一つ、気配すら立てずに、突然目の前に現れたのは、ウェイルの先輩、ダンケルクであった。

 ただ、このダンケルクの雰囲気はおそらく――


「また幻影か」

「ご明察。といっても、実は俺自身はこの周辺にいるぞ」

「判っているさ。何の神器かは知らんが、今までの戦いから察するに有効範囲は比較的狭いのだろう」

「探してみるか?」

「いや、別に良いさ。俺からはお前に用はないからな」

「つれないねぇ」

「そっちに用があるから幻影を使って話しかけてきたんだろうに。俺達は先を急いでいるからな。用がないなら無視したいところだ」

「いやぁ、流石俺の後輩という所か、痛いところを突いてくるよ。あー、判った判った。俺の方がお前らに用があるんだよ。特にお前のお連れさんにな。ちょっと待ってくれよ」

「僕に……? ……なるほど。ウェイル。無視して先に行くよ」

「二人して冷たいねぇ。……ふう、なら無理にでも付き合ってもらおうか!」


 ダンケルクの幻影が消え去った同時に、ウェイル達の周囲には熱が立ちこめた。

 熱は炎の壁へと変わり、ウェイル達の周囲を取り囲む。


「ウェイル! 火がまわっている!!」

「どうやらこの火は本物のようだな! 逃がす気はないということか……!!」

「ま、そういうことだ」


 逆巻く炎が避けるように開き、その中から現れたのはダンケルク。

 軽く手をあげ、再開を喜ぶかのようにこちらへとやってくる。


「言っておくが俺は幻影じゃないぞ?」

「どうだかな」


 周囲を取り囲む炎の壁は、フェルタリアの建物を勢いよく飲み込み、より高く燃えていく。


「レイア、師匠、下がっていろ。こいつの相手は俺がする!」

「でもウェイル!」

「いいから下がっていろ。おそらく敵の狙いはお前だ、レイア!!」


 三種の神器『アテナ』を操る術者を、敵が逃すはずはない。

 敵は明確にテメレイアが術者だと知って、ダンケルクを送り込んできたはず。


「ご明察。イドゥ達からの命令でな。お前のお連れさんを連れて行かなければならないんだ。でもウェイル、お前さんにも用はあるんだぜ?」

「そうだろうな。俺の存在は邪魔だろうから」

「やっぱり判っているよな。だったら、俺達はもうぶつかるしかないな」

「最初からそのつもりの癖によく言う」

「ウェイル! 僕も戦おう、援護する!」

「ダメだ。万が一にでもお前に傷は負わせられん」

「僕なら大丈夫さ! 自分の身は自分で守れる!」

「くどいぞ、レイア! ダンケルクの相手はこの俺だ!」

「ウェイル……?」

「レイア譲ちゃん、下がろう。ウェイルは何も勝算なく一人で戦う奴じゃない」

「それは判っているさ! でも、だとしても一人より二人の方が良い!」

「……ウェイルはおそらく一人で方を付ける気なんだ。ダンケルクはウェイルにとって大切な先輩だったんだからな……」


 プロ鑑定士になり初めて出来た兄貴分。

 いつも頼りにしていた先輩と今、ウェイルは命を懸けて対峙している。


「それに今のウェイルは、なんだか少し楽しげだ……!!」

「……クッ……!! ウェイル……!!」


 そう、シュラディンの指摘のとおりだった。

 ウェイルは不謹慎にも、ダンケルクの姿が見えたときから、少し心が騒いでいたのだ。

 どこか懐かしいと、そんな気持ちさえ抱くほどに。


(もしかしてウェイル、勝算とか一切考えてないのかも知れない……!! ただ、ダンケルクと戦いたい。そんな純粋な願いだけで……? だとしたら僕はいざとなったら……!!)

 

「狙いはテメレイアなんだろ? 俺を無視して奪いにはいかないのか?」

「そうしてもいいんだけどな。久々に俺の心が高鳴っているのよ。ウェイル、お前と本気でぶつかり合いたいと」

「奇遇だな。俺も同じ気持ちだ。やっぱり俺はダンケルクの後輩なんだなと実感させられるよ」

「優秀な後輩に育ってくれて嬉しいぜ、俺はよ」


 ダンケルクが背中に手を回す。

 今回は本気だ。本気でお前を殺しにいく。感謝するぜ、一対一に持ち込んでくれてな! 互いに楽しむとしようぜ」

 スッと背負っていた双剣――『相思相愛剣』(ペア・ブレイド)を抜いて、一気に距離をつめてくる。

 対するウェイルも、氷の剣を抜き放ち、防御姿勢をとった。


「一対一で、決着をつけようか、ウェイル!!」

「望むところだ、ダンケルク!!」


 ――キンッと、剣と剣がぶつかり合った、冷たい金属音が響き渡る。


 ウェイルとダンケルク、後輩と先輩の決戦が、今始まった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