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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第二部 第八章 銀行都市スフィアバンク編『決戦! 波乱の株主総会』
199/500

新たな目的地と、不穏な空気

 新リベアブラザーズの株主総会の結果は、瞬く間に大陸中に広がった。

 王都ヴェクトルビアの買収もなかったことになり、ハクロアの価値も、以前と比べては落ちるものの、だいぶ値段が戻ってきた。

 他にもこの度の事件の影響を受けた貨幣も、次第に元の値段に落ち着くことになる。

 逮捕された4人のリベア幹部だが、罪状は殺人などといった凶悪事件としての逮捕であった。

 つまり恐ろしいことに、彼らのしてきた経済上でのテロ行為は、一切罪に問われなかったのである。

 全てルールに乗っ取った上での行動だったため、ある意味当然ではある。

 それ故に、これから同じようなことをしでかそうとする連中が現れないとも限らない。

 よって世界競売協会を中心として、市場の監視を強めることになった。

 結局リベアブラザーズは倒産することになり、株主たちは阿鼻叫喚だったそうだ。

 もっとも、リベアの筆頭株主であったプロ鑑定士協会が最も被害を受けたことは間違いない。


「一番損したのはフレス、お前だよな」

「全くだよ! ボク、株式の30%も持ってたんだよ? それをプロ鑑定士協会にあげちゃったんだから」


 売れば働かずに一生暮らせる(といっても龍の一生がどれほどのものかは判らないが)ほどの大金を得れていた。

 それをせずにヴェクトルビアを救ったフレスは、鑑定士の鏡であるだろう。


 ヴェクトルビアの内政も徐々に元に戻りつつあるそうで、都市の治安も治安局が力を入れたおかげで良くなったそうだ。

 株主総会の二週間後、ウェイル、フレス、アムステリア、シュラディン、ギルパーニャ、イルアリルマの六人はヴェクトルビアに招待された。

 何でも王都を救った英雄として、勲章が授与されることになったそうだ。

 興味ないからと言ってパスしたアムステリアを除いた五人は、しっかりとアレス本人から勲章を授かり、ウェイルとフレスの二人の名前は、またも大陸中で話題となった。


 勲章の授与式のさらに三日後のこと。

 今度はプロ鑑定士協会からとある発表がなされた。

 第三試験合格者の発表とプロ鑑定士試験再開の知らせである。

 日程の関係上、第五次試験は無くなり、第四次試験が最終試験となることになった。

 試験は2か月後に再開される。


「ボク、絶対に合格して見せるから!」

「ウフフ、私もです!」

 

 幸い、フレスもギルパーニャも、もちろんイルアリルマも合格を果たしていた。

 事件以降、プロ鑑定士協会で世話になっていたイルアリルマと共に合格を告げられたフレスは大喜びし、最終試験合格目指して躍起になって勉強をしていた。

 普段自分からしようとしない勉強でも、合格の二文字と、イルアリルマとの存在のおかげでやる気に火が点いているらしい。

 どうもイルアリルマの教え方が上手いらしく、勉強も捗っているようだ。



 プロ鑑定士試験まで、残り一か月と二週間になった頃。

 相変わらずカラーコインの鑑定を続けていたウェイルはとある推測を立てていた。


「……これは……やはり文字なのか……?」


 模様だと思って調べていたが、もしかしたら文字の可能性もある。


「これを調べるには、もっと過去の情報を保存しているところにいかないとな……」


 そう思っていた矢先、サグマール経由でウェイルに一つの鑑定依頼が届く。

 内容を見た瞬間、ウェイルは仕事を受けることに決めた。

 依頼主は、とある都市に住むウェイルの親友だったからだ。


「おい、フレス。出かけるぞ」

「依頼が来たの?」

「そうだ。だが先に行っておきたい場所があるんだ。鑑定依頼予定日は少し遅いからな。俺の調べものもそこでするし、丁度依頼人のところへ行く途中にある場所。お前にとってもいい勉強になる場所だ」

