遊園地
※後4話で豹変します
遊園地へ遊びにきた。
『体験!ハタ人間!』
これやってみようぜ!
朔がパンフレットを指差す。パンフレットにはこう続いていた。
逃げ切れば、終わる。
ただし。
頭に旗が刺さったら、今度はあなたが刺す側になる。
鬼は減らない。増える一方だ。
最初は一人だった。
気づいた時には三人になっていた。
さあ、君は生き残ることができるか?
俗にいう増やし鬼だ。
灯と自然と目が合った。
「ははははは、私たちは無理。走るの朔みたいに速くないし」
「ゲーム始まった瞬間に終わっちゃうから」
運動系はねー、無理だよねー。
「でもこれ、頭に旗を刺されなければ捕まっても問題ないみたいよ?」
「それって捕まった後頭に旗を刺されるってことよ?」
「あ……」
透から声が漏れる。
「どうした?」
「いや、最初の鬼、朔。お前だ」
「はっはっはー!そしたら最初は誰を狙おうかねー」
「めっちゃ見ながら言うやん?」
蓮が構える。こういう時の対処法はまずゲームに参加しないこと。
『私は今回外でみとこうかーー』
私と灯が同じタイミングで言うが、
「行くか!」
と朔に肩を組まれて連れて行かれた。
『どうして』
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制限時間15分の鬼ごっこ
ルール
・鬼が交代ではなく鬼が増える。
・鬼が増える条件はタッチではなく頭に旗を刺された時に限る。(旗がついたヘルメットの着用)
・ゲーム中は旗を自分で抜くことはできない。
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【では最初の旗人間(鬼)は!】
部屋が暗くなって2つのスポットライトが私たちを順番に照らしてくる。朔が分かってましたと言わんばかりに両手を挙げている。そしてそそくさと頭に旗をつけてしまった。旗を頭に固定するのは難しいので黄色いヘルメットを被せるようなイメージだ。旗はヘルメットについている。
透にスポットライトがバッと当たる。
『!?』
【それではヘルメットをーーあれ!?】
一瞬の沈黙の後に朔に光が当たり直した。
「透!お前!」
「何に怒ってるのかは分からんな、何もしなかったら俺だったかもしれんのにな」
「ムキー!!」
「初めて聞いたわ笑」
30秒のカウントの後に朔が追いかけてくる。
とにかく見つからないようにやり過ごさないと。舞台は二階建ての学校のようだ。隠れようと思ったらいくらでも候補はある。主にロッカーか教壇の下になるけど、運動場もある。これだけあれば15分だし、大丈夫!
私は一階の教室にあるロッカーの中に隠れた。どこも同じような作り、ここなら物音さえ立てなければ簡単には見つからないはず!
ゲームが始まった。
朔は体を動かすこと、特にスポーツに関しては万能だ。こういう時に見つかったらその時点で終わりを意味する。この4人で朔に対抗できる人はたぶんいない。なんて恐ろしい人が最初の鬼なのよ。走って対抗できないならみんな隠れてやり過ごす策をとる。
朔はどう動いてくるか。
「みんな隠れてるのか、どうしたもんかねー」
頭をかきながら廊下を歩いている。一階から二階まで一通り廊下を歩く。1ヶ所ドアが半開きの教室があった。
流石に見えているところにはいないっか。
半開きの教室のドアを開いてその場で立ち止まった。
「そういやこの教室だったかな?……出るんだよ。幽霊。」
反応はなし……か。
「空の教室で1人でジッといるとさ、誘いに来るんだって。『一緒に遊ぼ?』って。回避するためには、『私はここにいます、おかえりください』って呪文を唱え続けないといけないんだとか。逆に『一緒に遊ぼ?』って唱えると来るんだよ。こんなふうに。『一緒に遊ぼ?一緒に遊ぼ?一緒に遊ぼ?』」
反応はなし……か。澪か灯くらいが見つかると思ったんだが。
わざとらしくガラガラ音を立てて引き戸を開け閉めして教室を出た。姿勢を低くしてドアの影から教室を見渡してみる。少ししてからロッカーが開いて青ざめた灯が出てきた。フラフラと教室を出ようと近づいてくる。
