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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第三部 第九章 図書館都市シルヴァン編『インペリアル手稿と神器暴走』
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弟子使いの荒い師匠

 受付を済ませると、二人は第三種規制書物閲覧室へと案内された。

 入場には少しばかり時間が掛かることとなった。入場に際しての注意点の説明と、身体についた埃などの除去作業があったからだ。

 髪や衣服などに付いた埃を丁寧に払い、両手も綺麗に洗い手垢を落とす。

 係員のチェックを受け、合格になれば、靴を履き替えた上で入場が認められる。

 フレスには服の穴のこともあり、慎重に作業を済ませた後、ようやく閲覧室へ入場を果たすことが出来た。


「のおおおおおおお!?」

「驚きすぎだ」

「だって! 本棚! これが全部本棚!?」

「お前プロ鑑定士協会のアカシックレコードを見た時も驚いていたな」

「これはあの時の比じゃないよ!? すごおおおおお!?」

「驚き方にはあまり大差はないな……」


 しかし、判ってはいても実際に見れば何とも壮観である。

 高さにしてどれほどあろうか。おそらくは五十メートル以上もある本棚が軒並み連なっていた。

 蔵書ごとに番号が振られ、番号さえあればどこに何があるかおおよその見当は付くようになっている。


 閲覧時間は限られている。

 ウェイルも目的の書物を探しにいくことに。


「フレス、『硬貨』の棚は16782番棚だそうだ。探すの手伝ってくれ」

「あいさ!」


 これほど広大な蔵書スペースだ。目的の本を探すだけでも一苦労である。

 また棚を見つけたとしても、手にするのは至難の業だ。

 棚に番号こそ振られているものの、番号は7桁もあるので、探しやすいとは言い難い。

 各本棚には、それぞれ蜘蛛の巣のように渡り廊下が張り巡らされ(渡り廊下は五階層もある)、階段を上がるだけでも一苦労。

 さらには本を持ち運ばなければならないため、運搬だけでも相当な労力となる。


「本のタイトルは何?」

「それがな、どの本を読むかは決まっていないんだ」


 そしてウェイルは、この図書館を利用するに置いてもっとも重要なことを置いてきている。

 

「決まってないの!? じゃあどうするの!? 全部読むの!?」

「一通り軽く見てみるつもりだ」

「軽く!? 全然軽くないけど!?」


 そう、これがこの図書館を利用するにおいて最も面倒な作業の一つ。

 調べ事だ。

 ウェイルは硬貨のことを調べに来た。

 しかし、具体的な目的の本があってここに来たわけじゃない。

 さまざまな参考書を読みふけ、回答を見つけようと来たわけだ。


「この本棚だけでも数万冊あるんでしょう?」


 適当に手を置いた巨大な本棚。

 天井高く積み上げられた本の山に、フレスは内心げんなりした。


「全部が硬貨ってわけじゃないだろうが、関連書物は千冊程度あるだろうな」

「それを全部!?」

「一応な」


 欲しい情報を膨大な書物の中から探し出さねばならない。

 探索作業が実は最も時間のかかる行動なのだ。


「硬貨に関する書物は幸いにも第三階層に集中しているらしい。そこから俺が使えそうな本をピックアップしていくから、フレスはどんどん本を持ってきてくれ」


 第三階層とは五十メートルある本棚の内の三階の渡り廊下。つまりは三十メートルあたりにある本群のことだ。


「ボクが持ってくるの!? 三階部分にある本を!? 弟子使い荒すぎじゃない!?」

「何言ってんだ。お前にはあるだろう? 便利なものが」


 ウェイルはチョイチョイと背中を指さす。

 その意味にフレスもすぐに気が付いた。


「と、飛べっての!?」

「ああ。俺だといちいち梯子を使わないといけないが、お前には翼があるだろう? ぱぱっと飛んでとってきてくれよ」

「でも、他の誰かに見られたらいけないんでしょ!?」

「幸い今日は俺達の貸切だよ。さあ、では始めよう。どんどん本を持ってきてくれ」


 第三階層に上がったウェイルは、近くに置いてあった椅子に腰を下ろすと、フレスに本を持ってくるよう催促する。


「……なんだかボクが一番きつい役回りだと思うんだけど」

「お前は弟子だからな? 弟子は苦労することが当面の仕事なんだよ」

「むうう、ウェイルは座ってラクチンして……」

「効率を考えた結果だ。さあ、さっさと行ってくれ」

「むぅ。分かったよ……」


 納得はしたものの、渋々と本を取りに行くフレスであった。


 その後は簡単な流れ作業。

 フレスが飛んで本を取り、ウェイルの元へ持ってくる。

 ウェイルがそれを一通り目を通し、使えそうかを判断する。

 フレスが空を飛べるおかげで、通常十時間以上はかかる作業を、なんと五時間で終えることが出来た。

 とはいえ結局、閲覧時間も過ぎたということで、初日は本の選別だけで終えることとなったのだった。


「翼が痛いよ……。こんなに空を飛んだのは久しぶりかも」

「そういえばクルパーカーの時以来か」

「まったく、翼が凝っちゃったよ。帰ったら翼を揉んでよね?」

「意味あるのか、それ……」


 翼という器官は、どうやら肩と同じらしい。


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