生き甲斐 ※
「大丈夫か?」
ウェイルはフレスが偽ラルガポットを壊している間にシュクリアを目覚めさせた。
「……あ、ウェイルさん……。私……、そうだ、神父様は……?」
「あそこで寝ているよ」
ウェイルがバルハーを指差す。怪我は治っていたが未だ意識を失っていた。
「私……、これからどうすればいいんでしょう……。神父様には裏切られ……、夫にも逃げられ……。私、もう縋るものがなくなっちゃいました」
まるで死人のような目をするシュクリア。
ウェイルはその姿を見て腹立たしく思った。
無意識に口が動いていた。
「縋るものだと? 最初からそんなものなど存在しない。目の前にあるのは、全てただの現実だ。人間はそれを認識しているからこそ、互いに助け合い、支えあっている。その中で生き甲斐を見つけ、それを生きていく糧にするんだ」
「でも私にはもう生き甲斐なんて――」
「――あるだろう? そのお腹の中に」
「――あっ……!」
ウェイルがそう諭すと、愛おしそうにお腹を摩った。
「……そうですね。この子がいます。私、この子がいれば生きていけます……!」
そう言うシュクリアの目には涙が浮かんでいたが、その顔には決意を感じられ、少しだけ逞しい母親の顔をしていた。
――●○●○●○――
「おらー、治安局員総出で突撃じゃー!!」
どこかで聞いたことのある声が教会に響き渡る。――ステイリィだ。
ウェイルから通報を受けた治安局が、今頃になって突入を開始したようだ。
「神官は全員確保、祭りに参加しに来た信者も同じだ! そして神父バルハーを確保しろ!!」
「「「ウスッ!!」」」
無駄に偉そうなステイリィが部下に命令を下していた。
といってもその姿は非常にシュールである。
何せ屈強でガタイもよく筋肉隆々な治安局員を、背も小さく洗濯板のステイリィが指図しているからだ。
「だがお前たち! 最優先事項は、一人でここに乗り込んだプロ鑑定士ウェイルさんの安全確保だ! 探し出して私の元へ連れてこい! 私が監禁――じゃなくて保護するから!!」
「「「ウスッ!! 了解しました!! ステイリィ上官!! 」」」
「それでは任務開始!! いいか! 絶対にウェイルさんを逃すな!! ウェイルさんを追うことは私の生き甲斐なんだ!! 兎にも角にもウェイルさんを確保!!」
「……なんでウェイルが追われているの?」
「俺だって知らねぇよ……」
暴走状態のステイリィに見つかるのは危険だと、過去に身をもって体験している。
「どうするの? ウェイル」
フレスの問いにウェイルは躊躇い無く答えた。
「――逃げるぞ、二人とも!」
「うん♪」
「はい!」
ウェイル、フレス、シュクリアの三人は、治安局員の目を掻い潜って、ラルガ教会を後にしたのだった。