息を殺して灯が廊下に出てきた瞬間、頭に旗を取り付けた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?!?!?」
灯は声にならない声をあげ、何が起こったのか理解する前に捕まってしまった。
「あ!朔!さっきのって嘘だよね!?『出る』って嘘だよね!?」
灯は涙目になっている。
「うん、嘘。」
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
「み〜お〜」
灯の泣きそうな小さい声が遠くで聞こえてくる。少しずつ近づいてきて自分の隠れている教室に入ってきたみたい。
「み〜お〜」
お腹の高さくらいにあるロッカーの隙間から覗いてみると灯のすぐ後ろに朔が旗ヘルメットを振りかぶった状態だった。
「灯!!」
ロッカーを蹴飛ばして朔に突進した。朔が前のめりに倒れる。
「灯!逃げーー」
灯の頭にも旗がついていた。
「あ……」
「うふふ、ごめんね。でも嬉しい、ありがとう」
両手を朔を抑え込むことで使っていた私は灯に旗ヘルメットを『丁寧に』取り付けられてしまった。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
「後は蓮と透。厄介なのが残ったな」
廊下に出てうーん、と朔が唸りながら言う。
「何か心当たりとかない?」
「無いんだよな。ただ透だから……」
「逆に見当もつかないところに居るんじゃない?」
灯が言う。
「見当もつかないって?」
「考えの候補に上がらないようなところっていうか」
「例えば?」
「私や澪が隠れていて一度見つけられたところとか」
「一度見つけたから探す候補から外れたところに隠れていると?」
あるかもしれない。
「じゃあそういう場所を中心に探してみよっか」
何の気なしに私が隠れていたロッカーを開けた。透がいた。
「おぉっと!?!?」
まさか居ると思わなかったのでかなりびっくりした。
「いwたw」
透は観念したのか両手挙げて降参していた。私が捕まって教室から出たその後に窓から侵入してロッカーに隠れていたらしい。まず捜索候補に上がらない。ついさっきまでいた教室。後から誰も入った様子もなかったから。ドアのガラガラって音に合わせて侵入、ロッカーに潜伏したらしい。
「さすがに女子突き飛ばしてまで逃げれねえよ。逃げても朔の方が速いしな」
1番厄介だと思った透を見つけられた。後は蓮だけ!蓮、どこに居るんだろう?時間はあと2分となっていた。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
教室の窓から運動場が見える。そこに立っている人影を見つけた。蓮だった。どこか隠れて見つかったらその時点で終わる。運動場なら見つかっても走って時間内に捕まらなければ大丈夫と踏んで出てきたんだろう。
透が指示を出した。
「まず灯と澪がこうやって出ていって」
「それからは?」
「こっちでどうにかする」
大雑把。数秒でそんな綿密な作戦も立てれないか。
言われた通り私と灯が校舎から運動場に出ていく。
「はあ!?2人とも捕まっちゃったの!?」
私たちは運動場の東西の端っこに沿って近づいていくと同じだけ距離をとっていく蓮。2人を確認しながら蓮は距離をとっていく。ギョッとした。校舎に向かって大きく空いたスペース、そこから透が歩いてきている。
「全滅!?うそ!?私だけ!?!?」
透の合図で一歩ずつ蓮に近づいていく。蓮から見たら左右から私と灯、正面に透がいて後ろは壁になっている。時間は30秒。
「いやいや、無理だって!?」
透の後ろに朔が灯の方へ、澪の方へとフラフラしながら現れた。強行突破しようとしたのにそれも封じられた。
「いやいやいやいや、おかしいって」
みんなにっこり笑みを浮かべながら近づいていく。時間が過ぎていく。近づくスピードがより速くなった。
こうなったら!
