表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士  作者: ふっしー
第三部 第十章 貿易都市ラングルポート編『暴走! 超弩級艦隊』
257/500

大艦隊、撃破

 大艦隊の猛攻は続く。

 今度はセントラルポートに続き、マーメイドポートも甚大な被害を被っていた。

 マーメイドポートの象徴と言える神獣、マーメイド達は人間と共同して、マーメイド族に伝わる秘伝の神器を用いて港の守備にあたっていたが、それらのバリケードすらもドレッドノートの一撃は粉々に打ち砕いてみせた。

 光の砲撃は雨の様に、ラングルポートの都市にまで届き始める。

 大多数の住民は、治安局やデイルーラ社の指示の元、地下倉庫に避難することが出来た。

 それでも一部住人は残っていて、彼らはその光弾の餌食となったのだ。

 ラングルポート各地を焼き尽くさんとする大艦隊。


 そんな大艦隊の中心から、蒼白い光が発生する。


 突如ラングルポートの空に現れたのは、伝説に語り継がれる最強の神獣、龍であった。


(あれがフレスの真の姿……!!)


 最後まで避難者の指示にあたっていたギルパーニャは、その姿を一目見てフレスだと確信した。


(フレス、綺麗だよ……)


 その美しい姿に、目を奪われてしまう。


「君もそろそろ避難しなさい!」

「あ、はい」


 プロ鑑定士に促され、地下倉庫へと移動するギルパーニャ。


(フレス、頑張って……!!)


