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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編 『ステイリィ英雄譚』
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いざ、因縁の地へ

 第十二会議室に突如として姿を現したサラー。

 その表情はとても暗く、そして何より身に着けている衣服が傷だらけだ。


「おい、急いで治安局へ通報しろ!」

「その通報、少し待ってくれないか?」


 サラーを通報しようとする職員達に、ウェイルは一旦制止を呼びかけた。


「こいつは俺の知り合いでな。何か事情があるようだ」

「しかし、いくらプロ鑑定士の頼みとは言え、これは規則ですので!」

「頼む。この娘の協会内での責任は全て俺が請け負う。こいつが何か協会に損害を与えたのであれば、全額俺が肩代わりする。こいつの身分も保障する。これでどうだろうか?」


 ウェイルの申し出に、職員は暫し考える素振りを見せた後、やれやれと苦笑いを浮かべた。


「……ウェイル殿が全て責任を負うというのであれば、仕方ありませんね……」

「すまないな」

「サグマールさんにはご内密に」

「勿論黙っておくさ」


 サグマールも少し困った顔を浮かべながら手を上げる。


「それでは失礼いたします」


 職員達はわざとらしくサグマールの方へと一礼したのち、部屋から去って行った。

 職員達の姿が見えなくなったところで、フレスは堪らずサラーへと抱きついた。


「一体どうしたのさ、サラー! 体中傷だらけじゃない!!」

「離れろ、フレス」

「ひゃん!」


 ぶっきらぼうにフレスを突き放したサラーは、トコトコとウェイルの前まで歩いてきた。

 職員達の制止を振り切り、ここまで来たサラー。

 フレスの言うとおり、体中傷だらけであるし、何か事件に巻き込まれたのであろうことは明白。

 彼女のただならぬ様子に、一同息を呑む。


「サラー、何があった」


 沈黙を破るようにウェイルがそう問うと、サラーはウェイルに抱きつくようにして服を思いっきり掴んで来た。


「頼む、助けてくれ、ウェイル!」

「……何があったか話してくれ」

「イレイズが、イレイズが誘拐されたんだ!」

「イレイズが……?」

「誘拐!?」


 部族都市クルパーカーの王族であり、サラーのパートナーであるイレイズが、誘拐された。

 そうサラーは叫んだ。


「何故だ? すでにダイヤモンドヘッドを狙う連中はほとんどいないはずだろう!?」


 ダイヤモンドヘッドとは、クルパーカーに住まう部族、ダイヤモンド族の持つ秘宝である。

 部族都市クルパーカーでは、人が亡くなった際は火葬にて死者を弔うのだが、ダイヤモンド族の人間は身体、とりわけ骨を構成している炭素成分が他の人間と比べて非常に濃い。

 その為、高熱での火葬を行った際に、後に残る遺骨はダイヤモンド化していることがある。

 この時に遺ったダイヤ状になった頭蓋骨をダイヤモンドヘッドといい、大陸きっての財宝であったと同時に、違法品でもあった。

 しかし現在ではダイヤモンドヘッドの違法品指定は解除され、またダイヤモンドヘッドを狙っていた『不完全』が組織ごと潰れてしまったので、この秘宝を狙う連中も影を潜めていた。