「いい勉強になる場所!? どこどこ!?」


 ウェイルは届いた鑑定依頼書をフレスに手渡した。


「え~と、次の目的地は……ラングルポート……? 初めて聞く都市だね」

「そうか? 他大陸との貿易で有名な都市だ。だが先に行くのはここじゃない」


 依頼書を返してもらい、代わりに大陸の地図を手渡す。


「ここだ」


 ウェイルの指さす先。


「え、えっと……しる……ばん……?」

「そこには有名な図書館があってな。大陸中の歴史を全て記録していると言われている」

「そ、それは勉強になりそうだね……」


 もしかしたらカラーコインに関する情報もそこにあるかもしれない。


「次の目的地は、図書館都市『シルヴァン』だ」


 次なる目的地、シルヴァン。

 新たな物語、そして懐かしい出会いが二人に待っていることになる。







 ――●○●○●○――








 突如、爆音が轟いた。


「急いでください! 火が回ってます! 早く避難してください」


 宗教都市サスデルセル。

 しばらく静かな夜が続いていたこの都市に、突如として響いた爆音。


「一体どうなってるの……!?」


 シュクリアが目を向けたのは、火の上がる都市。

 多くの住民が悲鳴を上げ、叫び逃げ惑う。

 必死に消火活動に当たる住民達の邪魔にならないよう、シュクリアは生まれたばかりの赤子を連れて、避難場所へ向かっていた。


「どうしてまたサスデルセルで……!?」


 幾重にも張り巡らされた結界は、不審者の侵入を拒む。

 数日前に破壊されたという話ではあったが、今は問題なく動いているはずだ。

 つまり不審者でもなければ悪魔でもない。


「きゃっ」


 再び起こる爆発。

 別の教会のある方からの爆発だった。


「さっきはリグル教会から爆発したし……、一体どうなってるの……!?」


 シュクリアは少し切れた自分の指を見る。

 自分のこの怪我の原因も、もしかしたらこの爆発と関係があるのかもしれない。

 爆発音に驚いた赤子が喚きだし、シュクリアは必至にあやしてやった。


「でも、どうして――どうしてラルガポットが……?」


 捨てるに捨てることが出来なかったラルガポットが、突如爆発したのだ。


「この子だけは守らないと……!!」


 再び穏やかな眠りについた赤子をゆっくり抱きしめると、シュクリアは逃げる足を速めたのだった。


 この時期大陸各地で発生した神器の暴走。

 サスデルセルでの事件を皮切りに、どんどんと被害の増えるこの事件の裏には、巨大な陰謀があったことを、今のウェイル達には知る由もなかった。





この話で第二部と第八章スフィアバンク編は完結です。

第二部は株や為替に焦点を当てて執筆していきました。

私の最も好きなラノベは狼と香辛料なんですが、その好きな理由として戦闘描写の少ないことと商売をメインにしていることが挙げられます。

第二部はフレスに一度しか変身してもらってません。また鑑定士という職種で戦うには株を利用することがそれっぽいと思っていました。

目標の狼と香辛料っぽさに私オリジナルの展開が両立出来ていれば嬉しい限りです。


しかし第二部の話の内容は少し難しく不親切に思った方もいらっしゃったかもしれません。そのことについては申し訳なく思ってます。


新キャラもたくさん出せて、私としてはとても楽しかったです。

それでいて読者の方々が楽しんでいただけたのであればこれほど嬉しいことはありません。


第一部のキャラクター紹介のイラストは友人である志乃さんからいただきました。素晴らしいイラストで私には勿体無いくらいです。イラストにふさわしい作品にしていきたいですね!



長々と書いてしまいました。

それでは次章予告です。


次章からは第三部突入、第九章 図書館都市シルヴァン編『インペリアル手稿と神器暴動』になります。


今までとは少し変わった新キャラが登場しますので、お楽しみに!


そして第九章の前に閑話として短編を入れていきます。

なので次の話はその短編ということになりますね!


短編 イレイズ&サラー編 をお送りします!



これからもよろしくお願いします! 


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