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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編 『ステイリィ英雄譚』
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エリクの召喚術


 ――地下二階。


 囚人達が津波の様に一気に押し寄せてくるその先に、エリクとアムステリアが立っていた。


「私が逃した奴だけ、蹴飛ばしちゃって」

「元囚人に命令されるのは、なんか腹立つわね」

「それ以前は元同僚でしょ? いいじゃない」

「ま、それもそうね」


 エリクが一歩前に出ると、光り輝く万年筆のようなペンを取り出した。


「それ、一体どうしたの?」

「このフロアには神器保管庫があってね。囚人達から押収したあまり危険度の高くない神器が押収されているのよ」

「それが貴方の神器ってわけね」

「そう。ホント久しぶりね、これを使うのは――!!」


 エリクはそのペンを握って壁際に立つと、壁に向かって大きな陣を書き始めた。

 複雑な模様が、超スピードで描かれていく。


「完成。最後は……!」


 ギリッと自分の指を噛んで血を滲ませると、その血を陣の中心に向かって押しあてた。

 その瞬間、円陣は一気に光を放ち始めると、陣の中心より、巨大な生物が這って出てきたのだ。


「召喚術!?」

「神獣、クランポール! 私のお気に入りよ!!」


 ――神獣クランポール。


 その姿は巨大な白いワニの様な神獣だが、普通のワニと大きく異なるのが、尾の方にも顔がついているという点。

 クランポールは一度咆吼を響かせるとすると、囚人達の方へと向かって、のっそりのっそり歩き出した。

 クランポールの上に乗ったエリクは、これまた保管庫から取り返したのであろう鞭を出して、しならせて床を砕く。


「囚人さん達? これ以上進む気であれば、このクランポールに食い殺されか、私に蹂躙されると思いなさい?」


 グオオオオオオオオと大きく口を開けるクランポールに、囚人達は皆恐怖し、その場にペタリと腰を落としていた。

 だが、一部はそうでない連中もいる。

 動きの鈍いクランポールの脇を抜けて、出口を目指す者が現れ始める。


「後者を選んだようね!!」


 エリクのしなやかな鞭捌きに、多くの囚人達が足を絡められ転けていく。

 そこへやってきたのがアムステリア。


「逃げられると思って?」


 アムステリアはスラリと足を伸ばしたかと思うと、その足を壁の岩盤めがけて一直線に振り下ろした。


「か、壁が……!?」

「逃げたらこうなるわよ? 理解できて?」


 その蹴りは、壁に巨大な亀裂と共に大きなクレーターを作っていた。

 二人の力に恐れをなしたのか、ここから先へ向かおうとする囚人は誰一人としていなかったのだった。


「さて、何を見たのか教えてもらえるかしら?」


 エリクが取り押さえた囚人の顎を撫でながら、アムステリアは足を見せつけて問うた。


「……金髪の女が、背中に翼があって!! 俺達を殺して回っているんだ!! お前達も逃げないと殺されるぞ!!」

「……龍が暴れているのね……!! 急がなきゃ危ないわ!! エリク!!」

「判ってるわよ。行くんでしょ? 私は龍と戦うなんてまっぴらごめんよ。ここでこいつらを監視してるわ」

「そうしてちょうだい。行ってくるわね……!!」

 

 アムステリアは思いっきり床を打ち蹴ると、超スピードで廊下を駆けていった。







 ――●○●○●○――






「――じきにアムステリアも来るからな」

「うぇ、ウェイル!? テリアさん、もう来たよ!? はやっ!?」


 ドドドドと土煙を上げながら、超高速でアムステリアが走ってやってきた。


「お待たせ。上はもう大丈夫よ。エリクがついているから」

「すまんな。だがこれで戦力は整った」

「ウェイル、囚人から地下四階の話を聞いたのだけど、どうやらティアが暴れているみたいね」

「ティアか……!!」


 ちらりと二人をフレスの方を見た。

 フレスが震えている。

 だが恐怖なんかでは決してない。

 その瞳の色は、爛々と輝いているからだ。


「武者震いがするよ……!! ボク、ティアにリベンジしないといけないからね……!!」


 これより下は龍の領域。

 一般人が立ち入ることはすなわち死を意味する。

 だからこそ急がねばならない。

 腹の立つ連中とはいえ、『ネクスト』やその部下の命はなんとしても守らねばならない。


「ステイリィ、お前達は戦闘に一切参加するな。その代わり、何が何でも『ネクスト』の馬鹿共を逃がせ。言うことを聞かなければ気絶させるもいいだろう。アムステリア、手伝ってやれ」

「はいはーい」

「……判りました。戦闘の方は全てお任せします」

「局員を助け出したらすぐに逃げろ。出来ればその後に『セイクリッド』へ応援要請を掛けろ。神器のエキスパートであるあいつらなら、多少役に立つかも知れんからな」

「はい! 聞いたかお前ら! これからは今ウェイルさんが仰った通りに動く! 味方は全員助け出す! 判ったか!」

「「了解しました!!」」

「それでよーし!!」


 調子を取り戻してきたステイリィに、ウェイル達は苦笑を浮かべたものの、皆誰しもが彼女の力をここで思い知ることが出来た。

 ステイリィは、見ていてとても力強い。

 部下を安心させる雰囲気があるのだと。

 見ると彼女の部下達も、任務を全うせんと意気揚々に彼女へついて行く。


「フレス、アムステリア、頼むぞ」

「任せておいて!」

「こっちもね」


 龍の領域たる地下四階へ、いざ足を踏み入れた。




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