再戦! ダンケルクとティア
「さて、久しぶりと言っておこうか、ウェイル」
「相変わらずやる事が外道だな、ダンケルクは。お前は幻じゃないよな?」
「ああ、幻じゃない。もっとも、これから幻を作り出すかも知れんがな」
と言いつつ、ダンケルクは神器『相思相愛剣』を抜く。
「その指輪は使わないのか?」
「これを使ったら色々と楽すぎて楽しめん。お前とはもっとゆっくりと戦いを楽しみたいんでな」
「後輩だからって舐めすぎだ。今回こっちにはアムステリアもいるんだぞ」
「いいねえ、二人して相手してくれるってのかい。後輩二人から慕われて、俺は幸せだな」
「ねぇ、ウェイル、ダンケルクってば昔と比べたら少し性格変わっちゃってない?」
「そりゃ『異端児』にいるんだぞ? 精神的に壊れてしまったのは間違いないだろう」
「あちゃー、結構辛辣なことを言うねぇ、お二人さんは。そうだな、俺は多分壊れちまった。だがな、壊れるってのは結構楽しいことなんだぜ? リーダー達からそれを教わったよ」
「一つ聞く。今カラーコインは持っているか?」
「持っているわけがないだろうさ」
「そうか、安心したよ。万が一にも壊すわけにはいかないからな!」
会話を終わりだとばかりに、ウェイルは剣を抜き、ダンケルクへ切りかかった。
「おいおい、いつもの剣はどうした? そんななまくらで相手になるでも思ってるのかよ?」
「生憎、いつものは没収されてしまっていてなぁ。ま、これでも十分やれるさ」
「試してみるか?」
ブンッとダンケルクは剣の片方を投げる。
「試してみなよ!」
ブーメランの様な軌道を描きながら、剣はウェイルの方へと飛んでくる。
無論避けるも、避けただけでは根本的な解決にはならないのがこの剣の面倒なところだ。
神器『相思相愛剣』。
それは互いに愛し求め合う、離しても再び寄り添う愛のある剣。
片方をどれほど離れても、愛が故にもう片方へ、何があっても戻ってくるのだ。
「性質は判っている。アムステリア!」
「はいな!」
戻ってきた剣は、背後のアムステリアがパシッとキャッチした。
「がら空きだな、正面は!!」
片手しかない双剣ほど脆い武器はない。
この隙を逃すまいと、ウェイルは剣を振り上げ――
「こっちだ!」
「……何ッ!?」
ウェイルは目の前のダンケルクに剣を振り下ろすことをしなかった。
代わりに剣を投げ飛ばしたのは、近くの牢屋の中。
ズシッと、今回ばかりはしっかりとした手応えが伝わってくる。
その瞬間、ウェイルの目の前にいたダンケルクの姿が霧散した。
「何が幻じゃない、だ。平然と幻を使っているじゃないか」
「……何故気づいた……? く、くそ……!!」
声と共に、牢屋の中には、肩に剣の突き刺さったダンケルクの姿が現れた。
「どうして判った……? いや、お前さんのことだ、幻には気づいていただろう。だがこの場所まではどうして……?」
「光だよ。指輪の魔力反応光が微かに見えたもんでな。怪しいと思って適当に投げてみたら、クリーンヒットだ」
「……なるほど、流石だな……!!」
「さて、お縄についてもらおうか」
ウェイルとアムステリアがついにダンケルクを捉えた。
一方その頃フレスは、ティアと奇妙な戦いを繰り広げていた。
――●○●○●○――
「えー、またフレス?」
「そうだよ、またボクだ」
スッと下へ降りてきたティア。
対峙するフレスに対し、飽きたと言わんばかりにうんざりとした表情を浮かべていた。
「どうせならあっちの人達と遊びたい」
「ダメダメ。ボクは君と遊びたくて仕方ないんだもん」
龍の相手は、同じく龍。
決してウェイル達の方へティアを向かわせるわけにはいかない。
「でも、ティアフレスと戦うのこれで三度目。もう飽きたよ」
「そう? ならお話でもする?」
「え!? いいの!? するする! お話する!!」
ティアの方には一切の戦意はないようだ。
そのことにフレスは多少苛立ちも覚えたが、ある意味この状況は使えるかもしれない。
(それに上手くいけば敵の情報が探れるかも知れないもんね……!!)
「ねぇ、ティア、君はここへ何しに来たの?」
「うーんとね、人間を殺しに来た! 今日は……えーと、十七人だ! あれ? 十八だったかも?」
「……そ、そうなんだ」
まずい、今本気で怒りそうになった。
「後、半殺しが二十三人かなー。腕も五本くらいもいじゃったし!」
「…………へ、へー」
判ったよ。この戦いは、自分との戦いだ。
如何にティアの蛮行自慢を耐えながら情報を聞き出すかの、己の感情との葛藤と戦いだ。
「それでティアさ。何のために殺しをしたの?」
「邪魔だったの!」
「何の邪魔だった?」
「イドゥの目的の邪魔だった!」
「イドゥの目的って、何?」
「えっとねー、えーと――」
敵の目的の核心。
これさえ聞ければ、後はもう適当に流すだけでいい。
「とある神器を取りに来たんだって!」
(やっぱり神器……!! てことは『封印門』だよね)
フレスはチラリとアムステリアの方を見る。
彼女もその視線に頷いて応えてきた。
アムステリアの耳もフレスには及ばないものの、非常に良い方だ。
今の会話をしっかりと聞いてくれている。
ならば話はウェイルにも伝わるはずだ。
「神器って、一体どんな奴?」
「うーんと、長い名前だったよ~、確か『こきゅーとすなんとかなんとか』って」
(コキュートス……? ……そうだ、確かクルパーカーの時に敵のボスが使ってた……!!)
「そっか! ありがとね、ティア」
「ん? なんでお礼を言ってるの?」
頭の上に?マークを乗せているティア。
フレスはそんなティアの隙に、こっそりと溜めていた魔力を一気に解き放った。
「あれ? フレス!、お話は? もう終わり?」
突然のフレスの攻撃に不意を突かれ、相殺する事すら出来なかったティアは、顔を残して体全体を氷漬けにされていた。