 この時ギルパーニャは、親友の姿をこう思ったそうだ。



 ――最高に格好いいと――




『しかし久しぶりだな。この姿に戻るのも』

「ああ、久しぶりだ。滅多なことじゃ呼ばないからな」

『フン。それはそれで少し寂しいぞ』


 蒼き神龍『フレスベルグ』。

 フレスベルグの背中に乗ったウェイルは、一気に空へ上昇する様に指示をした。


『都市が大変なことになってるな……!!』

「フレス、いくらお前の力でも、この軍艦を一斉に落とすのは無理だ。だからまず、都市に被害を与えぬよう、氷で結界を貼ってくれないか!?」


 光線をこれ以上都市に撃たせてはならない。

 その為には、氷の壁を作って守護する方が確実だ。


『うむ、では海水を使おう』


 フレスベルグの背中の光輪が輝きを始める。

 周囲から風は止み、空気が湿ってくるのを感じた。


『我の呼応に答えよ。荒れ狂う波を引き起こし、水晶の衣を作らん!!』


 海水が、天目がけて、間欠泉の様に打ちあがり始めた。

 それも一つだけではない。数えきれないほどの間欠泉だ。

 間欠泉は、フレスベルグの周囲を回り始め、大きな渦となる。

 渦は徐々に広がり、そして都市を守る大きな波となった。


『はぁ!!』


 フレスベルグの掛け声で、時が止まる。

 そう思わせるかのごとく、海水は見事に凍り付き、都市を守る巨大な壁となった。


「ナイスだ、フレス」

『当然だ。我を誰だと思っている』

「俺の弟子だろ?」

『フフ、その通りだ』


 こんなやり取りも久しぶりだ。


「これでしばらくは大丈夫だろう。後はこの大艦隊を全て撃ち落とすだけだ」

『ウェイルよ。一番大きな戦艦が見えんぞ』

「オライオンのことか。何、あれの行先は判っている。というかレイアの奴、フレスが来ることを予測していたのか……?」


 オライオンの姿はすでにない。

 仮にあったとしても、ドレッドノートを全て落とす方が優先であるわけだから、その隙に逃げられる。


「レイアのことについても後で詳しく話そう。お前も話したいことがは山ほどあるんだろう?」

『フレスは話したくてうずうずしておるぞ』

「お前だってフレスだろう?」

『一応な。まあ良い。さっさと撃ち落とすぞ』


 大艦隊の目前に躍り出たフレスベルグは、またも背中のリングに光を集中させる。


『一掃してくれる!!』


 光線を撃ってきた艦隊に、お返しとばかりにフレスベルグは口から光線を撃ち放った。

 光線は艦隊を一撃で薙ぎ払う。

 あれほどの艦隊を、時間にしてたったの一分足らずで。

 ものの見事に粉砕して除けたのだった。









 ――●○●○●○――









 ラングルポートに布かれていた緊急事態も、その3時間後には解除された。

 デイルーラ主導にて、負傷者の手当てが行われていた。

 プロ鑑定士協会、並びに治安局は、事件の犯人をアルカディアル教会と断定し、捜査に踏み切ることに。

 荒れ果てたガングートポートの修繕を早速行うように指示が行きわたっていた。


 元の姿に戻ったフレスを連れて、ウェイルはデイルーラ本社へと戻ってきた。


「ウェイル、無事だったか……!!」

「まあな、……ってユースベクス、何泣いてるんだ!?」

「バカ野郎!! ダチが危ない目に遭ってたんだ、無事が確認できたんだから涙くらい流させろ!!」


 おいおいとなく社長に、社員一同、暖かい眼差しを送っていた。


「俺はあの大艦隊が来た時、己の無力さを恨んだよ。いくらデイルーラ社のトップでも、これほどの緊急事態には何もできないということを痛感した」

「なに、デイルーラにしか出来ないこともあるだろう? 住民の避難を率先してやったそうじゃないか」


 ウェイルが見回すと、社員達は皆首を縦に振っていた。

 代表してイザナが前に立つ。


「社長の迅速な指示のおかげで、社員に死傷者はいません。地域住民も感謝しています」

「だが被害は出てしまった。元々暴れ回った軍艦は我が社のもの。地域住民には償いきれない罪を犯した」

「それは違うぞ、ユースベクス。罪を犯したのはアルカディアル教会でお前じゃない。あの軍艦だって、他大陸からアレクアテナを守るためのものだろう? 誰もお前を攻めやしないさ」

「そうだって、社長さん! ボクら社長さんからはたくさん大切なものを守ってもらったんだ。だから今度は恩返しをした。それだけだよ」


 フレスの言う大切なものというのは、ヴェクトルビアの事。株式総会での事だろう。


「ユースベクス。お前に落ち込む暇なぞない。さっさとラングルポートを復興させろ。それがデイルーラの使命だろ」

「う、うむ。そうであるな……」

「そんな姿をヤンクに見せてみろ」

「止めてくれ。親父の拳には勝てんのだ」


 そんな情けない姿を堂々と晒すところも、ユースベクスが社員から愛される所以であろうか。


「よし、イザナ! 負傷者の治療の後は、被害のあった場所を全て調査しろ。今回の事件で被害に遭い途方にくれているものは全てデイルーラで雇ってしまえ。こき使ってさっさと元の生活に戻させるようにするぞ」

「了解しました、社長! それでは三つの港に調査団を送りましょう! しばらく昼寝する時間はありませんよ?」

「ふん。眠気などとうに吹っ飛んでおるわ」


 やる気に満ち満ちるデイルーラ一同だ。

 ラングルポートの復興はすぐに終わる事だろう。


「そうだ、俺の弟子がイザナから手帳を借りたんだ」


 イザナの手帳をユースベクスに手渡す。


「そういえば俺も中を見たことは――――!?」


 ページをめくるたびに、ユースベクスの顔が固まる。


「イザナ?」

「はい、何か?」

「この社長観察日記というのは何かね?」

「ああ、それですか。文字通り、社長の観察日記です。社長ったら毎日色々とやることがおかしくて。お昼寝一つにしても寝相が違ったりするんですよ」

「これをまさか毎日つけてるのか……?」

「ええ。毎日つけて、定期的に社内新聞で公表しておりますが?」

「今すぐに廃刊だ!! そんな新聞は!!」

「社員からの受けはいいのですけどねぇ」


 こんな社長と秘書の漫才も、デイルーラ社の名物と言えよう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