蓮は頭を守るように両手でガードした。私と灯が蓮の体に触れられるくらい接近する。蓮は頭をしっかり守っている。
私は蓮の脇腹をつついてみた。
ビクッ
灯も突く。
ビクッ
私と灯は思わず目を合わせる。灯の中で何か目覚めたのか、含みのある笑顔だった。ツンツンとつつきながらくすぐり始めた。
「ちょ!ばっ!やめ!やめてえええ!!」
頭のガードが弱まる。
「年貢のなんとかだ」
透が頭を固定して時間ギリギリで蓮に旗ヘルメットを装着し、旗人間側の勝利で幕を閉じた。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
「遊園地といえば?」
『パレーd』
『ジェットコースター!!』
私と灯の声は他3人の声にあっさりとかき消されてしまっていた。
高いところや怖いところは苦手だ。3人がノリノリなこの空気、灯は何か感じたのか苦笑いで一歩後ろに下がっている。今回は私も乗らないで下から見ておこうかな。
「あれ?灯と澪は乗らないの?」
蓮が聞いてくる。
「怖いの苦手で」
私がいうと灯も横で頷いている。
「まあ苦手なのに無理に乗って吐かれても敵わんから下で待ってる?」
「うん」
あれ?いつもだったら強制参加みたいになるのにいいの?いや、嬉しいけどちょっと意外。
この遊園地にはいくつものジェットコースターがある。
「高くて怖いやつが面白いよな」
「そうね、ゆっくりより速くてスリルあるやつが好き」
「そんな2人にお勧めなのがあったぞ」
透がパンフレットを広げて2人に指差して見せる。『ウッディ』と書かれたジェットコースターだった。
「楽しそう」
ほぼ反射的に蓮が目を輝かせる。
最高のスリルを求めるあなたに最恐のスリルを
高さ、速さ、爽快感。
様々な刺激を求めるあなたにうってつけ!
ぜひ一度体験してみてください
「いいじゃない!これは面白そう!」
嬉々として3人は列に並んでいった。
「ジェットコースターは怖くて乗れないから、今回は強制じゃなくてよかったね」
安堵のため息をつきながらいうと灯も頷いてくれる。
「本当。長い時間並んで怖い思いはしたくないよ」
「さっきの増やし鬼?」
「あぁ、旗人間の」
「あれも怖かったよね」
「本当、あれ!朔が嘘で怖い話始めて、もうロッカーガタガタいってるんじゃないかってくらい怖くて不安だったのよ」
「うわ」
「そんなの聴いたら同じ教室居れないじゃない?」
「そうね」
「廊下に出たら朔が待ち伏せしてて、気絶したかと思った」
「そういえばあの時の騙し討ち!」
「えへへ、あれはごめんね。でも必死に出てきてくれて嬉しかった」
「あと、透もまさか本当に居るとは思わなくて」
「澪すっごい顔してたよ」
「どんなの?」
「こんなの」
「そんなブサイクになってたの!?」
「もっとかもしれないよ?」
「それはない」
「即答!?」
「あと、蓮さ」
「ツンツンってしたらビクビクッて可愛かったねー」
「ねー、もっとツンツンしたかったな」
「帰ってきたらやったら?」
「そしたら蓮は反撃してくるからやらない」
「あ、そうか。あれは頭守るために手は出せない状況だったもんね」
「残念」
「後1分くらいあったら楽しめたのにね」
「はははははは」
そんな話をしているとみんなの番が来たみたい。ジェットコースター特有の悲鳴も含めて楽しんでいるに違いない。
みんなが戻ってきた。なんかげっそりしてる。あれ?なんか違う。
「途中から支柱が木造だった」
「上がってる時にミシミシミシミシっていってて、頂上近くでピシッパキッて」
「重要なところが折れたような音したよな」
最恐のスリル、なるほど。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
アトラクションを適当に楽しんで休憩中。二人組作って対戦、負けたら罰ゲーム。ノリでゲームが始まった。
グーチョキパーでチームを分ける。
グー:私
チョキ:透、灯
パー:朔、蓮
えっと、私は?
「それはおいおい決めようぜ」
対戦ゲームで灯と蓮が負けた。何かが私の袖を引っ張る。
「澪ー、澪もこっち側(罰ゲーム)だよね?」
「抜け駆けは許さないよ?」
えええええええええ!?
