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龍と鑑定士  作者: ふっしー
第二部 第六章 為替都市ハンダウクルクス編 『優しい都市の裏の顔』
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動き始める『無価値の団』

「みんな! ルクセンクが攻めてくる! 逃げるぞ!!」


 到着一番、ルイが大声で叫ぶ。

 何事かとテントから出てくる住民に、ルイは急いて忠告をして回る。


「それと『無価値の団』のメンバー、全員集合だ!」


 集まった数人のメンバーに、事の次第を伝えると、メンバーは大急ぎで住民の避難を誘導し始めた。


「あら、早速何かしてくれたのね」


 妖艶な笑みを浮かべるペルチャが、何やら嬉しそうにウェイルに近づいてくる。


「ペルチャか。アンタも逃げた方がいい。価値が暴落してたぞ」

「ああ、別にいいわよ? この都市での価値なんて、元々どうでもいいし。でも、あんたがこれから何をしでかすか、興味があるわ」

「俺もだよ」

「私もです」


 続いて出てきたのは、ゼーベッグとファイラー。


「最近どうも作戦が停滞していたからな。ここらで一気に何かしてぇぜ」

「私もですよ! これはこれは面白いことになってまいりましたね!」


 まるでこれまでが退屈だったと言わんばかりの三人。

 だが、この三人が、ウェイルの考えている作戦のキーになる存在だ。


「ルイ! 来てくれ!」


 ウェイルがルイを呼ぶ。

 ウェイルは詳しい作戦を、皆に話した。


「……なるほど。それで汽車を動かすと……!!」

「あまり褒められた方法じゃないけどな。かなりグレーには近い。だが効果は抜群なはずだ。何せこの都市にとってはトラウマなんだからな」

「ほんと、鑑定士って考えることが汚いねぇ。そんなところが、やっぱり私のタイプ♪ ……って何さ」

「むぅ、させないよ」


 ウェイルに抱きつこうとしたペルチャを、フレスが制する。


「だが、これで久々に暴れられそうだ……!!」

「うふふふふ、私も自慢のコレクションを出す時が来ましたか! 楽しみですねぇ!!」


 ゼーベッグとファイラーも不敵に笑みを浮かべていた。


「ルイ。ピリア、目を覚ましてるか?」

「私ですか?」


 ルイが返答する前に、ピリアがテントから出てきた。


「体はどうだ?」

「おかげさまで楽になりました。話は聞いていました。何やら凄いことをしでかそうとしてるようで……」

「まあな。それで実はピリアにもやって欲しいことがあるんだ」

「……私に、ですか? 私に役に立つことなどあるのでしょうか?」

「もちろんさ。アンタは悲劇のヒロインだからな」

「……ヒロイン……?」

「そうさ。ピリアの仕事、それは噂を広げることだ」


 ピリアがルクセンクの奴隷であることは、この都市に住まう数多くの者が知っている。

 それは昨日の住民の反応を見れば明らかである。

 そして彼らの反応は、同情だった。

 誰もがピリアのことを無視しつつも、可哀そうだなと同情している節が垣間見えた。

 ピリアがルクセンクに逆らえないことは誰もが知っている。

 これは大きな武器となる。

 ウェイルはこれからピリアにしてもらいたいことを、こと細かく伝えるとピリアも承諾した。

 住民の避難誘導を終えた他の『無価値の団』メンバーも集めて、ウェイルは事細かに作戦の指示を与えた。


「この作戦の指揮をゼーベッグ、ペルチャ、ファイラーに取ってもらう。各々部下を使って自由に暴れてくれ。ただし住民に怪我だけはさせるな」

「当然だ」

「任せてもらいましょうか♪」

「これはこれは、何とも血が騒ぎますねぇ!!」

「ルイ。この作戦はお前が無事汽車に乗って別の都市に行けるかが勝負のカギになる。俺達はそれを全力でサポートする」


 作戦を話し終えたウェイルが、最後にルイの方を見た。

 つられて周囲も一斉に視線を向ける。


「お前なら出来ると信じている。やれるだろ?」

「……当たり前だろ!」


 ルイは不敵に笑うと、拳を突き上げる。

 『無価値の団』のメンバーもそれに合わせ、拳をぶつけ合った。


「鑑定士殿は参加しないのか?」


 ルイが拳をウェイルへと向ける。

 ウェイルも合わせるように拳をコツンとぶつけ合わせた。


「よし、行動開始だ! 『無価値の団』、最後の作戦に出るぞ!」


 ルイの号令に、スラムに残っていたメンバーは大きく声を上げたのだった。


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