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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第一部 第二章 競売都市マリアステル編 『贋作士と違法品』
24/500

再会 ※

「やはり人が多いな」


 この都市の食堂は総じておしゃれだ。

 競売都市というだけあり、様々の装飾品が飾られ、華やかさを演出している。

 煌びやかな食堂もいつも人で溢れかえっていた。


「ウェイル、あそこの食堂はどう?」

「あそこか……」


 しかしフレスが指差した店は、看板に装飾一つない、この都市には不釣合いな質素な食堂だった。


「空いていそうか?」

「列はないから大丈夫かも」

「とりあえず聞いてみるか」


 列こそ無かったものの、中に入ってみるとそこは予想以上の客で賑わっていた。


「いらっしゃいませ! すまねーな、人多くてよ!」


 態度が良いのか悪いのか、はっきりしない接客が現れる。


「席、空いてるか?」

「二名様でございますか? ちょっと空いてねーよ。相席でよろしいなら、一つご用意出来ますが。それでよろしいでしょうか? 」

「構わないよな? フレス」

「うん。いいよ」

「じゃあその席頼む」

「ふん、わかったよ。ついてきな。ご案内差し上げます♪」


 思わず二人は顔を見合わせた。


「何だこの接客は……」

「変わった接客だね!」


 そんな接客に案内された席は四人席で、すでに二人組みが座っていた。

 一人は白髪の男、もう一人は全身ローブで身を包んでいて良く分からない風体だった。


「こちらの二人が相席を希望しています。よろしいかコラァ!!」

「私達は構いませんよ。どうぞ、お座りください」


 態度最悪な接客が尋ねると、白髪の男が顔をあげニッコリと微笑んだ。


「――イレイズ!?」



挿絵(By みてみん)




 ウェイルにはその顔に見覚えがあった。そして向こうもウェイルに気が付いたようだ。


「――ウェイルさん!? ウェイルさんじゃないですか! いやぁ、まさか再び会えるだなんて。僥倖です」

「知り合いか? 良かったじゃねーですか」


(おい、この接客、クビにした方が良いんじゃないか?)


 ともあれ無事に席を確保することが出来た。


「イレイズ、まさかこんな所で出会えるなんてな。偶然にもほどがあるぞ……」

「本当ですよ。先日はありがとうございました。是非お礼をさせてくださいね」


 二人はぐっと握手を交わす。

 もう二度と会うことはないと思っていただけに、アレクアテナ大陸の狭さを感じてしまう。


(こんな再会も悪くないな)


「この人、誰?」


 フレスがウェイルの袖をちょいちょい引っ張って尋ねてくる。

 当然のことながらフレスは汽車上の事件のことを知らない。その時はまだ封印されていた頃だ。


「私はイレイズと申します。そちらのウェイルさんに困っていたところを助けていただいたのです」

「へぇ、さっすが師匠!」

「おや、では貴方はもしかすると、ウェイルさんのお弟子さんですか?」

「うん♪」

「そうなのですか。それは凄いことですよ。何せウェイルさんは若干十八歳でプロ鑑定士の資格を取得した伝説の鑑定士なのです。市場ではウェイルさんの公式鑑定は他の鑑定士の公式鑑定より高く値が付くのですよ」


 ――自分が伝説、と言われるのはなんだか変な感じだ。フレスはいつもこういう感じなのだろうか?


「今日は競売をなされにいらっしゃったのですか?」

「いや、おそらく競売はしないな。別の仕事で来たんだ」

「へぇ、実は私も別件なのですよ。珍しいですよね、お互い」

「そうだな。ここマリアステルに来る理由なんて競売関係しかないもんな」

「はい。でも競売にも参加しようとは思います。この子にも何か買ってあげたいですし」

「…………」


 この子とは隣に座っているローブを被った小さい子のことだろう。身長はフレスより少し高いくらいだろうか。


「「ぐぅ~」」


 どこからともなく間抜けな音が聞こえてきた。


「お腹すいたよ~、ウェイル~」

「…………」


 どうやらフレスとローブを被っている子の腹の音色のようだ。

 ローブで表情が見えない為よく分からないが、少し震えていたのでやはり恥ずかしかったのだろう。相変わらず無言を貫いていたが。


「ははははは、ごめんよ。つい話に夢中になって。お腹すいたよね」

「おいおい、フレス。はしたないぞ?」

「むぅ。だってもうお腹ペコペコなんだもん」


 そうこうしているうちにさっきの接客がやってきた。


「お客様、注文をお伺いするぜ!」






「「――くまのまるやき!!」」






 ローブを被った子とフレスの叫びが重なる。店中の注目が集まった。


「……そんなものはねーよ……」


 しんと静かになった店内で唖然とした表情の接客がぼそりと漏らす。

 そんな接客を横目にウェイルとイレイズは思わず顔を見合わせた。


「「ま……まさか?」」


 こっちまで言葉が重なる。


「まさかその子……」


「ウェイルさん、もしかして……」



(――――龍、なのか!?)




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