「そうだなぁ、じゃんけん運がなかったわけだし」
「妥当なんじゃね?」
なんでええええ!?私何もやってないよねえええ!最初においおい決めようって言ってたじゃない!?
「と、ところで罰ゲームって?」
「こちら!」
「最恐のひと時をあなたに?」
「これって新しくできたお化け屋敷じゃない!?絶対嫌よ?!?」
朔が蓮の肩を軽く叩く。
「まあ楽しんで来いよ」
誕生日のお返しと言わんばかりの笑顔。
「やだ!無理!これ私の無理なやつ!」
「大丈夫!1人で行けとは言ってないだろ?」
「この2人が戦力になると思う!?」
「全然?」
「それだったら1人の方がまだマシよ!」
「じゃあ1人で行く」
「いや、もう!本当に無理!お願い!『何でもするから』」
「『何でもする』!?」
朔と透が目を合わせて不敵に笑った。
「二言はないな?」
「うん!」
「じゃあ」
『行ってらっしゃい』
「………。へ?」
にっこり。
「い、いや!ホントに無理だから!」
「大丈夫だ!大丈夫じゃないと思ったらその時に考えたらいい!」
「だったら今まさにそのタイミングでしょうが!」
怖がる蓮を落ち着かせようと朔が、
「物語とか背景を知ったら緊張が和らぐかもだぞ?えっと、」
と言いながらパンフレットを広げる。
【最恐をあなたに。ノロワレテルムラ。ここを調査してほしい。だが無理なら無理するな】
そしてこう続いている。
ここから先、スタッフはおりません。
平均滞在時間、27分。
最短記録、4分。
最長時間、現在も更新中。
泣いた方、873名。途中退場、不可。
(本当に無理ならスタッフが回収に行きますが、迎えに来るのがスタッフとは限りません。心臓の弱い方はご遠慮ください)
読み終えた後、朔はすっごく楽しそうな笑顔で私たちを見てくる。
灯は全身が引き攣っていて目から光が消えている。たぶん私も同じような顔をしているだろう。蓮は血の気が引いて青くなってカタカタ震えている。その横で透は缶コーヒーを飲んでいる。
「まあ楽しんで来いよ」
という言葉を最後に、私たちはお化け屋敷の入り口に立っていた。
ドアが開いた。
蓮の目が渦を巻いていた。
「や…、やだ!無理!」
蓮が後退りして走って逃げ出そうとする。
「おっと」
朔が蓮の襟部分を掴んで捕まえた。
「ちょ!ちょっと!離しなさい!お願い!ホントやだから!」
「そう暴れんなって!」
蓮は朔の肩に担がれておしり叩かれながら連れ戻されてくる。
「そういうこともあろうかとおもちゃの手錠を持ってきた」
「ナイス!」
蓮の右手に私の左手を、蓮の左手に灯の右手を手錠で繋ぎ逃走不可となった。
ぐるぐるぐるぐる。
「出口で待ってるから生きてたら会おうぜ」
朔が笑顔で送りだす。出入り口がガチャンと音を立てて閉まる。その後小さくカチャと鍵が閉まるような音も聞こえた。もう逃げ場はない。
蓮の呼吸が荒くなっている。
「あんたたちも走って!」
蓮が私と灯の手を引いて走り出す。でも放心している二人はついてこない。両腕に2人の全体重がかかる。
「重っ!!走って!!」
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
澪と灯は放心状態で何かぶつぶつ言っている。
「灯?手に触れるものが人の手だったって知るだけでなんでこんなに暖かいんだろうね」
「澪?私も蓮と手を繋いでたはずなのに、あれは誰と手を繋いでたんだろうね?」
「………。せめて、走るなら同じ方向を向いて走って」
ぐったりしている蓮に向かって、
「お前10歳くらい老けたな」
と透はソフトクリームを食べながら言い放つ。
「おまえら」
蓮はそう言い残して前のめりに倒れた。
読んでいただきありがとうございます。
次話「夏 夏祭り」もよければ。




