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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第三部 第九章 図書館都市シルヴァン編『インペリアル手稿と神器暴走』
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旧時代と『三種の神器』

 旧時代。

 そう呼ばれた時代がある。

 今からゆうに数千年以上も前の話で、神が地上にて人間と共に暮らしていた時代だという。

 その時代の遺物こそ、神器と呼ばれる代物なのだ。

 旧時代は太古の神々の行った大戦争によって終結したとされる。

 フレスは何も言わないが、龍という存在も旧時代の神獣であるとウェイルは見ている。


 プロ鑑定士協会も旧時代についての研究が盛んだ。

 旧時代の研究は神器を解析する手掛かりになることは間違いないし、新たな神器の発見にも繋がる。

 

 もっとも、旧時代の研究の主な目的は神器についてではない。

 神器に関わりがないと言えば嘘になる。当然関係はある。

 研究によってもっとも知りたいテーマ。その旧時代を終わらせた原因についてだ。

 神器を見る限り、旧時代はかなり高度な文明であることが判っている。それこそ現在のアレクアテナ大陸以上に。

 そんな時代が終わるほどの何かが、そこにはあるわけだ。

 無論、神々の大戦争が原因だと指摘を受ければそれは間違いない。

 だが、人間と共に地上で暮らしていた神々に、それほど強大な力があったとは思えない。

 最近の研究にて、旧時代を崩壊させるに至った戦争の原因には、とある神器が関わっているということが明らかになった。


 その名も『三種の神器』。


 旧時代を終わらせたのは三種の大神器と呼ばれる、とてつもなく強大な力を持つ神器だということが判ったのだ。

 この姿形、能力、発動条件など全てが謎に包まれているものの、確実に実在すると言われている。

 時代一つを終わらせたという強力な神器。当然それは武器にもなり得る。

 もし現代で発見されれば、果たしてアレクアテナは一体どうなってしまうのだろうか。








 ――●○●○●○――








「ウェイル、この文字、解読できる?」

「ちょっと待てよ」


 その本には解読法も少しばかり記載されていた。


「先輩鑑定士に感謝だな」


 その本の著者を見てみると、どうやら鑑定士らしい。

 こればかりは当時の鑑定士に感謝せねばならない。

 全てが全て解読できるわけではなかったものの、時間を掛けて七枚中、三枚は何とか解読に成功した。


「なんて書いてあったの?」

「イマイチ要領を得ないものだった。というのも、これらは文章と言うよりはなんらかの暗号の類だと思う」


 ウェイルが並べたのは赤、黄、そして黒の硬貨。


「これら三枚には、それぞれ方角が示されていた。北、南、西だ。解読を進めれば東もあるかもしれない。そしてそれ以上に気になるのが次の単語だ」


 方角が書かれた面を裏返す。


「赤『時代の覇者は放たれる』、黄『黄金の鍵は龍の手なり』、黒『終焉は王の手によって』――と、翻訳すればこんなところだ。各単体での意味は理解できないが、全ての文字を解読できれば判る可能性はある」


 七枚の硬貨の保存状態は良好だ。文字が潰れているなんてこともない。

 この分だと、もし全てが旧フェルタリア文字で描かれているようなら解読は可能かもしれない。


「ウェイル、やったね!」

「ああ、書いている内容の意味は全く分からないが、なんとか足がかりが出来たな。それにしてもまさか旧時代の硬貨だったとはな」

「よくこんなに綺麗な状態で残ってたね」

「それが不思議だよ。もしかしたらこの硬貨、金属じゃないのかも知れん」


 金属ならどこかしら痛む。風化や錆びなどでとても文字など読めやしない。

 尤もこれは旧時代の金属だろうから、錆びない金属でも用いられているのかもしれない。

 旧時代には錆びない金属や魔力の流れの良い石がたくさんあったという。

 失われた技術によって生成された可能性は大いにある。


「ましてこの硬貨自体が神器な可能性もあるな」

「そうだね。硬貨型の神器は見たことあるよ」

「ともかくこのカラーコインは相当な貴重品だと判った。このことをルーフィエ氏に伝えられるだけでも儲けもんだな」


 カラーコインの所有者のルーフィエ氏には、あれからずっと待ってもらっていた。

 ようやく鑑定が進展を迎えたことに、ウェイルは内心ほっとしたのだった。

 時間は掛かったが、これで鑑定を続けることが出来る。

 残りの解析も急がなくてはならない。


「さて、残りも解読してみるか」

「よっしゃあ! 手伝うよ!」

「よし、ならばもう必要のなくなった本を本棚に返却してきてくれ。後で翼を揉んでやるよ」

「むううう、またこの作業……」

「文句があるのか?」

「ありませんよ、コンチクショー!」


 昨日とは反対の作業を、フレスはぶつくさ文句を垂れつつせっせと本を運んだのだった。



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