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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第二部 第七章 プロ鑑定士試験編 『試験開始、新たな懸念』
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プロ鑑定士の資格

「買えたね♪」

「意外にもあっさりだったね。もしかして一番乗り出来るかも?」


 初動も鑑定も早かった二人は、あっさりとシアトレル焼きを手に入れることが出来た。

 他人の目に見えないよう、慎重に袋に入れて、二人は協会本部へと向かう。

 プロ鑑定士協会本部周辺には、全く人影がなかった。

 ここにいた大勢の受験者達は、様々なところへ散り、各々行動をしていることだろう。


「あの大きい扉に入ればいいんだよね? 実は私、協会本部へ入るの、この前フレスに会いに行った時が初めてだったんだ!」

「そうなんだ! とっても広いでしょ?」

「実は途中、8回迷ったんだ~」

「ボクだってここにはよく来てるけど、それでも迷っちゃうんだもん。無理ないよ」


 なんて会話を弾ませつつ、門の前にやってきた二人。

 その門の裏に、怪しい影がいることをフレスは悟った。


「…………ギル!!」

「……えっ? ――きゃあっ!!」


 フレスはとっさにギルパーニャを突き飛ばす。

 元々ギルパーニャがいたところには紅蓮の炎が上がり、周囲を真っ黒に煤こけさせた。


「誰!?」


 フレスが振り向くと、そこにはせせら笑いを浮かべる二人組の男がいた。


「ハッハッハ、あんたら、さっき欠片を置いて行った奴らだろ? すげえよなぁ、その年で立派に鑑定しているんだからさ」

「ホントだな! 鑑定もすぐに終わったみたいだし、優秀だよなぁ? その袋の中には、正解の壺が入っているんだろ?」


 フレスは答えない。

 ギルパーニャのことが心配であったし、何より地面を焦がした力が気になっていたからだ。


「なぁ、提案なんだが、その中の壺を俺らにくれよ。見ただろ? 地面の焦げを。俺達さ、そういうことが出来る神器を持っているんだよねぇ」

「神器『狐火の揺らめき』(フォックス・ライター)。この指輪がそうなんだよ?」


 彼らの指に煌めく指輪。

「……へぇ、それが神器ね」

「そうだよ? こいつは便利でね? この指輪から炎が出てさ。いつでもどこでも肉を焼ける! 魚でも豚でも牛でも、そして――人でも、ね……!!」

「俺ら豚や牛は大好物だけどさ。人間は食えないからよ。だから出来る限り焼きたくはないんだ。ね? 焼きたくないんだよ。だからその壺、渡してくれないかな?」


 男たちが指輪をこちらへ向ける。

 指輪は赤く輝きはじめ、熱でゆらゆらと陽炎を作る。


「……ふ、フレス……!! 壺ならまた買いに行けばいいから……!! だから……!!」


 ギルパーニャが袋を開き始めたが、


「駄目だよ、ギル」


 とフレスがそれを制した。


「ねぇギル。鑑定士ってさ。こういう悪い連中ともしょっちゅう戦ったりするんだよ。贋作士とかとね。だからこの程度で降参しちゃいけないよ? 鑑定士たるもの、強気でいかなきゃ!」

「……フレス……、だけどっ!!」

「残念だけど、ボク達の壺は渡せない。壺が欲しいなら自分で手に入れてよ」

「フレス……!」


 力強く、堂々とした姿のフレスに、ギルパーニャは素直に凄いと感嘆していた。

 そんなフレスに対して機嫌を悪くした男二人。


「おいおい、このガキ。色々と勘違いしてやがるぜ」

「おい、ガキ。さっき審査員のおっさんも言ってただろ? この審査中に死んでも責任を持たないってよ。つまりお前らがここで俺らに殺されようが、協会側は一切関与しないってことだ。いいか? 死んじまっては元も子もないんだぜ? 素直に渡した方が賢明だと思うがな」

「うるさい、黙れ、この二流!」


 そうほざく男らに対し、フレスが怒号を飛ばした。


「自分で鑑定すら出来ず、さらに人の物を盗ろうとしたお前達にプロ鑑定士をやる資格なんてない! プロ鑑定士はみんな、強くて、頭が良くて、そしていい人達なんだ! お前らなんか絶対になれないよ!!」

「少しばかり甘く言いすぎたようだな……、でしゃばりすぎだ。クソガキ……!!」

「どうやら死にたいらしい。いいぜ、望みどおりにしてやるよ」


 男達は指輪に光を集中させる。

 激しい業火が指輪の周囲に出現したかと思うと、二人はそれを容赦なくフレス目がけて飛ばしてきた。


「――フレス!!」


 ギルパーニャは、業火にまとわりつかれるフレスを見た。


「…………ぬるいよ……!!」


 だが、それも一瞬のこと。

 瞬きする間も無く、その炎は跡形もなく消えていた。


「なっ……!!」

「火が、消えただと……!?」

「許さないよ……!!」


 今度はフレスの腕が光り出す。

 周囲の気温が下がり始めたのを、男らは感じていた。


「何事だ……!?」

「君らの炎、とってもぬるいんだよ。こんなの、サラーの炎に比べたらぬるま湯だよ」


 輝きは冷気に変わり、フレスの腕にまとわりつく。


「ウェイルの真似、みたいだね」


 腕に渦巻く冷気は氷へと変貌し、透明で鋭い氷の刃が出現した。


「こ、氷だと!? 神器か!? こんなガキが神器を持ってるってのか!?」

「し、しるか!! まずい! 逃げた方がいい!!」


 走り始めた二人をフレスが逃すはずもない。


「……えい!!」


 空いた方の手から巨大なツララを飛ばす。

 ツララは彼らの頭上を飛び越え、進行方向先の地面に突き刺さり壁となった。

 地面も凍りつき、足が滑る。

 これでは逃げることもままならない。


「な、なんなんだ、お前は!?」

「ボク、魚でも豚でも牛でも、ましてや人間でもないよ? だって――」


 フレスは氷の刃を横に一閃する。

 その斬撃は指輪を破壊、さらに刃から発せられた冷気の衝撃波は、彼らに容赦なく襲い掛かる。

 衝撃波に吹き飛ばされ、ツララの壁に強く激突した彼らに意識を保つことなど出来るはずもなかった。


(――だってボクは――龍、なんだからさ……♪)




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