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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編 『ステイリィ英雄譚』
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おチビさん二人


「フレス、シュラディンの事は知っているよな? 俺の師匠として、ではなくな」

「うん。ボク知ってるよ。オジサンのこと。オジサンとボクとライラは、とっても仲が良かったんだ」


 シュラディンはフェルタリア王家に勤めていたプロ鑑定士であった。

 幼少期に何度か話したことがあるし、例の事件以降は自分の師匠となって、鑑定士としての基礎基本を叩き込んでくれた。


「オジサンはボクらをずっと守ってくれていたんだ。ライラの最後のあの時まで。だからボク、オジサンには本当に感謝してたんだ。……ずっと忘れちゃってたけど……」


 どうして記憶を失っていたのかも、フレスには判らぬ事。


「ウェイルはどうして気づいたの? ボクがオジサンと知り合いだって」

「気づいたのは今さっきだが、実のところ聞いていたんだよ。師匠にな」

「……え? オジサン、ボクのこと話してたの?」

「ああ。お前と旅をするようになって初めて師匠の家に行った時があるだろ。その時に師匠は言ったんだ。フレスは龍なのではないかと。俺がそれに頷いた後、師匠は寂しげに言っていたよ。『俺のせいで、ライラという少女は』とな」

「シュラディンオジサン……!!」


 自分の事、そしてライラの事を、未だに覚えてくれていた。

 それだけでも嬉しいのに、シュラディンはあの時の事をずっと後悔している。

 シュラディンのことだ、この二十年間、ずっと自分を責めているに違いにない。

 そのことが申し訳なく思い、同時に嬉しく思えて仕方が無かったのだ。

 涙が溢れて止まらない。

 今すぐにでも、シュラディンの所へ行って謝り、そしてお礼を言いたい。


「ボク、オジサンに会いたいよ……!!」


 むせび泣くフレスをウェイルは静かに抱きしめてやる。


「ああ。そうだな。俺も会いたくなってきたよ」


 我が師匠は、やはり最高の師匠であると、ウェイルは改めて実感したのだった。







 ――●○●○●○――






 全てを知っているはずのシュラディンを交えて鑑定を行えば、自ずと答えは見てくるはずだ。

 そうウェイルは結論をつけて、この場は一旦お開きとした。


「治安局に行って電信を借りてくる。みんなはここで休んでいてくれ」


 すぐさまシュラディンと連絡を取らなければならない。

 その為には電信が必要であるが、宿には当然そんなものはないため、最寄りの治安局まで行くことにした。


「ボクも行くよ」

「電信を打つだけだぞ?」

「いいの。今、ウェイルと離れたくないんだもん」


 ギュッとフレスは腕を抱きしめてくる。

 最近色々と思い出しすぎてショックが大きく、心細いのだろうと、ウェイルも同行を許すことにした。


「あ~あ、見てらんないわ。早く行ってきなさい」


 大きく嘆息し、投げやりのように手を振るアムステリアに、苦笑するイルアリルマ。

 エリクはというと、早々に床についていた。

 そんなある意味ゆったりとした雰囲気が流れる中のことであった。


「納得できるかああああああ!!」


 バゴーンという音と共に、ステイリィが叫んだ。


「……痛い……」

「思いっきり机を叩くからだ」


 負傷した手を隠しながら勢いよく立ち上がったステイリィが、ウェイルの前に立ち塞がる。


「ちょっと待てーい! 治安局に行くというのに、どうして私に媚びないかー!!」

「はぁ? 何言ってるんだ、お前は」

「私がついていれば電信を借りる手続きなどイチイチしなくてもいいでしょう! なのに私を連れて行かないとは一体どういう了見だ! 私も連れてけ!」

「いや、プロ鑑定士は手続きいらんだろうが」

「知るかーい! 要するに私はお前らが二人が、まるでデートでもするかのように治安局へ行くのが許せないのだ!」

「……上官、いくらなんでもその本音は引かれますってば。距離をとられちゃいますよ?」

「そんな事を言うビャクヤがどうして一番距離をとっているのだ!?」

「距離の取り方が半端じゃないな……」


 スススとビャクヤは部屋を通り越して階段を下り、その先から突っ込みを入れていた。


「私も一緒に行くの行くの行くの!!」

「子供かよ……」

 

 駄々をこねはじめたステイリィほど、面倒なものはない。


「あー判った判った。お前も来い。確かにステイリィがいると顔が利くから楽だ」

「でしょでしょ!? そこの青いおチビさんよりも私の方が役に立つもんねー!」

「おチビって、ステさんに言われたく無いよ!?」

「ステさんいうな!? ステイリィ御嬢様とお呼び!」

「その言い方無駄に長いよ!? ステさんでいいでしょ、もう!」


 なんともつまらないことで、ぎゃーぎゃー言い争うおチビ二人。

 その様子を見て、いつの間にか階段を上がってきていたビャクヤはニコニコ笑ってウェイルに言う。


「凄いですよね、ステイリィ上官は。さっきまで涙を流していたフレスさんを、一瞬で笑顔にしているんですから」

「ああ、底抜けに明るく、底抜けに馬鹿なのがステイリィの良いところだ」

「ホントです。ですから彼女の部下は止められないのですよ」

「その気持ちは一切判らんし判りたくもないがな……」


 騒ぐおチビ二人を放っておいて階段を降りていると。


「――やかましい! 今何時だと思ってるんだ!! これ以上騒ぐならつまみ出すぞ!!」


「「ご、ごめんなさい……」」

「やっぱりこうなったか」 


 宿のマスターにガミガミしかられる二人を見るのも一興である。


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