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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編 『ステイリィ英雄譚』
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エリクへの尋問

「で、今度はそっちに話してもらいますよ!」

「ああ」


 椅子にふんぞりかえって座る、何とも態度のデカいステイリィが、ズビシッとウェイルを指差した。


「私が聞きたい話、それは――――――私との挙式の日取りはいつですか!? ――ゴフッ!?」

「上官、いい加減ややこしくなるような話はお控え下さい」

「結構容赦ないんだな……」


 ビャクヤは手に持つ分厚い本で、ステイリィの後頭部を強打していた。

 ……うむ、これは痛い。


「今更なんですが、私達治安局員がそちら側の話を聞いてもよろしかったのですか? まずいようなら止めておきますが」

「えー、ずるい! 聞きたい聞きたい! ――ゴフッ!?」


 もはや二人のやり取りは漫才みたいである。


「別に構わないさ。そっちの話も聞かせてもらったわけだし。それに逆に聞いてもらった方がいいかも知れん」


 ステイリィのことは置いておくとして、話の次第によってはビャクヤの方から情報を得られるかも知れない。

 それに治安局に多少耳に入れておいてもらいたいこともある。


「まずそこの女について説明しよう」


 一同が目を向けたのは、本日大監獄『コキュートス』を仮釈放されたエリク。


「こいつは俺達が以前逮捕した『不完全』のメンバーだ」

「『不完全』の!? 生き残りがいたのですか」

「そうさ。他の局員は殆どが惨殺されたし、生き残っていた者がいたとしても、そいつを探すのは難しい。そこで確実に捕まえられるこいつと交渉をしたわけだ」


 腕を組み壁際に立つエリクが、チッと舌打ちする。

 そりゃ彼女にとっては面白い話ではないだろう。


「で、ウェイル、私に一体何をさせようってわけ?」

「交渉の時にも言ったが、俺達は今『不完全』についての情報が欲しい。もっと具体的に言えば、『不完全』の幹部達が握っていた秘密をだ」

「幹部達の? へぇ、どうして」

「それが『異端児』の狙いに繋がっている可能性が高いからだ」

「そ」


 一応納得したのか、少しだけ目を瞑って思案するエリク。


「以前、貴方達と戦った時に、言ったわね。我々の目的を」

「ああ。確か『龍を集めること』って言っていたな。少し記憶があやふやだが」

「正解。龍を集めること。それが『不完全』の最終目的だった。といっても『不完全』には派閥があって、その派閥の中の一つが積極的に集めていたって感じだったのだけど」

「過激派と穏健派、後はどっちつかずの中立派だったな。お前は穏健派なのか?」

「ええ。一応そうなるわね。過激派と行動を共にすることもあったけど」

「龍を集めていたのは穏健派なのか」

「実質的にはどちらの派閥も集めていたのが正解。ただし、積極性には差があったし、何より集めた後の目的が違った」

「目的? なんなんだそれは?」

「穏健派が龍を集めていた理由は、とある神器を制御するため。そして過激派が集めていた理由は、その神器を操るため」

「とある神器……!?」


 ウェイル達に嫌な予感が過ぎる。もうエリクの言う神器が、一体何を差しているか殆ど明確であったからだ。


「『フェルタクス』か?」

「え……!?」


 驚くのはエリクの番であった。

 その名前が出てきたことに、唖然としている表情だ。


「どうして知っているのよ!? あれは組織最高機密のはず! 殆どの構成員にも知らされていないのよ!!」

「話してもらうぞ。『フェルタクス』の事と龍を集めることの関係性。お前の知っている全てをな」


 エリクに対しての尋問が始まった。








 ――●○●○●○――







 ――夜。


 宿泊客もそろそろ就寝する準備をしようと、欠伸一つしてのんびりする、そのような時間帯に。

 ここウェイル達の部屋では、緊張感の漂う謎の確信に迫る尋問が始まっていた。


「どうして龍を集めていた?」

「最初に断っておくわ。貴方との契約に従って私は一切の嘘をつかない。知っていることは全て話す。だから逆に知らない事については全く話せない。どうして知らない、知っているはずだと声を荒げても無駄だと言うことを、どうか頭に入れておいて」

「言われなくても承知している。これでもお前の事は結構信用しているよ」

「元敵に対してよく言えたものね。まあいいわ。話してあげる」


 エリクは組んでいた足を逆に組み替えて、一度深呼吸をした後に語り出す。


「『不完全』が龍を集めていたこと。私は確かに上の命令を受けて龍を集めていた。貴方達と初めて対峙したときも、あの王子様から炎の龍を奪うことが目的だった。正直偶然なのよ。真珠胎児の裏オークションが重なったのは。あれは穏健派がしたことじゃないし」


 王子様というのはイレイズのことで、炎の龍というのはサラーのことだ。


「炎の龍については、元々『不完全』に属していたから、情報は沢山あった。上からは王子様が裏切り行為を見せた瞬間に炎の龍を奪うように指示をされていたの。氷の龍がその場にいたというのは本当に偶然で、正直最初は焦ったのよ?」


