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龍と鑑定士  作者: ふっしー
プロローグ
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芸術大陸 『アレクアテナ』 ※

 ――芸術大陸『アレクアテナ』。



 芸術の神『アテナ』の名を冠するその大陸は、その名前に恥じること無く、芸術、美術といえばアレクアテナだと誰もが口にするほど有名な大陸である。

 アレクアテナでは国王、貴族だけでなく、一般の市民、農民に至る全ての人々が分け隔てなく芸術を楽しみ嗜んでいた。


 そんなアレクアテナでは、国内市場において芸術品、美術品の取引の割合は全体の七割以上を占め、アレクアテナが他の大陸に輸出する商品の割合は、実に九割を超える。


 また『神器』と呼ばれる魔力を持った芸術品が市場に現れると、その人智を超えた力の利便性が高い評価を受け、広く普及すると共に人々の生活をより豊かなものにしていった。


 高いレベルの芸術品、美術品。

 そして神器を輸出することで、アレクアテナは豊かな経済を築いてきた。


 しかし芸術品や神器が市場を独占し始めた頃、アレクアテナの市場を崩壊させかねない大きな問題が浮上した。


 その問題とは、芸術品や神器に似せて作られた『贋作』の大量流通である。


 大量に出回った贋作の影響で、国内市場において贋作を売買する詐欺事件は増加の一途を辿った。

 それにより人々の購買意欲は薄れ、購入に慎重になり、貨幣流通量も大幅に減少した。


 神器など特にそれが顕著で、一つ一つが非常に高額な代物であるため、購入率は全盛期の一割程度と落ち込むまでなってしまった。


 贋作の影響はアレクアテナ内に留まらず、他の大陸からも不信感を買い、芸術品の輸出高も減少、その結果市場規模は大幅に縮小し、芸術の都としての地位を落とす一方だった。


 この緊急事態に、アレクアテナの国や都市は、共同でとある組織を設置し、対策を講じた。



 それが『プロ鑑定士協会』の創設、そして『鑑定士の資格化(プロ化)』である。



 アレクアテナに住まう優秀な鑑定士を集め、一つの組織にし、『プロ鑑定士(プロアプライザー)』という資格を与えたのである。


 プロ鑑定士に求められる使命は非常に多い。

 美術品・芸術品の鑑定を行い、適正な値段を設定し市場に流通させることも使命の一つだ。

 その他にも独占商売が起こらないように市場を監視したり、通貨の過剰供給などによるインフレ・デフレを抑え、市場を安定させたりすることもある。

 また未だ謎の多い神器についての研究も仕事の一つである。


 もっとも上記に挙げたことは、もっぱら副業程度に行うことが多い。


 プロ鑑定士の真の使命とは、芸術品や美術品、神器の贋作を見つけ次第処分、そしてそれを作る贋作士を摘発、逮捕することにある。


 芸術が大いに発展した大陸故に、芸術そのものを冒涜する贋作に対しては、厳しい処置が求められている。

 贋作流通による経済混乱を狙う贋作士を許すことなど到底出来ない。

 贋作製作を止めるためには武力行使も許可されている。

 他にも貨幣偽造やインサイダー取引等、経済犯罪を繰り返す犯罪者に対し厳しく処罰できる権限もあり、プロ鑑定士はさながら芸術・経済関係専門の警察のような役割を持つ。


 危険な仕事も多いが、その分見返りも大きく、プロ鑑定士を目指す者も少なくない。

 芸術品、美術品が人々の間で嗜好品として広く普及したこの大陸では、市場を安定させる重要な役職として、それなりの地位や発言力も持つためだ。


 そのため現在ではプロ鑑定士こそ、アレクアテナ大陸で最も尊敬される職業になっている。


 プロ鑑定士協会創立および鑑定士の資格化(プロ化)後、市場に出回る贋作の大多数は姿を消し、アレクアテナは再び芸術の都としての地位と繁栄を取り戻した。

 これによりプロ鑑定士協会は、大陸全ての国や都市から信頼を集め、いまやこの大陸には無くてはならない大きな存在となった。


 プロ鑑定士が贋作を見破ることで、市場を安定させる。


 プロ鑑定士がいる限り、この大陸には二度と市場崩壊は起こらないと人々は信じていた。



 そう、信じていたのだ。



 ――目の前の贋作を、本物だと信じ込むように――







挿絵(By みてみん)


書:北谷翠峰

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