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ファッション

掲載日:2026/08/18

皆さんは何が「好き」ですか


何が自分たらしめていて、

その中に「自分たらしめていて欲しい」みたいな感情はありますか

「こいつこんなにアニメとか好きだったっけ?」


カフェの中で、

目の前の男が携帯を片手に言う。


男の携帯画面には、今や誰もが利用しているSNSが映し出されており、

我々の古い知人の投稿内容が載っていた。


そこには、世間で流行中のアニメを

彼氏と見終えた旨が記載されていた。


「やっと観れた!!!かれぴと〜〜」


普通であればそこまで引っかかるものではないが、

目の前の男であればこういった類のものには容赦がない。


私の古き友人、直哉であれば。


昔から何かと斜に構えており、

とにかく人の粗探しに長けているやつだ。


私と直哉は、中学からの友達で、

当時からアニメや漫画などの、

いわゆるサブカルといったものが好きで、教室でよくシェアをしていた。


直哉の画面に写る投稿の主は、私と直哉の中学生時代の同級生なのである。

この同級生(女の子)は、どちらかといえばこういったアニメの類を好きなオタクを

嘲笑するようなスタンスをとっていた記憶がある。


当時のスタンスと、今の投稿との不一致が気に食わないのだろう。


「まあ好きにやらせておけばいいんじゃないか」


自分としては、本当にそれくらいの気持ちなのだが、

この目の前の男はそうもいかないようだ。


「こう言うのが一番許せないんだよな、

時代的にアニメとかを好きと言いやすいというだけで、

ファッションとしてしか捉えていない。」


彼は大学に入ってからかけたであろうパーマを揺らしながら、

また入学後に購入したであろうシルバーアクセサリーのついた指でスマホをトントンと叩き、苛立ちを示した。


「中学の頃、俺らがアニメの話してたら、こいつ何て言ったか覚えてる?」


「なんか噛みつかれたことは覚えてるけど、細かくは覚えてないよ」


「『アニメとか何が面白いの?』だぞ」


「そんなこと言ってたっけ。。?よく覚えてるね」


「俺は覚えてる、絶対忘れない」


即答だった。

私はコーヒーを一口飲んだ。

窓の外には、流行りのアニメキャラクターが描かれた広告が出ている。


「まあ、時代も変わったんじゃないか」


「だからムカつくんだよ」


中学の頃、教室でアニメの話をするのには、少しばかり周囲の目が気になった。今では有名タレントが好きな作品を語り、駅を歩けば巨大なアニメ広告が目に入る。


随分と、好きだと言いやすいものになった。


「まあ直哉の気持ちもわからなくはないよ」

わからない、というのが正直なところだが、そう答えておいた。


直哉はよくこういった、世間や人に対する怒りや憤りを話してくれることがある。

私はこの時間がそこまで嫌いではない。


「お前もこういうの許さなくていいんだよ」


「許す許さないとかじゃなくて、覚えていないんだよ」


当時は帰宅部だった我々。

自分は特にサークルなどには所属せず、

バイトと授業を行き来する平凡な大学生活を続けている。


対照的に、直哉はフットサルサークルに入り、

SNS上では楽しげな大学生活を送っているようだ。


「そろそろ行くか〜」

直哉がスマホを伏せ、伝票を手に取った。


「このあと何かあるの?」


「サークルの飲み。渋谷」


「相変わらず忙しいね」


「まあな」


店を出ると、直哉はガラスに映った自分を見ながら、軽く前髪を直した。


「あ、久々だし、写真撮ろうよ」

——————随分と慣れた手つきでウチカメで写真を撮るものだ。


「じゃあ、また」


「おう」


直哉は駅の方へ歩いていった。

私は一人になってから、SNSを開いた。


彼のストーリーに、

先ほど撮ったと思われる我々の写真が載っていた。


「祐介と久々に!」


直哉は中学の頃と比べると、かなり垢抜けたように思う。

『画風』という点では、彼のサークルにいる人間と、私はかなり異なるだろう。


「こういう友達もいるよ、というアピールのようなものなのか、、考えすぎか?」


直哉のストーリーを、自分のストーリーにも反映できるよう、

私はリポストのボタンを押した。


自分の数少ないフォロワーに届くようにと、

少しばかりの願いを込めながら。

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