 フレスをちらりと一瞥するエリク。

 対するフレスは無表情のまま話を聞いていた。


「どうして上が龍を欲したのか、それは詳しく分からない。私だって知りたかったわよ。でも末端構成員の私に話すわけもないわよね。ま、それでも噂程度には聞いた話がある」

「なんだ、その噂ってのは?」

「三種の神器の一つ、『フェルタクス』が関わっているという噂。そして、そのフェルタクスを制するには、龍の力が必要ということ」

「『フェルタクス』に龍の力……?」

「ええ。『フェルタクス』自体は龍がなくても使用可能らしいけど」

「龍がいなくてもよいのに集める理由はなんだ?」

「判らないわね。ただ、龍をコレクトすることは穏健派の最重要課題であったのも事実」


 未だ判らぬ点は多いが、フェルタクスと龍が何らかの関係があったという事実は確認できた。


「『フェルタクス』について知っていることは?」

「三種の神器と呼ばれる最強クラスの神器であること、そしてその神器は『転移系』の神器であること。これくらいかしら」

「転移系……?」


 転移系神器というのは、その名の通り空間転移を行う事の出来る神器であり、この大陸ではもっぱら競売品の転送手段として用いられている。

 転移できる物も限られ、範囲も狭い為、人間が移動目的に利用する神器の数は指で数えるほどである。

 ウェイルとて最近利用したのは、アムステリアと共に世界競売教会へと潜入した時が最後だ。

 この大陸での移動手段は、基本的には汽車が主となっている。

 大規模転移を行えるレベルの強力な神器はあることにはあるのだが、大半が教会所属の神器であり、おいそれと利用できる代物ではない。


「普通の転移系とは、当然違うんだよな」

「知らないわよ。でも三種の神器の一つというくらいなのだから、力は当然凄まじいのでしょうね。都市一つ丸々転移出来る程かも知れないわ。ま、流石にそれはないでしょうけど」

「都市一つ丸々…………!!」


 冗談めかしてエリクはそう例えたが、ウェイルはその例えを聞いた瞬間、背中に冷たい物を感じていた。


「ま、まさか…………!?」


 脳裏に過ぎる、あの時の光景。

 全てが消え去った、あの日見た全てを。


「転移したと、いう、のか…………!!? あれがそうだと……!?」

「うぇ、ウェイル? どうしたの?」


 突如態度が豹変したウェイルを心配して、フレスが顔を覗き込んでくる。


「ウェイル? 大丈夫?」

「あ、ああ…………」


 フレスの顔を見て、何とか落ち着くことが出来たが、今のは正直危ないところだった。

 あの時の事を思いだし、吐き気を催していたほどだ。


「『フェルタリア』と『フェルタクス』、『セルク・ブログ』の内容を考えても一致する点は多い……!!」


 全ての音が消え去ったあの日、ウェイルは確かに見た。

 フェルタリア全てを包み込む光の柱を。

 もしあれがフェルタクスによるものであったならば。

 『セルク・ブログ』の内容とも全てつじつまが合う。


「繋がった。完璧ではないが、大抵のことはな。エリク、礼を言う」

「え? え、ええ」


 自分は今、何か核心を突くようなことを言ったのだろうか。

 そうエリクは今思っていることだろう。

 ウェイルにとっては、本当に核心を突く答えであったのだ。


「ウェイル、何が判ったのか、ちゃんと話して」


 ずっと黙って話を聞いていたアムステリアも、流石にしびれを切らしたのか、ウェイルに迫る。

 「顔が近いよ!」とフレスは突っ込もうとしたのだが、二人の雰囲気を見るに水を差さない方が良さそうだと思い、控えることにした。


「二つ判ったことがある。一つは『フェルタクス』の能力だ」

「『フェルタクス』の能力……。話の流れから察して、何かを転移させる能力よね」

「ああ。そうだ。だが『フェルタクス』の能力はとんでもない力だ。何せ都市を丸々一つ消し去ることが出来るのだから」

「それは私が冗談で言ったことでしょ? 何真に受けてんの――」


 エリクが口を挟むが、それをアムステリアが制す。


「本当なのね、それ」

「間違いないさ。俺は自分の目で見たんだからな。『フェルタクス』の力を――――フェルタリアでな……!!」


 ウェイルがそう言った瞬間、事情を知る者の中に緊張が走る。

 ウェイルが滅亡都市フェルタリアの王家の影であることを知っているのはフレスとアムステリアと、そしてイルアリルマ。

 わずか一夜にして唐突に住人が消えたとされるフェルタリア。

 噂では王家の圧政から人々が逃げ出したとか、突如現れた龍に焼き尽くされた等さんざん言われているが、誰もその真相については判らなかった。

 その真相が、今ここで明かされている。

 それもウェイル達が最も恐れていた結果が過去として。


「フェルタリアは、『フェルタクス』によって滅ぼされたんだ……!!」


 握る拳にも力が入る。

 これから自分達が関わっていかなければならない神器は、自分の故郷を消し去った神器であるのだ。力が入るのも無理はない。


「そんな……なら、もしかして……」


 ウェイルと同様にフレスも動揺していた。

 フレスはもっと正確な当時の状況を、最近思い出したばかりである。

 まだ一部覚えていないところもあるが、今の持つ記憶だけでもかなりのことが推測できる。


(ライラは、フェルタクスを制御する曲を作っていたんだ……!! でもボクはどうしてその後の事を覚えていないんだろう……?)


 目の前でライラを失って、そしてボクは。

 思い出したと思っていた記憶であるのに、そこのところの記憶だけがない。


「ウェイル、二つ目の判ったことは?」


 アムステリアもフレスの変化には気づいていたが、とりあえず進めることにする。

 問われたウェイルはというと、動揺中のフレスをちらりと後、告げた。


「全てを知っている人物の心当たりだ。そしてその人物は、おそらく過去にフレスと会っている」

「……それは誰なの?」


 ウェイルとフレスは顔を見合わせる。

 お互いに浮かんだ人物に確信が持てたのか、深く頷き合い、そして。


「俺の師匠――――シュラディンだ」


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