「違う!! 狙いはダイヤモンドヘッドなんかじゃなかったんだ……!!」

「じゃあ何を狙われたんだ!?」

「私だ!」

「……サラーを……!? ……まさか……!!」


 事情を知る者は、これだけで全てが繋がっていた。


「敵はどんな奴だ!?」

「詳しくは判らない! でも『不完全』にいるときに見たことのある連中だった! あの赤い髪の男がいたから……!!」

「ルシャブテでしょうね、そいつ」


 奴がいて、そしてサラーを狙うとなれば。

 そんな事をする連中は、もう奴らしかいない。


「早速『異端児』が行動に出てきたね……!!」


 やはり敵は龍を手に入れるために、過激な行動に出てきた。

 テメレイアにとってもウェイルにとっても明日は我が身である。

 常に危険が隣り合わせな状態だ。

 もうすでに警戒を重ねなければいけない状況。


「イレイズはどうやって誘拐されたんだ?」

「突然、部屋に乗り込んできたんだ。勿論、応戦した。でも、私は負けてしまった。まさか光の龍が敵にいるなんて、思いもしなかった……!!」

「ティアがいたんだね……!!」


 光の龍の少女ティア。

 その力はフレスやサラーをも超越し、龍の中でも最強と言われる。


「情けないよ。イレイズは私が守ると誓ったのに……!! イレイズは私が逃げる時間を稼いでくれた……!! 本当は私が庇わないといけなかったのに!!」

「サラー……!」


 落ち込むサラーを、フレスは背中から抱きしめた。


「サラー。敵は何か言っていたか?」

「……後からクルパーカー王城にこれが届いたんだ。イレイズを返して欲しくば、これをプロ鑑定士協会に持ち込めって書いてあったから」


 ポケットからくしゃくしゃになった紙を取り出して、サラーはウェイルに手渡した。

 その内容に一通り目を通し、それをすぐにテメレイアへと回す。


「ウェイル、なんて書かれてあったの?」

「あまりにも単純な脅迫だった。『イレイズを助けたければ、全ての龍を連れてフェルタリアに来い』だってさ」

「おそらく僕の事もバレているね。全ての龍ってことはミルも含まれているだろうしさ。しかし敵もやけに慎重だね。脅迫文が必ず僕らの眼に入るように、わざわざ二つも用意して送ってきているんだから……!!」


 手紙は全員に行き渡る。

 回って帰ってきた手紙を、ウェイルはくしゃくしゃに丸めて投げ捨てた。


「ウェイル……!!」


 不安げに見上げてくるサラー。

 そんな彼女を安心させるように、ウェイルは彼女の頭にポンと手を置いた。


「一緒に助けに行こうか、サラー」

「ウェイル……!! ありがとう……!!」


 心の拠り所であるイレイズが誘拐されて、ずっと不安だったのだろう。

 ウェイルがこう答え返して初めて、サラーは手で目を拭った。


「どのみちフェルタリアには行く予定だったしな。むしろサラーという心強い仲間が出来て良かったよ。なぁ、フレス」

「うん! またサラーと一緒に戦える! それがボクは嬉しいんだ!」

「フレス、ありがとう……!!」


 フレスの胸でサラーは小さく泣いていた。

 そんな仲の良い二人を見て、背後にいたミルとニーズヘッグが羨ましそうに見ている二人にテメレイアが小さく呟く。


「加わっても良いんじゃないかな? ミル? ニーズヘッグ?」

「ふ、ふん! どうしてわらわがサラーなんかに! ……でもサラーがどうしても胸を貸せというのであれば貸してやる」

「私は……フレスがいいの……。サラーが羨ましいの……」


 龍達も、なんだかんだ言って昔は仲が良かったのかも知れない。

 それはニーズヘッグやティアも含めて、だ。


「さて、決まりだね。新しい仲間も急遽出来てびっくりしたけど、計画に変更はない。明日の朝、マリアステルを発つよ。それまでみんな、しっかりと準備して」

「ああ。全てに決着を付けに行く。……俺自身にもな……!!」


 三種の神器『異次元反響砲フェルタクス』を巡るウェイル達の戦いは、いよいよ最終局面を迎えていく。


 殆ど全ての要素を揃えた『異端児』と、その鍵たる龍を持つ鑑定士達。

 世界の破滅をも掛けた戦いは、因縁の地『滅亡都市フェルタリア』で始まっていく。



 ――次章。


 龍と鑑定士 最終部 最終章


 滅亡都市 フェルタリア編 『龍と鑑定士の、旅の終わり』


 ――セルクの意思を次ぎ、メルフィナとの因縁に片を付ける戦いが、ついに幕を開ける。



これにて第十四章は完結です。

読んでいただいてありがとうございました。


そしてついに次話より最終章となります!


四年という長きに渡る連載も、次でラストです!


次章 龍と鑑定士 最終部 最終章


滅亡都市フェルタリア編『龍と鑑定士の、旅の終わり』 


是非、最後までお付き合い下さい!!

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