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龍と鑑定士  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 『水の都と光の龍』
363/500

――死闘、開始。

 ――集中祝福期間 最終日、朝五時。


 作戦の最終確認を終えた四人は、早速行動を開始していた。 


 フロリアから入手した『異端児』達の作戦はというと、至極単純なものであった。


「時計塔を一気に攻めるという魂胆ね。正直こちらの人数的に厳しいわね」


 その作戦の概要、それは神器である時計塔を、それぞれ一気に発動させるために、四カ所同時に『異端児』メンバーを送り込み、発動条件を満たすというものである。

 発動条件は、それぞれ強力な『光』、『水』、『火』、『音』を発生させること。

 時計塔という巨大な神器を動かすためには、それ相応の魔力の出力が必要となる。

 だから時計塔を動かすために、また別の神器を持ちなければならないのである。

 そしてその別の神器にも、当然のことながら利用するためには魔力が必要だ。

 だから人間という魔力源から、無理やり魔力を奪う作戦を取るつもりなのだ。

 このままではこの都市の住人は、神器を動かす糧となってしまう。


「厳しいが、だが止めるしかない。少なくとも住民には被害を出させないようにしないと……!」


 この一連の行動を止めるためには、魔力源を集中させないこと。

 つまりは人を集めさせないこと。これに尽きる。


「でも、時計塔は一つだけ止めたらいいんでしょ? 最低限はさ」


 また時計塔は四つが同時に起動して初めて一つの効果を為す。

 だから四つの内一つでも止めることが出来たのなら、ウェイルの勝ちと言えるわけだ。


「ならボク達が一か所を制圧してしまえばいいんじゃないの?」

「それは無理だろうな。一か所に集中してしまえば、確かに制圧は可能だろう。だが、他の時計塔は当然発動してしまうし、発動すれば被害は出る」

「そっか。被害を出さないためには全部邪魔しないといけないんだ……」

「それだけが理由じゃないの。もし敵が三カ所を発動し終えた後、間違いなく残った一つに戦力を集中してくるわ。いくらこちらに私やフレスがいるとはいえ、敵の力も強大。龍もいるし、一人一人が相当なる実力者よ」

「今度は一点集中攻撃を浴びてしまうってことだ。それに敵は『異端児』だけじゃない。それが厄介な点でもある」


 敵はなにも『異端児』だけではない。

 未だに『異端児』に操られているとも知らない秘密結社『メルソーク』会員連中もいるのである。

 一応天才の集まった集団だ。舐めてかかると痛い目に遭うだろう。

 なまじ簡単に済む仕事ではないことは、火を見るより明らかだ。


 そういった諸々の事情を考えて、ウェイル達はフロリアからの情報から聞く限り、最も被害が大きいことになりそうな『光』の時計塔と『水』の時計塔に注力することにした。

 龍の存在を考えて、『光』の時計塔にはフレスが、『水』の時計塔にはウェイルが。

 残りの時計塔にはアムステリアとイルアリルマが共に向かうこととなった。


 やるべきことは、ただ一つ。

 魔力の供給を断つこと。

 これが作戦の成功への大前提だ。



 ――――――――


 ――――


 ――



 ――正午十五分前。



 すでに他の時計塔が、やんわりとした光を帯びているのをウェイル達は確認していた。

 時計塔が発動準備状態に入ったというわけだ。

 光り輝く時計塔に、道ゆく人々は皆、何のイベントだろうかと口々に噂する。

 事情を知っているウェイル達としては、自分達に残された時間はもうあまりないというメッセージでもあった。

 






