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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第二部 第七章 プロ鑑定士試験編 『試験開始、新たな懸念』
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お金を貸して

 次の日の昼のこと。

 二人は朝からずっとお金を集めていた。

 ギルパーニャは、オークションハウスで、買ってはすぐ売るという繰り返しで、少しずつ。

 そしてフレスはというと。


「むむむ……。ウェイルの金庫、難しいなぁ……。何も五重ロックの金庫なんて使わなくても……」


 自慢の耳で金庫の鍵の音を確かめながら、ノブを回していた。


「確かボクが買った株券を保管するときに、番号を見たはずなんだけど……」


 一瞬チラリとだけしか見ていないから、覚えていなかったのである。


「あ、今音がした……!」


 中からカチッと音がする。三つ目の錠が開いた音だ。


「フー、後二つかぁ……」

「……何が後二つだって?」

「そりゃあ、鍵のことだけど――――って、ウェイル!?!?」

「この大馬鹿!!」

「ぎゃう!!」


 容赦ない拳が脳天に突き刺さる。


「いひゃいよぉ……」

「まさか弟子が泥棒だったとは思わなかったぞ……」

「違うよぉ! ちょっとお金を借りたかっただけだよぉ……」


 殴られたところを摩りながら抗議する。


「勝手に借りるのは泥棒と同じだろうに……」

「むぅ、いいじゃない。ちゃんと返すつもりだったんだから!」

「そういう問題じゃないだろう。……それで、どうしてこんなことをしようとした。なんで金が要る?」

「試験に合格するため!」

「それは判る。しかし一体何に使うつもりだよ」

「あのね、買うんだよ」

「何を?」

「壺を」


 それからフレスは、ウェイルに昨日話し合った作戦について説明した。


「なるほど。うん。中々面白い作戦だ」

「でしょ? だからお金貸して♪」

「だめだ」

「むぅ! どうしてだよ!」

「あのな、確かに面白い作戦だとは思うが、成功する保証はどこにもないだろう? そんな作戦に大金を貸せるもんか!」

「……絶対成功させるもん!」

「だからそんな保証は――」

「させるもん!」


 こうなってしまってはテコでも動かないのがフレス。

 どうしたものかと悩んでいると、突如ピンと閃いた。


「……判ったよ。貸す。貸してやる。その代り条件がある」

「条件?」

「そうだ。今回俺がお前に貸してやる代わりに、担保してもらう」

「……何を?」

「お前の持つ、リベア社の株券だ」


 フレスは大量のリベア社の株券を所持している。

 会社が潰れた今、価値はほとんどないと言っていい。

 しかし、どうも気になっている。何せリベアの株だ。

 何かに使えるかもしれない。そう思ったのだ。

 

「どうする?」

「……いいよ。で、いくら貸してくれるの?」

「80万ハクロアまでなら貸そう」

「80万、借り受ける!!」


 こうして何とかフレスはお金を得ることが出来た。

 ウェイルから80万借り受けたフレスは、意気揚々とギルパーニャとの待ち合わせの場所へ向かったのだった。


「このリベアの株。もしかしたら切り札になるかもしれないからな……」


 フレスが騙されて購入した大量のリベア社の株。

 これが後に、この大陸を救う切り札になるということを、今のウェイルには知る由もなかった。








 ――●○●○●○――








「ギル! お金集まったよ!」

「私も!」


 午前中に掛けて二人が集めた金額、およそ100万ハクロア。


「フレス! どうしたの!? そんな大金!?」

「えへん! 凄いでしょ!」

「凄いよ! 80万も集めてくるなんてさ!」


 ウェイルから借りたなど、言えるはずもなかった。


「……ギルこそオークションだけで20万も稼いだの?」

「ううん、オークションはね、1万くらいしか稼げなかったからさ。さっきまでカジノにいたんだよ!」

「う……、流石ギル。勝負強い……」

「あーあ、今日、結構調子よくて、周りも弱かったから、時間さえあれば大勝できたんだけどさ。試験があるから切り上げて来ちゃった。もったいない」


(……鑑定士よりギャンブラーの方が向いているんじゃないの……?)


 なんて思っていても口には出せない。


「よーし、勝負はこれからだよ、フレス!」

「うん!」


 それから二人は、とある噂を広げるために、都市中を駆け巡ったのだった。



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