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龍と鑑定士  作者: ふっしー
番外編5 アムステリア編 『愛に狂った朧月』
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未来のお婿さん

「ねぇ、リューリク! そっちの布団に行ってもいいかな!?」


 こうやって遊ぶとき、二人はよくリューリクの家にお泊りしていた。

 最初はリューリクが一人ぼっちは寂しいと二人にぽつりと呟いたことから始まったことだが、今となっては二人の方から積極的に泊まる様になっていた。

 ことあることにリューリクをからかうのは二人の日課みたいなものだが、それは就寝時にも相変わらずである。


「ねぇ、リューリク、いいでしょ!?」

「ええ!? 僕、もう十歳なんだよ!? 一緒に寝る歳じゃないよ!?」

「リューリクは十歳ってことを強調し過ぎ!」


 ルミナスはごそごそと布団の中に潜り、そのまま潜ってリューリクの布団に移動した。


「ぷはぁ、ルミナス、泳いでまいりました!」

「本当に来ちゃったの!?」

「いいでしょ? 一緒に寝ようよ」

「ルミナス、また僕をからかってるの?」

「違うよ。本当にリューリクと一緒に寝たいんだもん。リューリクってば抱き心地が最高なんだから!」

「抱き枕じゃないんだけど、僕……」


 なんて言いつつ、リューリクとて嬉しそうだ。

 照れるリューリクと笑顔のルミナスに、隣から様子を見ていたアムステリアも、ニヤリと笑う。


「ねぇ、リューリク。私もそっちに言っていいかな?」

「テリアまで!?」

「両手に花でいいじゃない。一方はまだつぼみだけどね」

「お姉ちゃん、私、もう花だよ! 開花してるもん!」

「私から見れば、ルミナスはまだまだ子供よ」

「お姉ちゃんだって、私と一つしか違わないじゃない!」

「僕を挟んで喧嘩は止めてよね」


 ランプを消して、三人仲良く一つの布団に川の字になる。

 美少女二人に囲まれたリューリクは、どうにも落ち着かないようだ。


「ねぇ、リューリク。天井のシミなんて数えずに、こっちを向いてよ」


 恥ずかしくてどっちに向くことも出来ず、ずっと上ばかり見ていたリューリクに、アムステリアがからかい始める。


「そうだよ、リューリク、こっち向いて寝て」

「い、嫌だよ! どうせ向かれなかった方は不機嫌になるじゃないか。僕は中立に上を向く!」

「そう、じゃあこうしましょうか」


 アムステリアはそそくさと布団から出ると、今度はリューリクの上に覆いかぶさった。

 さながらアムステリアに押し倒された格好だ。


「これで顔がよく見える」

「テリア!? 止めてよ、なんだか僕襲われてるみたい!?」

「あら、襲ってもいいの?」

「嫌だよ! テリア、早く戻って! 重いから!」

「重い、ですって……!?」


 ――ピキッ。


 その言葉はアムステリアにとってはタブー。

 見事なまでに血管が浮き出ている。


「あ~あ、リューリク、お姉ちゃんにそれは言っちゃいけないよ?」

「え、え!? 何かな!? ……って、テリア!? どうして笑顔がひきつってんの!?」

「重くて悪かったわね!」

「いたたたたた!? 痛い、痛いって!」


 思いっきり頬っぺたをつねったやる。


「ごめん、ごめんって! 謝るから! 許して!」

「私の方、向いて寝てくれたら許してあげる」

「判った、判ったから!」

「ええ~、お姉ちゃん、ずるい! リューリク、三分に一回は私の方向いてね!」

「僕それじゃ眠れないよ!」


 ――今夜は長くなりそうだ。







 ――●○●○●――







 日付も変わる頃だが、まだ三人は起きていた。

 先程の騒々しさから打って変わって、三人揃って静かに天井を見つめていた。

 最初に口を開いたのは、ルミナステリアだった。


「ねぇ、リューリク。私ね、将来リューリクのお嫁さんになるんだ」

「お嫁さんか。いいね。…………って、僕の!?」

「うん。リューリクは私の旦那さんになるの」

「僕の決める余地とかは?」

「私じゃ嫌?」


 いつもの口調だが、その質問だけは緊張が混ざっていた。

 返答を待つ表情も何だか不安そうにみえた。

 だからリューリクも少し考えたのだが、


「嫌なわけないよ」


 答えはこれしか出てこなかった。


「リューリクは私のこと、好き?」

「うん」


 それを聞いたルミナステリアは目を輝かせる。


「じゃあ私、お嫁さんになってもいいよね!?」

「でも、僕、アムステリアのことも好きなんだ」

「……むむ。またお姉ちゃん」


 ルミナステリアの視線が、アムステリアに突き刺さる。

 だが、アムステリアはそんな視線に、逆に余裕しゃくしゃくで応じてやる。


「あら、ルミナスより私の方が、お嫁さんとしては優秀よ? リューリクの好きなパイだって私の方が上手に焼けるんだから」

「私だって、もっと練習して上手くなるもん!」

「貴方が練習している間、私も練習しているから、結局差は埋まらないわね。ね、リューリクも私の方がお嫁さんにはふさわしいでしょ?」

「そんな、僕にはまだ決められないよ」

「優柔不断ね」


 はぁ、とわざとらしくため息を吐く。


「そうだ! お姉ちゃん! 私にいいアイディアがあるよ!」


 これは名案だと、ルミナステリアが目をさらに輝かせた。


「言ってみなさい」

「私とお姉ちゃん、二人でリューリクのお嫁さんになればいいんだよ! ね、そうしよう?」

「ルミナスったら、また意味わからないことを……。うん、でもそれでいいかもね」

「いいんだ!?」

「リューリクも、お嫁さんが二人の方が色々と楽しいと思わない? 私とルミナス、二人がお嫁さんなんて、リューリクは幸せ者だよ?」

「三人で結婚しようよ! いいよね、リューリク」

「い、いいのかなぁ……?」

「決~まり! リューリク、私、うんと美人になるから! 結婚できる歳になったらすぐに結婚しようね! ……お姉ちゃん、抜け駆けは駄目だからね!」

「はいはい」

「話がどんどんと勝手に進んでるよぉ……」



 なんて言いつつ、顔を緩ませっぱなしのリューリクを見て、二人は大笑いしたのだった。



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