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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第一部 第三章 王都ヴェクトルビア編 『セルク・オリジン・ストーリー』
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暗躍

 薄暗い古城の中で一人の男が笑っていた。


「……フフフ、なるほど……あの男がねぇ……」


 埃の被る玉座に、躊躇いなく腰を下ろしたその男は、手に持った杯に口をつけた。


「久々に愉快だなぁ……」


 嬉しそうに顔を歪めた男はそのまま杯の中の酒を一気に煽る。


「……良い酒だね。ハングスチン産のブドウ酒かな……?」


 男は虚空に尋ねる。

 人気のない玉座の間に男の声だけが響き渡ると、その刹那、男の前に一人のフードを被るものが現れた。


「……はい。ハングスチン産の最高級のブドウ酒でございます」


 フードを被るものは、中性的な声で問いに答える。

 玉座の男は満足げに頷く。


「なんて良い酒なんだ。でもこうも美味しく感じるのは、この酒本来の味だけが要因ではないのだろうなぁ。やっぱり酒というのは良いタイミングで、良い知らせを肴にするのが一番美味しいよね」

「『穏健派』の者達の最近の失敗っぷりは見ているだけで愉快でございますな」


 フードの者も玉座の男に同調する。


「そうだね。でもこれでようやく『ダイヤモンドヘッド』の入手、そして『龍』が一体手に入るよ。目的に一歩前進しそうかな?」


 男は空になった杯を投げ捨て、立ち上がった。

 それに対応してフードの男は、玉座の男の前で跪く。


「準備の方、お願いね? 龍相手だと多少戦力不足だから」

「承知いたしました」


 男の問いに一瞬たりとも間をおかず即答したフードの者は、そのまま闇へと姿をくらました。


「フフフ、楽しくなってきたね……。さあ、それでは始めようか」


 軽い口調で手を上げた男は言い放った。


「裏切り者のイレイズの為の――送別会をね……!!」


 たった一人の笑い声が、寂れた古城にこだましていた。


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