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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第二部 第八章 銀行都市スフィアバンク編『決戦! 波乱の株主総会』
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氷の舞姫

「ウェイル! なんとか大ホールには入れたけど、これからどうする気なの!?」

「決まってるさ。株主総会に乗り込む。奴らがヴェクトルビアの件を議題をあげる前には行かないとな」


 スフィアバンクの大ホールはとても広い。

 株主総会が同じ日、同じ日程で行われることも多々ある為、大ホール内には大小合わせて4、5ほどのホールが用意されている。

 今回リベアが用いているのは、その中でも最も大きなホールである5番ホール。


「サグマール達とも合流しないとな」


 会場目指してとにかく走る。

 だが、そんな二人の前に現れるリベア側の警備員。

 その数は八人。それぞれ手には武器や神器を持っている。


「そこの二人。止まれ」

「許可なく会場に入ることは許されん」

「ただちに会場を出るなら手荒な真似はしない」


 と決まりの脅し文句をつけてくる。


「とかいいつつ、ナイフや剣を構えてる時点で説得力はないよ」


 初めから無事で帰す気はないといったところか、彼らも二人に向かって突撃を開始した。


「ウェイル、ボクが六人を引き受けるから、後は出来るよね?」

「おい、弟子が師匠を甘く見るんじゃない。半分任せてくれても大丈夫だ」

「でもウェイル、今は武器がないでしょ?」

「まあな。……おっと!」


 真っ先に飛びかかってきた警備員の一人に、ウェイルは足払いをする。

 うつ伏せで倒れる警備員に対し、ウェイルは容赦なく飛び掛かった。


「すまん。許せ」


 謝罪の言葉と共に、ウェイルは警備員の頭を思いっきり踏みつけた。


「グガアァッ……!」


 鼻の骨が折れたのか、床に血だまりが出来る。


「武器ならあるさ」


 その男が持っていたナイフを拾いあげ、フレスに見せつけてやる。


「鑑定士が泥棒しちゃいけないよ?」

「ちょっと借りるだけだ。問題ないさ」


 一人潰されたことで、残った七人は怒り心頭の御様子。

 ただ、今のウェイルの身のこなし方に警戒したのか、見た目はただの少女であるフレスの方へ照準が集まる。


「あれれ、ボク、人気者?」


 七人は一斉にフレスへと襲い掛かる。

 その内二人は、ユーリが持っていたような遠距離系の神器で容赦なく打ち放ってくる。

 残りの五人も、それぞれ自慢の武器を振ってきた。

 魔力弾を躱しながら、ナイフの斬撃を悠々受け流すフレス。

 それはまるでダンスの様に、フレスは笑顔でその場を舞っていた。

 ウェイルがふと感じたのは冷気。

 踊るフレスから、少しだが光が漏れている。


「何かやる気かよ……!」


 そのことに気付いたウェイルはすぐさまフレスから距離を取る。

 だんだんとフレスのダンスが激しくなる。

 同時にキラキラと輝く雪が、周囲を舞った。

 その光景はとても美しく、思わず目を奪われたほど。

 あまりにも異様な光景に、警備員達も流石に気づいたようだ。


「な、なんだ!?」

「雪!?」


 ふいにフレスが動きを止めた。

 これをチャンスとばかりに飛ばされる魔力弾。

 フレスは避けようともせず、ただ手を上げた。


「それ!」


 その掛け声が術の発動だった。

 フレスが振り撒いた雪が、猛烈な吹雪となって、その場で暴れはじめる。

 その威力は凄まじく、魔力弾など瞬時に打ち消されてしまう。


「えいやあ!」


 踊り続ける雪は、次第にキラキラと輝き始めた。


「なんだなんだ!? これは!?」

「か、体が……動かない……!?」


 光り輝く吹雪に包まれている警備員達に逃げ場など無い。

 もうすでに一人か二人、凍り付いているはず。

 その光景に遠距離にいた二人が慌て、退散しようとしたのだが。


 ――ピシッ……。


「いつっ……!」


 不意に警備員の頬から鮮血が飛ぶ。

 残ったもう一人の方は手から血が溢れていた。


「奴らナイフか何か持っているのか!?」

「くそ、何が何だか判らん! とにかく撤退だ!」



「――逃がすわけないでしょ?」


 撤退は失敗に終わる。

 輝く吹雪は、逃げ道を塞ぐほど範囲を広くさせていたからだ。

 吹雪の範囲が天井に達した。

 すると、そこに飾られていたシャンデリアのガラスが、次々と切り刻まれ、木端微塵となる。


「シャンデリアが!?」

「おい、壁を見てみろ!」


 吹雪に包まれた壁は、無残にも切り刻まれた跡が残っている。

 一つ一つの切り傷は小さく、ナイフでの傷ではないことは明白だ。


「もしかして、あの輝く吹雪が……!!」

「そうだよ♪ あのキラキラしてる奴、全部氷なんだ」


 フレスが律儀に答えてやる。


「この氷はナイフよりもよく切れる小さなツララなんだ。そんな刃物が高速で踊ってるんだよ? そりゃこんな壁程度すぐズタズタになるよ」


 人知を超えた力に、二人は恐怖する。

 この小さな少女は、一体何者なのか。


「フレス、もういいぞ」


 ウェイルの掛け声で、吹雪は止んだ。

 吹雪の中に閉じ込められていた警備員は皆、床に伏していた。


「急いで温めてあげて。そうすれば命に支障はないから」

「手加減してやったのか?」

「うん。出来る限り人は殺さない。そういう約束だからね!」

「先に進むぞ。おい、ナイフは借りていくからな」


 残された警備員達にもはやフレス達を追う力や気力も残ってはいない。

 ただ呆然と二人の行く末を見守ったのだった。


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