 ――●○●○●○――






 火の時計塔、および音の時計塔には、朝七時にはすでに行動を始めていたアムステリアとイルアリルマが、とある騒ぎを起こしていた。。

 その行動とは至って簡単。

 市場で買った材料だけで、簡単な爆弾を用意し、それを時計塔内部で爆発させたのだ。

 大げさに爆発事件を起こし、さらに治安局に更なる爆破予告まで送りつけてやったのだ。

 これにより、火と音の時計塔周辺には、治安局員が配置され、内部の現場検証の為に、人の入場を規制することに。


「……はぁ、任務とはいえ、悪いことをしちゃうのは気が引けます……」


「あーっはっはっはっ!!、たまにはこういうやり方も悪くないわね! 癖になっちゃいそう!」


 両者の正反対の意見は置いておくとして、一応の人払いは成功したのであった。

 しかし懸念事項はまだある。


 何せ敵の奥の手を、二人は知っているのだから。


「こればかりはフレスにお願いするしかないわね」


「フレスさん、頑張ってください……!!」







 ――●○●○●○――







 ――水の時計塔。



「また会ったな」


 時計塔のホールにて、ゆっくりと椅子に腰を掛けていたダンケルクの背中に声を掛けた。


「……ウェイル、か。何しに来た」

「お前らを止めに、な」


 ゆっくりと顔を此方に向けるダンケルクに、ウェイルは不敵な笑みを見せつける。


「おいおい、俺はお前に逃げろと言ったはずだぞ。先輩の忠告は聞くモンだ」

「なら止めてくれと言う後輩のおねだりも聞いて欲しいモンだ」


 ぐっと、背伸びをしながら立ち上がるダンケルク。

 軽快な身のこなしで、ひょいと壇上へと上がると、腕を組んでウェイルを見下してきた。


「そうはいかんわけだ。俺達にも目的があってな」

「三種の神器だろ。何に使う?」

「さてな。リーダーやイドゥに爺様に聞いてくれ。俺は興味ない」

「興味ないなら別にいいじゃないか。ここで止めてくれても」

「う~む、確かにそう言われればそうだがな。ま、それでもリーダー達は裏切れん。何だかんだで面白い奴らだからな。しかしお前がここに来ると言うことは……、お前、フロリアに全部聞いたな?」

「そうだ、と言ったら?」

「全く、あいつもぶれないよな。裏切りのプロだよ。あいつは。そこが面白いところであるし、だから憎めないんだがな」


 豪快に笑うダンケルク。

 だが、その表情は次の瞬間には一気に鋭いものとなった。


「フロリアについては別に興味ない。今更意味もないしな。今興味があるのは、お前が俺の邪魔をするか、しないか――それだけだ」

「奇遇だな。俺もほとんど同じことを考えている。お前が止めるか、止めないか、だ」

「流石は先輩後輩だ。考え方も似てくるか」

「残念ながら、そうみたいだな」


 互いに、一瞬だけフッと笑うと、瞬時に殺気を放ち、ぶつけ合った。


「俺を止めたいなら、俺を倒せばいい。さすれば俺達の計画も水泡に帰すわけだからな」

「いいのか? そこまで教えてもらっても。俺はダンケルクを止めるために色々と考えてきたのにな。寝ずに考えた泣き落とし説得用の原稿を一体どうしてくれる。そんな単純でいいなら、これほど楽なことはない」

「それは少し聞いてみたいものだ。まあ、後輩想いの先輩に感謝するこったな。それにさっき言ったろ。俺は三種の神器には興味ない。ただ、俺が楽しければそれでいいのさ。『異端児』ってのは、そう言う連中が集まっている」


 ウェイルは氷の剣を精製し、ダンケルクは双剣を構えた。


「久々に本気でやりあえる。楽しみだよ、ウェイル」

「正直俺は全然楽しくないんだけどな……!」

「あらら、考え方、似てないじゃないか」

「残念なことにな。だってそうだろ? 親切な先輩に、俺が引導を渡すと考えたらな」

「言ってくれるねぇ。生意気に後輩にはお灸が必要そうだ」

「是非やってくれよ。それは楽しみだ」

「やっぱり似てるじゃないか、後輩」

「みたいだな、先輩」


 瞬時、氷と鋼がぶつかりあう。

 氷の解ける水しぶきと、耳に刺さる金属音がこだまする中、二人は互いの目だけを睨み付けていた。


「もっとスピードを上げるぞ。ついて来れるか?」

「後輩は先輩に言われたら嫌でもついていくもんさ」


 さらにスピードの上がった斬撃の応酬が繰り返されていく。


 二人の死闘が、今、始まった。


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