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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編 『ステイリィ英雄譚』
424/500

超エリート局員『ネクスト』


(誰か助けてくれーーーーーー!!)


 ステイリィが心の中でそう咆哮した時の事。

 バタンと勢いよく扉が開かれたかと思うと、見知らぬ三人の局員が、ズンズンと部屋に乗り込んできた。


 男が二人に女が一人。

 年齢もステイリィより少しだけ上のような、若い局員であった。


「その決定、少しお待ちいただきたい!」


 この三人の着ている制服に、ステイリィは少しだけ見覚えがあった。

 無論、その印象は良くない方であるが。


「レイリゴア殿、いくら貴殿のご提案とはいえ、事が性急すぎます。それに何故彼女なのでしょうか」

「誰だね、君達は」


 しゃしゃり出たのは男二人のうちのイケメンな方。

 年齢は二十代後半だろうか。

 茶色い髪を伸ばして後ろで結んだ、意識の高そうなインテリ風の男である。


「失礼。自己紹介をさせて頂きます。私の名はラクサールと申します。隣の彼はネイカム、彼女の名はアルセット。今レイリゴア殿のおっしゃった条件であれば、我々にも当てはまります。それに我々は十六人会議候補生です。候補生である我々を差し置いて、彼女の様なポッと出の田舎者を優先される理由がどこにあるというのです」


 突如現れた三人。

 それは治安局に在籍するエリート中のエリート。

 最初から『十六人会議候補生』として治安局に採用された、学歴、経歴、実績、勲章数、ついでに容姿も全て最高クラスという超エリート局員である。

 彼らは次世代を担う者という意味で、『ネクスト』と呼ばれている。


「レイリゴア殿がおっしゃったのは、若さと功績。それは当然ながら我々も持っています」


(――ラクサールかぁ。イケメンだけどウェイルさんほどじゃないな、うん)


「その通り。彼女程度の功績であれば、我々だって負けてはいません」


 次に出てきたのはスポーツ刈りの男。

 筋肉隆々なのが、制服越しにも分かるほどの、さわやか系マッスル。

 彼がネイカムだろうか。


(――ケッ、筋肉が多すぎるのも問題なんだよ! ウェイルさんくらいのスマートさがいいんじゃい!!)


「私も、この子よりも評価が低いとされるのは納得いきません。私達は若さと功績に加えて、学歴もございます。無論ご存じでしょうが、私達はヴェクトルビア魔法律大学の主席卒業です。レイリゴア殿の後輩でもございます。どうかもう一度我々の事を含めてご検討下さいまし」


 最後は黒髪ツインテールの女、アルセット。

 法律書を抱いて、メガネポジションを直しながら、ステイリィを睨んでくる。


(何じゃこのブスは!! 私よりほんのちょっとだけ身長と胸がデカいからって調子に乗りやがって!! いつか殺す!!)


 という勝手な感想を脳内で叫ぶステイリィを尻目に、三人がレイリゴアらに詰め寄っていく。


「「「どうか、再検討をお願いいたします」」」

「う、うむ……」


 三人の迫力に、あのレイリゴアの言葉が詰まる。

 事実彼らは超エリートであるし、この会議の後継者として『ネクスト』に選ばれている存在だ。

 確かに彼らの言い分ももっともであると、レイリゴアも思ったようだ。


「そうだな、確かに君らの事を考えれば、この判断は早計かも知れん」


(え!? 出世出来なくなる!? や、や、やったあああああああああああああッ!!)


(この状況で喜べるのは上官だけですよ……)


 喜ぶステイリィ以外、しばしの間会議は沈黙していたが、幹部の一人が唐突に声を上げた。


「競わせるのがよろしいのでは?」

「……競わせる?」

「ええ、そうです。彼ら三人は非常に優秀で、誰が十六人会議に参加してもおかしくはない。無論、ステイリィ氏もね。ならば競わせましょう。この四人の中で、誰が十六人会議に相応しいのかを」

「……なるほど……」

「それはいいアイデアかも知れませんな」

「どの道全員はなれないのですし、そうしましょう」


 いくら『ネクスト』の三人が詰め寄ったところで、十六人会議に入ることが出来るのは、現状たったの一名。

 例えそれがステイリィでなかったとしても、この三人はこれから争わねばならないわけだ。

 つまり、元々この三人は戦争の火種を抱えていたことになる。


「そう、ですな。丁度良い機会ですしそうしましょうか」


(……え? 何? もしかして出世する機会出来ちゃった……?)


 意見はまとまったと言わんばかりに、レイリゴアが立ち上がり、三人の前に立つ。


「ネクストの三人、そしてステイリィ氏。この四人を十六人会議のメンバー候補とすることに異論のある方はおりますかな?」


 誰も声を上げる者は居ない。


「君らもそれで良いかな?」

「ええ、もちろん。我々三人は、正々堂々選んでもらえるよう尽力いたします」

「ステイリィ氏はどうかね?」

「え、えーと、……」


 断りたいのは山々ではあったが、周囲の視線がもう首を縦に振ることを強制している。


「……了解いたしました」

「うむ。では満場一致ということでよろしいかな?」


 幹部達は皆頷いている。


(やっちゃった! これはもう……!!)


「それではネクストの三人、並びに――」


(私出世しちゃうーーーーーー!?!?)


「――ステイリィ・ルーガル支部長を、十六人会のメンバー候補に加えることとする」


 レイリゴアの荘厳な一言によって、周囲から賛成の拍手が巻き起こったのだった。




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