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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第三部 第十章 貿易都市ラングルポート編『暴走! 超弩級艦隊』
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奪われた弩級戦艦(ドレッドノート)

 時間にして、たったの二十分程度だっただろうか。

 多くの治安局員が倒れる中、アルカディアル教会は、ガングートポート内に存在する12隻のドレッドノートクラスの軍艦を奪取することに成功した。

 治安局員の妨害はほとんどなかったに等しい。

 当然、アルカディアル教会の暴動を止めようと、残っていた多くの局員が現場に派遣された。

 派遣された治安局員は、暴動を抑えることの何の役にも立たなかった。

 無論彼らとて丸腰で向かった訳ではない。

 各自一人一人に与えられた、武器系の神器で武装していたにも関わらずだ。


「あっけなかったですな」


 血を流し倒れる治安局員達を見て、作戦の成功に喉をうならせるリューズレイド。

 ドレッドノートクラスの軍艦の甲板から見る下の光景は、まさに地獄絵図。


「やりすぎたかもね……」


 遅れて現れたのはテメレイアだった。

 手の本からはすっかり光は失われており、今はただの本同然だ。


「しかし『アテナ』の力は恐ろしいですな……。彼らが神器を持ちだしたのは自殺行為でしたな。魔力の逆流がこれほどまでに威力を出すとは」

「そうだね。今までの神器暴走は『アテナ』が未完成状態だったから、ラルガポットを爆発させるとか小さな暴走しか起こせなかった。しかし、まさか『アテナ』が完成すればここまで力が出るとは僕でさえ想像がつかなかったさ」

「この調子でいきますと、最終目的も簡単に奪取できそうで何より」

「……そう簡単には行かないと思う。あれはもっとも警備が厳重だ」

「しかしあれは治安局ではなく、まだデイルーラ管轄のはず。所詮、実践に慣れていない素人集団ですぞ? 油断は以ての外ですが、警備のプロを出し抜いた我らです。大丈夫でしょう」


 なまじ作戦がうまく行き、リューズレイドや彼の部下達は気を緩め笑っていた。

 彼らは気づいていない。

 大丈夫という言葉が出る時点で、必ずどこかに油断はあるのだ。

 そしてテメレイアには気がかりな点がある。

 『アテナ』の力を超えうる可能性のある強大な力の存在を。

 もし彼らが我々の前に立ち塞がり、本気で止めようと力を奮うのであれば、作戦は失敗する可能性だってあると。


「僕は行くよ。危険の目は早めに潰しておきたいからさ」


 だからこそテメレイアは更なる奥の手を出すことに。

 それらは全て超弩級戦艦『オライオン』を手に入れるために――。


 ――ウェイルと直接対峙する時が来た。










 ――●○●○●○――









 

 アルカディアル教会は、テメレイアの情報を元に、大陸各地に眠っていた三種の神器の一つ、彫像楽器系神器『アテナ』のパーツを掘り起し、つい先日全てのパーツを合体させることで伝説の神器を甦らせることに成功していた。

 母なる神器と称されるそれは、全ての神器に流れる魔力を制御できるという危険な代物であった。

 アルカディアル教会は、この『アテナ』の魔力制御を逆に暴走させる形で発動させていたのだ。

 フレスがハンダウクルクスで聞いた謎の音、その正体はアルカディアル教会がハンダウクルクスの地下で、アテナの採掘作業を行う時に発生した音だったのである。

 『アテナ』の力は強大であった。

 複数に分解された一つのパーツでさえ、小さな神器を暴走させるには十分な力があった。

 サスデルセルにて勃発した最初の神器暴走であるラルガポットの爆発は、アテナの魔力逆流が原因である。

 シルヴァンにて『ソラリス・モノリス』が暴走したのも『アテナ』の影響であるし、『天候風律』をコントロールして、テメレイアが風を使ったように見せかけた。

 アルカディアル教会は、『アテナ』のパーツを用いて、様々な暴走事件を意図的に起こしていたということだ。

 テメレイアがシルヴァニア・ライブラリーから持ち出した書物『神器封書』。

 それには三種の神器の発動方法について各々暗号化して記されていた。

 あまり時間もなかったため、テメレイアが解読できたのは、当初の目的である『アテナ』だけである。

 『神器封書』は、その本自体が神器であった。

 三種の神器を発動させる時のみ、その力を発揮するのである。

 テメレイアが『アテナ』の発動を行う時、本には光り輝く楽譜が浮かぶ。

 それを歌として奏でることで、『アテナ』はその力を最大限に発揮することが出来るのだ。



『                            』



 テメレイアの歌声が、ガングートポートに響き渡った。


 人々は、突如聞こえてきた女神のような歌声に、何事かと戸惑ったものの、その旋律の美しさに誰もが耳を傾け、心地よい声に癒された。

 だが、その心地よさは次第と不快感へと変わっていく。

 体が震えはじめたのだ。

 戦慄とでもいうのか、ただただ恐怖し、身を抱くことしか出来ないほど、それは狂気的な声だった。


 さらに轟くのは地響き。

 それも相当な大きさの地鳴りだ。


「どうした!? 何があった!?」

「わ、判らない!! 突如綺麗な歌が聞こえたと思ったら、地面が揺れ始めて!!」

「ガングートポートの方からだ!!」

「治安局は何をしているんだ……!?」


 他の港にも、その地響きは轟いていた。

 誰もがガングートポートの異変に気が付く。

 それはウェイルとて例外ではなかった。


「な、何がどうなっているんだ!?」


 唐突に発生した地震に、思わず転げそうになる。

 辺りを見回すと、耐え切れずに転んで、怪我をしている船員もいるほどだ。

 この超弩級戦艦『オライオン』は入水式を迎えていない。

 したがって未だ巨大倉庫内部、つまり地上にあり、振動を直接受けていた。

 故に感じる振動も半端ではなかったのだ。


「何か始まった気配だな……!!」


 あれほどヒントを与えられていてのこの振動だ。

 これはもはや答えに等しい。


「レイアの奴、何かやらかしたのか……!!」


 急いで外廊下へと出たウェイル。

 未だ倉庫内には異変は感じ取れない。

 そこで二回目の振動が発生した。


「くそ……!!」


 最初の振動とは比較にならないほどの巨大な振動。

 なんとか手すりに握り、振動に耐える。

 振動が収まるのを待ち、様子を窺う為、甲板と躍り出た。



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