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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第二部 第七章 プロ鑑定士試験編 『試験開始、新たな懸念』
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信頼は……

「まったく、君は本当にウェイルの弟子だな!」

「うう、ごめんなさい……」


 ディベート・オークションは無事終了した。

 結果は54万ハクロアでの落札。

 フレスの指摘の後、多くの入札者が、入札をキャンセルしたのだ。

 出品者側の恨めしそうな顔が印象に残っている。


「フレスちゃん。今回はおそらく贋作だったから良かったけどさ。もし本物だったらえらいことになっていたよ?」

「ごめんなさい……」


 フレスはオークション終了後、ルークに叱られていた。

 例え贋作だと見抜いたところで、フレスがオークションを邪魔したことに変わりはないのだ。


「ごめんなさい、ルークさん。ボク、勝手なことしました……」

「まあ無事に終わったからいいんだけどさ……」


 結局フレスにペナルティは与えられなかった。


「それにしてもフレスちゃんって本当に鑑定士に向いているよ」

「……え?」

「贋作だと気付いた時、いてもたってもいられなくなったんでしょ?」

「うん……! あれ、絶対に偽物だと判ったから……!!」

「叱られること覚悟でそれをしたんだから、、君はよほど鑑定士に向いている。流石はウェイルの弟子と言ったところだね」

「ルークさん……!! ありがとう!」


 ようやく見せてくれたルークの笑顔に、フレスもひとまず安堵を覚え、寛大な処置に感謝した。


「そういえば、二人はエルフの薄羽を見たことがあるんだよね? どこで見たんだ?」

「リグラスラムの裏オークションだよ」


 二人はリグラスラムでの出来事をルークに話した。

 するとルークの顔は、先程とは打って変わって怒りに満ちていた。


「君ら、そんな汚い場所に行ったのかい……?」


 その形相に、フレス達も思わずすくんでしまう。


「うん……。どうしても大切なものを取り戻さないといけなかったんだ」

「ボク達、あの裏オークションに行ったとき、凄く怖かったんだ。違法品がたくさんあって、とても嫌な気分にもなった。それでも、どうしてもカラーコインを取り戻さないといけなくて……」


 ルークは一通り話を聴くと、一気にため息を吐いた。


「……そっか。通りでサクラとかしってたわけか。……怖い思いをしたね。俺はね、裏オークションってのが世界で一番嫌いなんだよ。俺はオークションハウスの経営者だ。オークションという制度自体を愛している。見る人が見たら、金持ちの道楽かも知れない。汚い金の競争に見えるかもしれない。それでも、オークションってのは誰もが公平に、誰もに落札のチャンスがあって、そして誰にでも勝利を掴める神聖な競売方法だと思ってる。でも裏オークションはそのオークションという神聖なものをを汚す行為なんだ」

「ルークさん……」


 ウェイルに聞いたことがあったが、ルークは若いうちからオークションに憧れ、苦労に苦労を重ねて今の立場に着いたという。

 ラルガ教会の事件では、ウェイルが事件に深く介入した理由の一つに、ルークを守りたかったというものがあった。

 ウェイルはルークがどれほど苦労したかよく知っている。

 だからこそ信頼できる人物だと断じているし、フレスもそう思ってる。

 そんな彼だからこそ、違法なオークションは許すことが出来ないのだろう。


「ルークさん、ボクら……」

「二人とも、無事で良かった……!!」


 ルークはその大きな手で、二人の頭を撫でた。

 それはまるでウェイルのような、優しい暖かみがあり、二人も素直に応じたのだった。






 ――●○●○●○――






「ルークさん、そういえばどうしてディベート・オークションなんてやってるの? ハウス側としては本物にしろ贋作にしろ高く売れた方が利益が出るんじゃないの?」

「おー、フレスちゃん。良い所に気が付いたな」


 ルークが感心する。

 しかしフレスにはその意味が判らない。

 オークションハウスは、落札金額の5%を手数料として取る。

 となれば当然落札額が高ければ高いほど利益は出る。

 しかし今回のようにディベート・オークションでは、本来より値段が下がることが多い。 

 客も値下がりすること前提で来ているし、『落とし』と俗称される鑑定士達もいる。

 利益を求めるのが商売の常である。だからフレスには判らなかった。


「フレスちゃん。確かに今回、君が指摘をしなければ、オークションハウス側は大儲けだった」

「うう……、ごめんなさい……」

「違う違う、攻めているんじゃない。むしろ感謝しているほどだ。このディベート・オークションは、客に信頼してもらうためのオークションなんだよ」

「……信頼?」

「そうさ。このオークションハウスには贋作が少ない。損をしない。良いハウスだと。そう思ってもらえることが重要なのさ。信頼して貰えれば客は再び来てくれる。その度にお金を落としてくれるんだから、信頼はお金になるんだよ。もし今回リンネの彫像を本物として売って、後で贋作だと発覚した場合、オークションハウスもそれを売ったとして信用を失う。それは困るだろ? だからこそ、利益が少なくなってもいいから切実さを突き通すんだ」

「な、なるほど~~~」

「フレスは少し経済の勉強しないとね♪」

「そうだね」


 信頼はお金になる。

 それをルークから教えてもらったフレスだった。


「ねぇ、ルークさん。ボクらをいつかここのディベート・オークションに参加させてください!」

「もちろんさ。君たちなら大歓迎だよ!」


 そして再び舞台に立つ約束をルークと交わしたフレスとギルパーニャだった。


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