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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第一部 第二章 競売都市マリアステル編 『贋作士と違法品』
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フレスの異変

「――龍をコレクションすることなのよ?」


「「「――――!?」」」

「……まさか……!!」


 エリク以外の全員が言葉に詰まる――

 

 ――否、全員ではなかった。

 

 たった一人、フレスだけが何かを思い出したかのように目を見開き、顔を青ざめていた。

 そんな四人を余所にエリクは言葉を紡ぎ続ける。


「『不完全』は珍しいものにしか興味ないの。だから龍を求めるのは当然でしょ? そのためには何だってするわ」


 ウェイルはフレスの異変に気がついた。


「おい、フレス、どうした! おい!」

「…………」


 フレスは全く反応しない。心此処にあらず、といった感じだ

 そんなフレスを尻目に、サラーは怒り震えていた。


「お前らの目的なんざ関係ない。今までイレイズを苦しめてきた分、やり返すだけだ!」


 サラーは足に力を込め、大きく跳躍した。


「焼け尽きろ!」


 光り輝く腕から激しい業火が次々と繰り出された。

 激しい爆発が起こり、硝煙の匂いが辺りを埋め尽くす。この爆発なら例えエリクだってひとたまりも無い――はずだった。


「全く、炎の龍は躾が足りないよね……。教育不足ですわよ? イレイズ」

「なっ!」


 声がしたと同時に炎が消え去りエリクが姿を現した。そしてその背後には――


「――イレイズに代わって私達が躾けてあげましょう。ねぇ? クランポール」


 そう、エリクの背後には神獣『クランポール』が現れていた。エリクが召喚したのだ。

 その姿は白いワニに似ている。だがワニとは比べ物にならない程巨大で、ムカデのように何本も足がある。

 口は前と尾の二つにあり、どちらも強靭で鋭い牙を備えている。


「……こいつが、クランポールか」


 真珠胎児の原料はこいつの体液だ。つまり妊婦に体液を飲ませ、真珠胎児を作った張本人。それがエリクだったのだ。


「許さない……! 俺達もやるぞ、フレス!」

「……………………そうだったのか……」

「フレス!」

「…………あの時の連中が…………『不完全』だったなんて……!!」

「おい、フレス! どうしたんだよ!!」

「…………許さないよ…………絶対に……」


 フレスが震えながら零した言葉。その瞳には涙と共に怒気を孕んでいた。可愛らしいその顔は歪み、歯を必死に噛み締めていた。


「フレス……?」


 ウェイルには心当たりがあった。


 ――復讐。

 初めて出会った夜にフレスが漏らした言葉だった。

 フレスの表情が変わったのは、エリクが『不完全』の目的を話した時からだ。


「フレス、邪魔だ!! はぁっ!!」


 掛け声と共にサラーはエリクとクランポールに炎を浴びせ掛けた。


「クランポールにそんな炎は効かないわ。さっき見ていたでしょ?」

「うるさいうるさい!!」


 エリクの言葉を無視するかのように炎を打ち続けるサラー。


「一度下がれ、サラー!」


 イレイズが叫ぶがサラーの耳には届かない。


「全く、効かないって言っているのに。本当に躾が必要みたいね。クランポール! 彼女を捕まえなさい」


 エリクがクランポールに指示をするかのように指を躍らせた。


「グオオオオオォォォォォ……!!」


 クランポールが咆哮を上げ、強大な体を動かし始める。

 その見た目とは裏腹に動きは早い。


「く……くそおおおお!」


 今までのダメージから見てサラーはもう限界だ。それでもサラーは炎を打つ手を休めない。

 サラーの死角から、クランポールの尾が伸びた。


「がはっ……!」


 体力の限界を迎え、それでも攻撃を続けたサラーに、もはやそれを避ける力は残っていなかった。

 尾から受けた衝撃で吹き飛ばされる。


「サラー!!」


 イレイズがサラーの元へ走るが、その行く手をクランポールが阻む。


「貴方達を一緒にするわけにはいかないの。また龍になったら困るし」


 クランポールに乗ったエリクがこちらを見下す。

「エリク、貴様……!」

「余所見はダメよ?」

「ぐっ!!」


 クランポールは口が2つある。頭と尾だ。イレイズは尾の方を気にする余り、頭の方はノーマークだった。その頭がイレイズの背中に直撃したのだ。

 イレイズは何とか意識を保っていたが、崩れ落ちる体を支えることは出来なかった。

 気絶したサラーは、クランポールの尾の口に飲み込まれた。クランポールの口からは体液が零れ落ち、辺りは真珠色に染まる。


「クランポール、その子は消化したらダメよ? 食べるならそっちの男にしなさい」


 クランポールが動けないイレイズに向かって、大きな口を開けながら飛びついてくる。

 そのクランポールの前に氷の刃が伸び、その大きな口の中に刃を向けた。


「間に合ったか!」

「――ウェイルさん!」


 ウェイルがクランポールの牙を砕いた。

 間一髪、イレイズが大きな口に飲み込まれる瞬間にウェイルが駆けつけたのだ。


「あら、ウェイル。『不完全』を庇うの?」

「こいつはもう『不完全』じゃないからな」

「そう、じゃあイレイズの故郷も早く滅ぼさないとね? そういう契約でしたし」


 イレイズの表情が激怒の色に変わる。ウェイルにはイレイズの気持ちが痛いほど分かる。

 エリクはイレイズの表情を見て、満足げに目を細め、そして最後にこう告げた。


「――古代都市『フェルタリア』のようにね!」


「…………!!」


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